本連載【目次】 | 前の記事 | 次の記事 |
【この記事の概要】
組織が安定的に成長するためには「現場トップの課長を無尽蔵に育成できる組織」を作る必要があります。
そのためには会社の実務品質を決める「一人前基準」である職務記述書を知識、スキル、マインドに分けて課長が作成し、会社承認のもと、これに基づいて課長が部下全員を一人前に育てる責務を負います。そして、経営者、役員、部長と課長、それぞれの役割を明確にして機能させる必要があります。但し、人それぞれ能力も違えば、価値観も違いますので、各人でやり方が違っても当然なので、基準を明確化し、それをベースに「守破離」で成長を促進させることがポイントです。
1.会社の実務品質を決める「一人前基準」
課長は実務の責任者であり、業務品質を規定しますが、その中心にあるのが一人前の人材を育成するための基準である「一人前基準」です。
課長は実務責任者で、会社の実務品質を決める、非常に重要な役割を持ちます。
会社において、価値あるものは実務だけです。管理職は、実務での価値を作れる人たちを育成する、あるいは、その人達が仕事をしやすくするために存在しています。
直接的に価値を生んでいるのは、現場の人、担当者だということが一番重要で、そこでの責任者として、その人達を束ねるのが課長、ということです。
そして、一人ひとりが価値を生む過程において、一人前の人間を作ることが、同じく一番重要でして、そのための基準が「一人前基準」になります。
2.「一人前基準」である職務記述書は課長が作り、会社の承認を得て活用
「一人前基準」である職務記述書は課長が作り部長、役員、社長の承認を得て、会社の一人前人材の育成ツールとして活用します。
一人前基準は、会社として、皆からコンセンサスを得ることが大事です。ただし、一義的には、責任者である課長が作ることになります。そして課長はこれに基づき部下全員を一人前に育てる責務を負います。
課長は、自分の課の品質責任を自分で負うわけですが、自分が責任を負うにしても、それを実際に作る人は誰かと言えば、部下なのです。
自分が責任を持つ部署にいる部下全員を、一人前に育てることについて責任を持たない限り、その状態を作ることは出来ない、ということです。
よく、自分は仕事が出来るけれども、部下が出来ないからダメだ、と言っている課長がいますが、それは本末転倒です。
自分で仕事が出来てもしょうがなくて、どれだけ部下を育て、きちんと仕事をしてくれないと、自分が期待されている状態を作れなくて、その状態を作ることが自分の責任ですから、そこから目をそらしてはいけません。
3.一人前基準の作成ポイント
一人前基準は「何がどうできるか」という形式で課長の守備範囲の業務全部につき整理する必要がありできれば業務ごとに必要な経験、注意事項を合わせて記述します。
「何がどうできるか」が大事でして、そのために必要な経験、注意事項、こういうことに気を付けないといけない、といったことがないと、「何がどうできるか」ということは、みなが理解できる状態にはなりません。
纏め方については、できれば知識、スキル、マインドに分けて記述できればより好ましいです。
できることでも、背景の知識が無ければいけません。また、作業では、一定のスキル、技術が無ければいけません。知識を付けるにしても、スキルをつけるにしても、背景にあるものはマインドです。
どういう仕事を、どういう覚悟を持ってやるか、その意識が、その人の実態に反映されるので、一番重要なものはマインドになります。
知識や、スキルが未熟であったとしても、マインド、やる気のことですが、それがしっかりしておれば、時間が経てばなんとかなるものです。
ですから、その辺をどうまとめるか、ということが重要です。
4.「現場トップ」の課長を継続して育成する仕組み
組織が安定的に成長するためには「現場トップの課長を無尽蔵に育成できる組織」を作る必要があります。そのためには経営者、役員、部長と課長、それぞれの役割を明確にして機能させる必要があります。
これは、すごく大事なことです。会社の品質は実務品質ですが、「現場トップ」の課長が実務品質の責任者となります。
「課長が無尽蔵に作れる組織」というものを作るということは、マネジメント、つまり部長、役員、経営者が、そこの構造をどう作るか、ということです。
課長を無尽蔵に作ったとしても、組織自体が時代の変化に合った事業をする必要があるので、そのドメインを見つけてくることが、社長にとっては非常に重要なことになります。
またそれを、具体的にどのように事業展開させていくかが、役員の仕事です。
部長は、組織として、それをどのように仕組み化し、誰でも安定的にできるようにするかを作る役割を持ちます。
それを受けた上で、課長は、上級の管理職が整備した制度を活用して、実質的な価値を創り出していくのです。
課長業は社長、役員、部長にとって必須科目です。課長業は、課長だけが理解していてもしょうがなくて、社長も、役員も、部長も皆、課長業を理解していることが必要です。
なぜならば、それぞれが課長を理解していないと、もし自分の部下で理解が出来ていない人がいた時に、その人を指導することはできないからです。
その中核的なスキルが一人前基準作りであると理解しましょう。
課長業は、社長にとっても、役員にとっても、部長にとっても重要なのですが、その中核的なスキルは、一人前基準作りである、ということです。
5.会社基準「職務記述書」の作成と活用。更に「守破離」で成長を促す
一人前基準は業務の基本として位置づけ、標準的なやり方で基本を身につけさせてそのあとで「守・破・離」よろしく本人の特徴を加味したやり方を模索させてください。まずは基本が大事ですので標準的なやり方としての一人前基準をマスターさせてください。
一人前基準は、標準は、皆が同じやり方で行うのが基本になります。
但し、人それぞれ能力も違えば、価値観も違いますので、各人でやり方が違っても当然だと言えます。
先ずは基本を押さえた上で、「守・破・離」よろしく、守として一番初めは基本を身につけ、それを破る段階が破で、それを離れて、自分独自の世界を作るのを離として行います。
守破離では、破や離の段階に行ったとしても、守を更に高等化させる、ということもありますので、守をぶっ壊して、独自の世界を作る、という話ではなくて、その上がある、というぐらいの認識を持つことが必要です。
◆守破離とは:「守破離(しゅはり)」は、武道や茶道から生まれた考え方で、店舗経営においても人財育成や事業発展に役立ちます。まずは師や流派の型を忠実に守り、基礎を徹底する「守」。その後、他の教えや技術を取り入れつつ自分なりに発展させる「破」。最後に得た知見を統合し、独自の境地を確立する「離」。この3段階が成長プロセスのベースです。
店舗経営に活かすには、以下を意識します。
- 基礎を徹底し、確かなスキルや運営体制を築く
- 業界の最新情報や新しい戦略を取り入れ、常に向上心を保つ
- 蓄積した知識を統合し、自社独自の強みを形にする
このプロセスを繰り返すことで、自社や人財が長期的に成長し、ビジネスを継続的に発展させることが可能になります。
本連載【目次】 | 前の記事 | 次の記事 |