
正しさと革新なき企業は滅びる
柳井会長が正しさにこだわるのは、「正しくなければ、商売をする意味がないから」という。なぜなら、「企業は社会の公器であり、お客様や社会に自分たちが提供できるもの、提供すべきものは何かを考えてこそ存続を許される」と柳井会長は明言する。
このとき、倉本長治の盟友であり、ともに経営指導に半生をかけた指導者、新保民八の次の言葉を思い出す。
正しきに
拠りて滅びる
店あらば
滅びてもよし
正しさこそ事業の事業を通じて実現すべき命題だと新保は指摘する。しかし、単に正しいだけでは企業の永続性は保証されず、過去に多くの企業が市場から消えていった。じつは、新保は次のように言葉を続けている。
古くして古きもの滅び
新しくして新しきものまた滅ぶ
古くして新しきもののみ
永遠にして不滅
「お客様のニーズは常に変わり続けています。とくに今からの変化はさらに激しいでしょう。いくら正しくても、現状に固執していては生き残ることはできません。しかし、いくら革新的であっても、古くからの原理原則をないがしろにする店も同様に滅びます。原理原則とは『店は客のためにある』ことです。唯一永遠不滅たりうるのは、原理原則に基づき革新を続ける企業だけです。これが新保さんの言わんとするところではないでしょうか。当社が目指すところもここにあります」(柳井会長)
話を「有明プロジェクト」に戻そう。目指す情報製造小売業の実現には、次の5つのコンセプトが必要と同社は説明する。
1. お客様一人ひとりとダイレクトにつながり、双方向の情報発信を可能にする顧客基盤
2. お客様の声を基に、お客様が求めるものを商品化し、商品を情報化
3. お客様が求めているものを、必要なタイミングで、必要な分だけ、作り・運び・販売
4. 一人ひとりのお客様に寄り添い、いつでもどこでも、便利で楽しい購買体験
5. 一元化された情報をもとに、お客様のために全社員が連動する働き方
つまり、情報製造小売業とは、商売を通して「お客様満足を追求する」「より良い社会を実現する」ことをより高いレベルで目指すための事業の在り方だ。そこには、倫理観に裏打ちされた正しさ、現状を否定し続ける革新性が欠かせない。それらを失ったとき、店は「店主とともに滅びる」ことを柳井会長は常に心にとどめ経営にあたっている。
倉本長治は、こんな言葉も遺している。
商売は今日のものではない。
永遠のもの
未来のものと考えていい。
それでこそ、
本当の商人なのである。
人は今日よりも
より良き未来に生きねばいけない。
商いとは永遠ものの、未来のものという倉本の言葉に、柳井会長が目指す「より良い社会の実現」との一致が見られる。唯一の「座右の銘」として、倉本長治の教えを掲げる柳井会長が目指すのも「今日よりもより良き未来」なのである。
※専門家がお話を伺い、課題解決をサポートします。

