商業経営の原理原則 『共通する繁盛の法則・実践者たちの横顔』(第11回) なぜユニクロは商店街の紳士服店から世界企業になれたのか?

ユニクロ 紳士服店から世界企業

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「ユニクロの歩みは挑戦と失敗の歴史でもある」 地方商店街の紳士服店に生まれ、大学卒業後、現イオンに入社も1年と続かず友人の家に居候。家業に入社するも7人中6人の従業員を辞めさせてしまった若者を覚醒させ、「10回新しいことを始めれば9回は失敗する」経営を支えた純度の高い結晶のような言葉

なぜユニクロは商店街の紳士服店から世界企業になれたのか?

「私がもっとも影響を受け、もっとも好きなこの言葉と出合ったのは、当時のすべてを注ぎこんだ新店の開業より前のことでした。若い頃、この言葉を唱えた倉本長治さんが主筆を務める雑誌『商業界』を読み、純度の高い結晶のような言葉を私はそこで見つけたのです」

こう語るのは、ファーストリテイリング代表取締役会長兼CEOの柳井正。当時のすべてを注ぎこんだ新店とはもちろん、1984年6月2日に広島市に1号店を開業した「ユニクロ」である。およそ40年後の今日、ユニクロは日本をはじめ23の国と地域に2440店舗(2023年5月末現在)を数えるまでに成長した。

こう語るのは、ファーストリテイリング代表取締役会長兼CEOの柳井正。当時のすべてを注ぎこんだ新店とはもちろん、1984年6月2日に広島市に1号店を開業した「ユニクロ」である。およそ40年後の今日、ユニクロは日本をはじめ23の国と地域に2440店舗(2023年5月末現在)を数えるまでに成長した。

同社の2023年8月期業績は売上高2兆7,300億円(前期比18.6%増)、営業利益3,700億円(同24.4%増)。日本の小売業では3位にランクインするばかりか、世界のアパレル製造小売業でもZARA(スペイン)、H&M(スウェーデン)に続く存在となっている。2023年8月期上期決算説明会では、売上高を今後10年程度で10兆円にする目標を表明したことは記憶に新しい。

9月1日には子会社である㈱ユニクロの代表取締役社長兼COOに、同社生え抜きで若干44歳の塚越大介取締役を抜擢。9月15日にはメーガン妃のウエディングドレスを手がけたことで知られるイギリスのデザイナー、クレア・ワイト・ケラーによるウィメンズコレクション「UNIQLO:C(ユニクロ:シー)」の発売を開始するなど、ステートメントに掲げる「服を変え、常識を変え、世界を変えていく」の実現に向けて同社の革新はとどまるところを知らない。

しかし、その航海はけっして順風満帆だったわけではない。「10回新しいことを始めれば9回は失敗する」と柳井自身が言うように、同社の歩みは挑戦と失敗の歴史でもある。

地方商店街の紳士服店の家に生まれた柳井は大学を卒業すると、親の勧めでジャスコ(現イオン)に入社。しかし1年と続かず、友人の家に居候しているところを父に呼び戻され、実家の小郡商事に入社。そんな柳井の目にも、家業の仕事の効率や従業員の態度の悪さが目立った。それを直そうと厳しく指導すると、7人中6人の従業員が辞めてしまったという。

なんとかしなければと柳井は、残った番頭とともに店と経営の現場・現物・現実のすべてと向き合い、試行錯誤を繰り返していった。郊外店の多店舗化を進め、1998年の原宿出店とフリースブームにより全国区の地名度を得るが、その後に業績低迷が訪れ、野菜販売の失敗、海外出店の挫折、若手経営者への権限移譲の不成功と、まさに柳井の著作『一勝九敗』を地で行く道のりだった。

そんな柳井を覚醒させ、常に支え続けた言葉がある。

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