【この記事の概要】
情報は客観的事実をベースにしよう。そうでないと双方の主観や感情論が混じり合って訳がわからなくなる。
情報は事実ベースで最新のものを、十分な量集めること。かつ、集める際も、大事な部分は人の話だけで情報を得るのではなく、自ら調べることが重要。そして、言葉や認識のズレがあると、一見コミュニケーションが成立しているように見えて実は通じていないという事態も起こり得る。また、ミュニケーションで悩む人は他人の話に振り回されやすい人が多い。このような実態を認識して、コミュニケーションを円滑にする方法を紹介します。
部下とのコミュニケーションを円滑にする「客観視」
意見・感想・事実を区別するだけでコミュニケーションがうまく行く
まず、コミュニケーションを円滑にするために、部下の話す内容を理解すること。
部下が話す内容とは「意見・感想・事実」の三つの要素でできていることを理解して、聞く側は常にこれらを区別する意識を持つことが必要。
最近、Netflixで黒澤映画『羅生門』を観てつくづく思ったけど、人は自分の意見や感想を、さも客観的事実であるかのように言うものなんですよ。
では具体的に、テーブルの上に置いてあるミネラルウォーターで例えてみよう。
事実は「500mlのペットボトルのミネラルウォーター」。それだけなのに、人は「美味しい/美味しくない」という感想や意見を混ぜて伝えようとする。
「美味しい水」と言ったほうが自分に都合が良ければ無意識にそう言うし、「美味しくない水」と言ったほうが得ならそのように言う。状況に合わせた心理的バイアスがかかるわけだ。
これは部下だけじゃなく、上司である自分たちもそうなんだ。
むしろリーダーこそ、部下と話すときは自分が言おうとしていることを一度頭の中で客観視し、それは果たして客観的事実かどうか、自分の意見・感想が混じってしまっていないかをチェックする習慣を持たないといけない。そして、客観的事実から始まるコミュニケーションを心がけよう。
つまり、発する情報も、受け取る情報も客観的事実をベースにしよう。そうでないと双方の主観や感情論が混じり合って訳がわからなくなる。
「コミュニケーションは足りてるはずだけどなぁ。なんでうまく行かないかなあ」と悩んでいる人は、意見・感想・事実を区別するだけでも状況が変わると思いますよ。
主観や感情が混じらない事実確認の方法 – 最新で十分な情報収集のコツ
他人の話に振り回されず、コミュニケーションで悩まないために
また、受け取る情報に関しては、部下の話でも何でも、常に最新の事実を元にしよう。かつ、十分に情報を集めよう。
例えば「前もそうだったから今回もそうなる」とか、「彼に任せるといつもこうなる」という認識は、その事象なり部下なりに関する最新の状態を加味していない点で、根拠が弱い。
根拠が弱い事実把握を元に意思疎通なり問題解決なりを図ろうとすると、大抵は失敗する。それでも昔なら、「俺の話が聞けないのか!」と高圧的態度に出れば部下は動いたけど、今は無理だ。
だから、情報は事実ベースで最新のものを、十分な量集めること。かつ、集める際も、大事な部分は人の話だけで情報を得るのではなく、自ら調べよう。
コミュニケーションで悩む人は他人の話に振り回されやすい人が多い。性格が素直でいい人なのはわかるけど(笑)。他人の話に振り回されないためにも、大事な部分は自分でも調べたほうがいい。
人は二人以上いれば言うことが違って当たり前なんだから――個々の意見や感想が混ざっちゃってるからね――
調べる際のワンポイントアドバイスとしては、あえて自分とは反対意見の人の話も参照しよう。
本、雑誌、新聞。今ならGoogleで調べるのもいいだろう。
ネット時代ならではの方法としては、自分が信頼している識者はこの件についてどう見ているかを、その識者のYouTubeチャンネルで調べてみる方法もお勧めだ。
YouTubeチャンネルのトップページに飛ぶと左から順にカテゴリーが「ホーム」「動画」「ライブ」「再生リスト」「コミュニティ」と並んで、右端に虫眼鏡のアイコンがある。ここにキーワードを入れて検索すれば、その件について言及した動画が一覧で出てくるから、いくつか見てみる。
そして最初の自分の意見とバランスをとるわけだ。こんな作業も昔は紙でテキストを読むしかなかったが、いい時代になったよね。
部下とのコミュニケーションが成立しているようで成立していない
言葉のズレを正す – 言葉が正確で相手に伝わり、理解されているか?
