【ユニクロ柳井正に学ぶ店舗経営の本質】なぜ9回失敗しても10回挑戦できたのか?|商業経営の原理原則 13.

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「日本商業の父」倉本長治氏の『商業界ゼミナール』での講演。柳井氏が座右の銘とする「店は客のためにあり、店員とともに栄え、店主とともに滅びる」を提唱。戦後日本の小売・サービス業における経営哲学の原点を築きました。
柳井正が「唯一の座右の銘」と明言する教えを提唱した倉本長治。彼から戦後の日本商業の発展が始まる。

淡々とした言葉に込められた商いの真理

 話をさらに過去へと戻そう。

1984年、柳井氏は父の後を受けファーストリテイリングの前身、小郡商事の社長に就任。「ユニークな衣料 (clothes) 」というコンセプトから「ユニーク・クロージング・ウエアハウス(Unique Clothing Warehouse)」という店名で同年6月、広島市に第一号店を開店する際のことである。

「頭のいいと言われる人間に限って、計画や勉強ばかり熱心で、結局何も実行しない。人生でいちばん悔いが残るのは、挑戦しなかったことだ」と柳井正

「本屋で雑誌を買うように、ファッションを気軽に買える店」として「どこよりも早く、 大量に販売する」とは、当時35歳の柳井青年が一枚の手書きの企画書に記したコンセプト。今では国内外に2400店舗以上を展開するユニクロは、こうした店主の志から生まれた。

「10回新しいことを始めれば9回は失敗する」というとおり、柳井氏は挑戦を続け、失 敗に学ぶ道を歩み続けた。「頭の良いと言われる人間に限って、計画や勉強ばかり熱心で、 結局何も実行しない」という彼の言葉を、われわれは自問しなければならない。

「ロマンを持たなければ商人ではない。勇気がなければ商人ではない。挑戦できなければ商人ではない。忍耐がなければ商人ではない。そして、変化に対応できなければ商人ではない」と倉本長治は言っている。

また、「生き残る種とはもっとも強いものではない。もっとも知的なものでもない。それは変化にもっともよく適応したものである」とは、種の形成理論を唱えたイギリスの自然科学者、チャールズ・ダーウィンの言葉である。

そして、「あなたが何かを成し遂げたいのならば、必ず手段を見いだせる」と倉本長治は言う。「あなた自身の幸せは、それを成し遂げる過程にある」と。

店主とともに滅びる——それはまた、経営者がロマン、勇気、挑戦心、忍耐、そして変化対応力を失うことを戒めている。「人生でいちばん悔いが残るのは、挑戦しなかったこと」という柳井会長の言葉は、彼が誰よりも「店主とともに滅びる」ことの恐ろしさを自覚していることを示している。

店は客のためにあり
店員とともに栄え
店主とともに滅びる

倉本長治の遺した、この純度の高い結晶なような言葉こそ、地方商店街の小さな紳士服店が世界企業に成長していく上で欠かせない羅針盤となった。本書の解説で「この淡々とした言葉の中にこそ、商いの真理があります」と綴っていることがそれを物語っている。

店は客のためにあり 店員とともに栄え 店主とともに滅びる 倉本長治の商人学 
笹井 清範 (著), 柳井 正 (解説)

本 笹井清範 柳井正

第一章 損得より先きに善悪を考えよう
第二章 創意を尊びつつ良い事は真似ろ
第三章 お客に有利な商いを毎日続けよ
第四章 愛と真実で適正利潤を確保せよ
第五章 欠損は社会の為にも不善と悟れ
第六章 お互いに知恵と力を合せて働け
第七章 店の発展を社会の幸福と信ぜよ
第八章 公正で公平な社会的活動を行え
第九章 文化のために経営を合理化せよ
第十章 正しく生きる商人に誇りを持て

執筆には、倉本が興した出版社・商人育成機関の「商業界」で長年にわたって商人の話に耳を傾け、現場・現物・現実に向き合い続けた筆者が取り組んだ。25年超4000社以上の取材を通じて出会い、学んできた商人たちのエピソードや教えを紹介しつつ、100篇の名言が意味するところと、事業や仕事への活かし方を解説している。

道徳観の欠落した商行為がたびたびメディアを賑わせる昨今。本書は混迷の時代に欠かせない羅針盤であり、すべての経営者が従業員とともに共有すべき “原理原則”を凝縮した。

(商い未来研究所・笹井清範

※専門家がお話を伺い、課題解決をサポートします。

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