イオンとユニクロの原点|岡田卓也と柳井正を結ぶ「商いの心」と「平和産業」の教え 商業経営の原理原則 15.

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イオンの原点である「岡田屋」創業期の店舗と従業員。倉本長治氏の商人道に基づき、中内功氏らと切磋琢磨した岡田卓也氏の経営哲学の出発点。日本の小売業の歩みと、時代を超えて受け継がれる「商人の志」を伝える貴重な歴史的記録。
イオンの原点『岡田屋』。中内氏と同じく倉本長治氏に学び、商売人ではなく『社会を変える商人』を志した岡田氏の出発点です。『もうからぬ商売を恥じよ』という厳格な教えは、この小さな店から世界へ広がる力となりました(出典:Wikimedia Commons)。

「店は店員とともに栄える」。思想の承継

戦災で営業ができない中、自店の名誉よりも四日市の商人の信用を優先

 時代はさかのぼり戦時中のこと、戦災で四日市の中心部が焼け失せたとき、岡田屋もまた全焼する。しかし、主たるお客様である郡部の人たちの多くは岡田屋の商品券を持っていた。それなのに、岡田屋が焼けてしまったと聞いたら、大損をしたと思い、商品券などあてならないと不信感を抱くだろう。

 これは岡田屋の名誉にもかかわるが、それ以上に四日市のすべての商人の信用のためにならないと千鶴子は考えた。すぐさま、すべての商品券を現金と交換するという新聞広告を出す。お客様たちは「さすが岡田屋さん」とますます店に対する信頼を強くしたという。

 その後、卓也が出征してからというもの、四日市の廃墟にも似た焼け跡には日に日に敗戦の影が濃くなっていった。しかし、岡田屋再建の種子はそのときすでに廃墟の灰の中にまかれていたのである。

ジャスコからイオングループ。そして、ファーストリテイリング柳井正に受け継がれる信念

 また、千鶴子はたいへん勉強熱心な人だった。だから、商業が他の産業に伍して基幹的な存在になるためには、知識教育を行い、しかるべき人勢を育成することが必要だと考えた。

だからどこよりも早く学卒を採用し、業界に先駆けて「オカダヤ・マネジメントカレッジ」を開講。一般大学の教養課程講座を中心にカリキュラムを組み、教養を身に着けさせることで人間としての成長を促した。

小嶋千鶴子氏の著書『あしあと』。イオンの人事教育の真髄が記された門外不出のバイブル。「店員とともに栄える」組織づくりを学ぶ経営者必読の書。
人事教育の最高の教科書と言われ、長く読み継がれる小嶋千鶴子の著書『あしあと』。教育こそ企業成長の根本というイオンの原点がある。『あしあと』は社内限定で一般販売はされていない。イオングループ現役社員に配布され、新入社員には必読書となっている。

 教育によって、社員一人ひとりのレベルを向上させることができれば、お客様により高い満足を感じてもらえ、結果として企業力も高まるという千鶴子の教育者としての信念がそこにはある。このDNAはジャスコ、そしていまもイオングループに脈々と受け継がれている。

 さて、ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長が大学卒業後、ジャスコに入社したことは冒頭に記した。じつはそのときに面接を担当したのが、人事部長であった千鶴子であった。ところが、柳井は10カ月でジャスコを退職することになる。

 「それでも退職するときに、小嶋さんにだけ手紙を出しました。こういう理由で退職しますという手紙を書いたんです。この人だったらひょっとして僕の気持ちをわかってくれるんじゃないだろうかと思ったのです。それぐらいジャスコでは印象深い人でしたね」

 柳井と岡田姉弟との縁はまだある。1994年、ファーストリテイリングが広島証券取引所に上場して間もないころ、倉本が主筆を執った「商業界」誌面上で岡田卓也と柳井が対談する機会を得た。そのとき柳井は倉本が唱えた「店は客のためにある」は「店員とともに栄える」と続くことを岡田から教わる。

 以来、ファーストリテイリングは「個の尊重、会社と個人の成長」を重要な価値観の一つとして掲げ、社内人材育成機関「FR-MIC(FR Management and Innovation Center)」など従業員一人ひとりの成長と自己実現をめざし、能力開発に向けたさまざまなプログラムを提供している。「店は店員とともに栄える」という倉本の思想は、小嶋千鶴子から柳井正へ確実に受け継がれている。

店は客のためにあり 店員とともに栄え 店主とともに滅びる 倉本長治の商人学 
笹井 清範 (著), 柳井 正 (解説)

本 笹井清範 柳井正

第一章 損得より先きに善悪を考えよう
第二章 創意を尊びつつ良い事は真似ろ
第三章 お客に有利な商いを毎日続けよ
第四章 愛と真実で適正利潤を確保せよ
第五章 欠損は社会の為にも不善と悟れ
第六章 お互いに知恵と力を合せて働け
第七章 店の発展を社会の幸福と信ぜよ
第八章 公正で公平な社会的活動を行え
第九章 文化のために経営を合理化せよ
第十章 正しく生きる商人に誇りを持て

執筆には、倉本が興した出版社・商人育成機関の「商業界」で長年にわたって商人の話に耳を傾け、現場・現物・現実に向き合い続けた筆者が取り組んだ。25年超4000社以上の取材を通じて出会い、学んできた商人たちのエピソードや教えを紹介しつつ、100篇の名言が意味するところと、事業や仕事への活かし方を解説している。

道徳観の欠落した商行為がたびたびメディアを賑わせる昨今。本書は混迷の時代に欠かせない羅針盤であり、すべての経営者が従業員とともに共有すべき “原理原則”を凝縮した。

(商い未来研究所・笹井清範

※専門家がお話を伺い、課題解決をサポートします。

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