
創意を尊びつつ良い事は真似よ!倉本長治が説く「真似」の真理
「創意を尊びつつ良い事は真似よ」
これは「昭和の石田梅岩」と称された高名な経営指導者であり、商業界の初代主幹を務めた倉本長治の遺した言葉の一つです。
「学ぶ」という言葉の語源が、実は「真似る」と同じであり、かつては「真似ぶ(まねぶ)」と言われていたことをご存じでしょうか。
「真(まこと)に似せる」という意味から「真似」や「真似ぶ」が生まれ、それが転じて「学ぶ」という言葉が生じました。つまり、他店の良い取り組みを真似ることは、商売を学ぶための最も基本的なステップであり、真に似せようとする真摯な姿勢から、すべての成長と成功が始まります。
では、私たちが店舗経営において真似るべき「良い事」とは、具体的に何を指すのでしょうか。「手っ取り早く儲かりそうなこと」でしょうか。それとも「簡単に導入できそうなノウハウ」でしょうか。実は、これらの動機はすべて「自分たちにとって都合が良い」という内向きな前提に立っています。
倉本長治は、真似るべき価値のある本当に良い事とは、そのような利己的なものではないと説きます。
「ただ一つ、お客様にとって良い事のみであり、その確信が持てるならば、勇敢に真似よ」
お客様の喜びや便利さに直結することであれば、プライドを脇に置いて、他店の優れた取り組みを徹底的に取り入れることが必要です。
ただし、真似る際の実務的な心構えも大切になります。目に見える店頭のディスプレイやキャンペーンといった表層的な物真似に留まらず、その仕組みの奥にある「お客様に喜んでいただきたい」という目に見えない温かい心(願いや思想)までを深く理解し、同じように真に似せることが重要です。
形だけを真似てそこで学びを止めてしまうからこそ、市場環境や競合状況が変わった途端に店舗運営がうまくいかなくなってしまいます。形から入ってその奥にある心までを深く理解したとき、店舗の「真似」は「真の学び」へと昇華し、他店の模倣を超えた独自性を生み出す一歩へと繋がっていきます。
