イオンとユニクロの原点|岡田卓也と柳井正を結ぶ「商いの心」と「平和産業」の教え 商業経営の原理原則 15.

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かつての小売業の象徴、ジャスコ(現イオン)の店舗外観。中内功氏と共に流通革命を歩んだ岡田卓也氏が掲げた、チェーンストア理論と地域密着経営の歴史を象徴する風景。現代の店舗経営者が学ぶべき、多店舗展開と効率化の原理原則を物語る。
中内功氏と共に日本の流通革命を牽引した岡田卓也氏(イオン名誉会長顧問)。その象徴であるジャスコの店舗展開には、倉本長治氏が説いた『合理的な実務論』とチェーンストアの原理原則が息づいています(出典:Wikimedia Commons / 著者:Kirakiramegane / CC BY-SA 3.0)。

原理原則の商人、イオンを創った女

原理原則は曲げない。しかし、商売には情も必要

 イオンを創ったもう一人の商人、卓也の姉、小嶋千鶴子について倉本はこう書き記している。

 「その昔、岡田卓也君よりもむしろ、その姉君なる小嶋さんが総体の采配を振るう店主ででもあるかと思った。その女丈夫らしい女性が実にてきぱきと万事を指揮しているのを見て、岡田屋はじつにこの婦人が弟を援けかばうようにして築いたのであるという印象を強く受けた」(倉本長治著『此の人と店』)

 千鶴子もまた卓也と同じく原理原則の人である。こんなエピソードがある。

 四日市の岡田屋時代、千鶴子も店に立っていた。そこに母親と小さな子どもづれの客がやってきた。その親子は、弁当箱の売場の前でずっと何か迷っている様子だった。すると母親がレジに来て、「ありあわせのお金が足りないので、まけてもらえないでしょうか」と言った。聞いてみると、親子はその店から相当遠いところから歩いて来ていて、「お金を取りに戻るのはとてもじゃない。明日はこの子の遠足なので、弁当箱がとうしても欲しい」という。

 かつて倉本長治は、「売価は実印を押すつもりでつけよ」といい、戦後の闇市商売が横行していた中で、人によって売価を変えないという「正札販売」を提唱し、全国の商人から絶大な支持を得た。

人によってまけるのは公平の原則に反することになる。気の強い人はまけてもらって安く買えるが、気の弱い人は買えないことになる。だから「正価」は守らなければならない。千鶴子はそれを倉本から学んでいた。

 「申し訳ありませんが、うちはまけることはできません」と千鶴子がいうと、親子は恨めしそうな顔をしてとぼとぼと夕暮れの中を帰っていった。千鶴子は後を追いかけて、懐から財布を出し、言った。

 「値段はまけることはできませんが、これは私が個人でお貸しします。今度来られたときにいつでもお返しくださればけっこうです。これを足してお買いになってください」

 また、あるときは従業員のレジ係の女性が不正を行い、売上金を抜いていた。店長はそれを知り、自分のポケットマネーでそれを埋めていた。千鶴子はこれを見つけると、「抜くのも入れるのも不正だ」と店長を処分する。しかし、千鶴子はこの店長の就職をとことん斡旋してやるのである。

 原理原則は曲げない。しかし、商売には情も必要だ。情に流されて原理原則を曲げたら、公正で公平の原則に反する。情と理を並び立たせるには、原則を守るという厳格さが必要になる。これが小嶋イズムである。

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