
損益管理の基礎知識と実践ポイント
1. 基礎知識:損益分岐点売上高と構造を理解する
損益管理の基本となるのが損益分岐点売上高です。これは、店舗の売上と費用が同額になり、利益がゼロになる売上高を指します。
- 損益分岐点売上高の理解:この数値が低いほど、少ない売上で利益が出やすくなります。自店の損益分岐点売上高を把握することで、店舗が「いつから利益が出始めるのか」を明確にし、目標設定に役立てることができます。
- 損益構造の把握:売上がどのように利益に結びついているか(または結びついていないか)を理解することが重要です。売上が増えれば必ず利益が増えるわけではなく、経費とのバランスが利益を左右します。
2. 自店の経費:固定費と変動費を把握する
店舗の経費は、大きく固定費と変動費に分類されます。これらを正しく理解し、分類することが、効果的な経費コントロールの第一歩です。
- 固定費:売上の増減に関わらず、ほぼ一定で発生する費用です。家賃、人件費(正社員給与)、減価償却費などが該当します。売上がゼロでも発生するため、店舗運営の土台となる費用です。
- 変動費:売上の増減に比例して変動する費用です。仕入れ費用、人件費(パート・アルバイト給与)、販促費や広告宣伝費などが含まれます。売上がなければ発生しない費用です。
これらの経費を正確に把握し、それぞれの割合を理解することで、売上や利益目標達成のために、どの経費をどのようにコントロールすべきかが見えてきます。
3. 予算計画の作成:売上、経費、利益、そして行動計画の精度を高める
精度の高い予算計画の作成は、損益管理の羅針盤となります。単なる数字の羅列ではなく、店舗の目標達成に向けた具体的なロードマップを盛り込みましょう。
- 予算作成のポイント:売上、利益目標の設定。経費の予測と管理。そして、必要な行動計画の策定までを連動させることです。また、売上予算達成に必要な「コスト」なのか、あるいは将来的なリターンを見込む「投資」なのかを区別することも重要です。
- 達成精度の重要性:売上予算の達成精度を100%に近づけることは、極めて重要です。予算が現実離れしていると、経営リスクを生じさせる可能性があります。
- 目標設定の注意点:「目標(計画)が大きければ大きいほど良い」という考え方もありますが、それは「夢」や「ビジョン」に当てはまる場合が多いです。店舗経営においては、目標が大きすぎて未達になると、資金繰りなどのリスクが発生するため、注意が必要です。現実的かつ挑戦的な目標設定が、店舗の安定的な成長には不可欠です。
4. コントロール:予実管理で売上と経費を最適化する
予算計画を立てたら、次はそれを実現するためのコントロール(予実管理)です。計画と実績を常に比較し、状況に応じて迅速に軌道修正を行うことが、損益改善の鍵を握ります。
- 売上コントロール:予実管理において最優先すべきは、売上をコントロールすることです。損益計算書において最も構成比が高いのが売上で、ここを最大化することが全体の損益に大きく影響します。「売上コントロール」という言葉は聞き慣れないかもしれませんが、売上を増大させることです。
- 経費コントロール:経費コントロールでは、店長が管理できる費用(店長管理可能費)とできない費用(店長管理不可能費)を明確に分け、コストと投資の両面を考慮することが重要です。
- 投資と回収:人材育成費、販促活動や設備投資など、将来的な売上や利益に繋がる「投資」については、その効果を予測し、費用対効果を最大化できるよう投資と回収計画を立てます。コスト削減だけでなく、店舗の競争力を高めるための戦略的な投資も重要です。
- 差異分析と改善:予算と実績に差異が生じた場合、その原因を深く掘り下げて分析します。なぜ差異が生じたのか、現場検証やトラブルシューティングからその要因を明らかにし、次回に活かし、ノウハウ化を図ります。
- 達成精度:売上達成率は店長が±5%、SVは±3%が目標です。究極的には1時間単位での売上達成が必要になり、その記録更新を店舗スタッフが一丸となってチャレンジすることで、人や店のレベルも向上します。
- 実績と計画の修正:月末には2枚の損益計算書を作成します。1枚は該当月の実績、もう1枚は翌月の修正計画です。こうすることで、改善までの時間を短縮し、経費の垂れ流しやチャンスロスの改善を早急に対処できます。現在では、損益計算を日次で行っている店舗もあります。
5. 評価:獲得利益と行動計画の達成精度、連動した人事評価制度
損益管理の最終段階は評価です。計画通りの利益が獲得できたか、そして立てた行動計画がどの程度達成されたかを評価します。この評価は、正しいプロセスで獲得した利益かを判断し、次の計画に活用して、店舗全体のモチベーション向上に繋げます。
- 獲得利益の評価:設定した利益目標に対して、実際にどれだけの利益が獲得できたかを客観的、具体的に評価します。数値と帳票から成果とプロセスを具体的に把握できます。
- 行動計画の達成精度:売上増大やコスト削減のために立てた行動計画が、どの程度実行され、目標達成に貢献したかを評価します。計画が実行されなかった場合は、その原因を分析し、次回に活かすための改善策を検討します。
- 人事評価制度:従業員の損益管理への貢献度と行動計画の達成度を人事評価制度に連動させることで、従業員のモチベーション向上と当事者意識の醸成を促します。