そうやって客観視の習慣が身に着いたら、大事な仕上げの作業がもう一つある。それは、言葉のズレを是正すること。
業界用語でも何でもそうだけど、キャリアが長ければ長いほど、言葉は、自分が覚えた当時の意味や使われ方から変わっている。
第一、誰だって知らず識らずのうちに自分の意見や感想でバイアスをかけた言葉を使っている。部下も同じだから、極端に言えば、お互いオリジナルの辞書を元に話しているようなものだ。
言葉や認識のズレがあると、一見コミュニケーションが成立しているように見えて実は通じていないという事態が起こり得る。
そのリスクを回避するためにも、言葉の正確で客観的な意味を調べ直すべきなんだ。
新入社員とリーダーのジェネレーションギャップ
一般社団法人日本能率協会が行った最新の新入社員意識調査の記事があった。
それによると、理想の上司・先輩の第一位は「仕事について丁寧な指導をする人」だったという。新人からの支持率79%だ。2010年代までは結構いい線を行っていた「仕事を任せて見守る上司」は今年の調査ではビリ。支持率2割にも満たなかった。
「丁寧に指導」と聞くとリーダーの皆さんは、手取り足取り教えることだと考えるかもしれない。でも、それは一種のジェネレーションギャップで、新入社員の言う「丁寧に」というのは、「言葉が正確で行き届いている」という意味だ。
業務を指示する言葉が通常使われる意味とズレていないか、思い込みで意味を取り違えていないかどうか。事前にチェックするよう心がけよう。
部下は「何か違う気がする…」と思いながら動かなきゃいけない状況が一番苦手だ。意識調査で「指示が曖昧なまま作業を進めること」が「抵抗を感じる業務」の一位になっているのを見てもそれがよくわかる。
3.抵抗がある業務の第1位は「指示が曖昧なまま作業を進めること」で、83.7%
仕事をしていく上での抵抗感について尋ねたところ、「上司や先輩からの指示があいまいでも質問しないでとりあえず作業を進める」について、「抵抗がある」(「抵抗がある」+「どちらかと言えば抵抗がある」)が83.7%となりました。属性別に見ても高校卒群81.4%、高校卒外群84.7%となり、全般的に指示の明確さが求められると考えられます。
言葉に敏感な今どきの若者
なんで今の子はそんなに言葉に敏感かというと、生まれたときからパソコンがあり子供の頃からスマホがあるから、そうするとやり取りも全部言語ベースだからだ。
言語で情報を受け取る環境で育ってきてるから、同じ発言内容でも話すときの表情でニュアンスが変わるとか、声の強弱で愛情表現であることを伝えるとか、そういうのが通用しないんですよ。
だから、「バカだなぁお前は」と笑いながら言っても、「可愛いやつだ」という認識では受け取れない。本当に馬鹿だと言われたように感じる。今の若い子はそうなんだ。
心理学で「メラビアンの法則」というのがあって、「コミュニケーションは言語情報が7%、聴覚情報が38%、視覚情報が55%のウェイトを占める」という法則なんだけど、今の子は言語情報のウェイトがもっと上がっていると思う。
セミナーなんかでもそうでしょう。講師が話し始めるなり、ノートパソコンに打ち込み始める、講師がどんな表情で発言したかは見てない。言葉が全て。あれが象徴ですよ。
今の時代のコミュニケーションは言葉を大事にしたほうがいいと私が言うのはそういう意味です。
今どきの若者の言動が悪いんじゃなくて、そういうふうに育ってきてるんだからしょうがない。上司はそれに合わせないと。