【なぜユニクロは世界一になれたのか?】柳井正氏を支えた成功の秘訣|商業経営の原理原則 11.個人商店から世界企業へ

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戦後日本の商業近代化を推進し、ユニクロ柳井氏も師と仰ぐ経営思想家、倉本長治氏。小売業やサービス業の経営指針となる「商売十訓」や、消費者主権の理念を提唱した専門性と信頼性の高いポートレート。
「昭和の石田梅岩」「日本商業の父」と呼ばれた経営指導者、倉本長治。倉本抜きに戦後商業史を語ることはできない。

伝説の経営指導者「倉本長治」とは何者か?

 では、柳井を商いに進むべき道を照らす言葉を生んだ倉本長治とは何者なのか。

倉本は1899年、元禄時代からの菓子商の家に生まれ、幼いころから小売商に愛着を抱く。1925年、26歳で雑誌「商店界」の編集長に就くと水を得た魚のごとく、商業評論、広告・宣伝のコンサルタントとして活躍する。

戦時体制の強化により「商店界」は休刊となる。そこで師事する人物の薦めにより、ある企業の取締役に就くが、これが原因で後にGHQから公職から追放されることとなる。

戦後、日本経済は混乱の極みにあった。激しいインフレが続き、商業は不当な高値販売や情実販売が横行し、道義は地に落ちていた。そこで手弁当で全国各地へ赴き、「店は客のためにある」という消費者主権と、「損得より先に善悪を考えよ」という商業倫理を掲げ、正しい商人道と商業の近代化を説いた。

1948年、全国の愛読者と支援者たちにより、後半生のすべてを捧げることとなる雑誌「商業界」が創刊される。戦後の混乱治まらぬ中にあって健筆をふるい、新しい時代の商業経営の精神と技術を提唱。追放が解除されると、商業界主幹に就任する。

1951年には、講師と受講生が寝食を共にして学びあう「商業界ゼミナール」を主宰。すると反響はすさまじく、彼らは寝る間を惜しんで学び、語り合った。回を重ねると、すぐに3000人を超える商人が全国から集うようになり、その熱気から「商人の道場」と言われた。

倉本は、これまでの金儲け一辺倒の商人のあり方を悔い改め、お客様のための商売に生きようという信念に燃えた多くの商人たち育成に尽力。また、いち早くアメリカの先進的な経営技法の導入を積極的に提唱し、来たるチェーンストア、ショッピングセンター時代に先鞭をつけた。

こうした活動を通じて、倉本は日本の商業近代化に貢献し、多くの優れた経営者を全国各地に輩出した。そんな彼らから師として敬われ、「日本商業の父」「昭和の石田梅岩」と呼ばれている。
じつは、倉本の教えには続きがある。

柳井がそれを知ったのは1994年、広島証券取引所に上場して間もない頃、かつての勤務先であるイオンの岡田卓也さんと「商業界」誌上で対談ときのことだ。そのとき、「店は客のためにある」は「店員とともに栄える」と続き、「店主とともに滅びる」と締めくくられることを知ることとなった。

「これら一連の言葉は、企業の在り方そのものを示しています。企業にとっていちばん大切な永続性の本質を、私はここに見たのでした。これまでに、この言葉に何回も励まされ、ああ、こういうことだったのかと気づかされたりしてきました」と柳井は言う。

以来、彼の執務室の壁には「店は客のためにあり 店員とともに栄える」という言葉を掲げ続けられている。

本記事は、筆者の最新著『店は客のためにあり 店員とともに栄え 店主とともに滅びる』で柳井正さんが「言葉の結晶」と言う名言名句100篇を厳選。倉本長治の唱えた行動指針「商売十訓」を章立てとし、その一訓ごとに関連する10篇の教えを紹介している。

店は客のためにあり 店員とともに栄え 店主とともに滅びる 倉本長治の商人学  
笹井 清範 (著), 柳井 正 (解説)

本 笹井清範 柳井正

第一章 損得より先きに善悪を考えよう
第二章 創意を尊びつつ良い事は真似ろ
第三章 お客に有利な商いを毎日続けよ
第四章 愛と真実で適正利潤を確保せよ
第五章 欠損は社会の為にも不善と悟れ
第六章 お互いに知恵と力を合せて働け
第七章 店の発展を社会の幸福と信ぜよ
第八章 公正で公平な社会的活動を行え
第九章 文化のために経営を合理化せよ
第十章 正しく生きる商人に誇りを持て

執筆には、倉本が興した出版社・商人育成機関の「商業界」で長年にわたって商人の話に耳を傾け、現場・現物・現実に向き合い続けた筆者が取り組んだ。25年超4000社以上の取材を通じて出会い、学んできた商人たちのエピソードや教えを紹介しつつ、100篇の名言が意味するところと、事業や仕事への活かし方を解説している。

道徳観の欠落した商行為がたびたびメディアを賑わせる昨今。本書は混迷の時代に欠かせない羅針盤であり、すべての経営者が従業員とともに共有すべき “原理原則”を凝縮した。

(商い未来研究所・笹井清範)

※専門家がお話を伺い、課題解決をサポートします。

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