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【この記事の概要】
不思議なほどの大繁盛をもたらす立地と商圏。昭和後期以降に発見された珍しい地域に見る繁盛する立地、売れる商圏の特性。
昔から「なぜ東京・西葛西周辺の店はよく売れるのか」と不思議がられていました。「団地が多いからだ」「新設された地下鉄東西線が良いからだ」「ディズニーランドが近いからだ」等々さまざまな理由、珍説がありました。昭和後期にその理由が明らかにされ、同様に全国でも解明がされました。この記事では繁盛する立地、売れる商圏の条件を6つのパターンで分かりやすく解説します。
繁盛する立地、売れる商圏。儲かる商圏特性と行動特性
PC(ポテンシャルクラスター・需要集合体、以下PCと略)にいる人達の行動がみな似てくるのは自然の成り行きと言えます。
さらに、地域の多くの人がみな同じような行動をするようになる。これもポイントです。
つまり、多くの人たちは“同じ場所”を通るということになるからです。この「同じ場所」こそ、良い立地と言えるわけです。
では具体的に、どういう地域がPCとなっているのでしょう。順番に見ていきます。
儲かる商圏「ポテンシャルクラスター・需要集合体」の特徴的な地域と売れる立地
本題に入る前に、前記事で解説した立地条件、商圏特性:PC(ポテンシャルクラスター・需要集合体)の定義について再度確認をしましょう。
その構成要素は次の通りでした。
繁盛する立地条件、売れる商圏特性:PC(ポテンシャルクラスター・需要集合体)の定義、三条件
① その地域に人々が密集している
② その地域が自然の地形や大きな施設などによって囲まれていること
③ その地域に出入りできる場所が、1カ所~数カ所に限られている
この三つの条件があてはまるような地域をPCと呼んでいます。
この定義をもとに特徴的な地域を紹介し解説をしたいと思います。
売れる商圏 (1)面の広がり型商圏
最初に面の広がりを持ったPCを紹介しましょう。
この図2は、愛知県犬山市にある「西楽田団地」という地域で見つかったPCです。
右側の写真を見ればわかりますが、人々が密集して住んでいます。そして、周囲を「農地」に囲まれています。
ですから、PCの条件①と条件②が成立しています。また、農地のある方向には行くことができません。この地域から出るとしたら、赤い矢印の一方向しかありません。
では、この特性から商圏をを証明してみましょう。
図2の地図で、南側で出られそうな場所が4個所あります。これを左からA、B、C、Dとして見ていきます。すると、次のようになります。
A:ここは歩行者のみが出入できます。クルマは通れません。
B:ここは歩行者と自転車、バイクなら通れるでしょう。クルマは通れません。
C:ここならクルマは通れそうです。しかし、道路幅が狭く対向車が来たらたいへんです。無理して通る道ではありません。
D:ここも通れそうですが、許可のないクルマは通行禁止となっています。
つまり、この地域はクルマで出入する道路が1つしかないことがわかります。
よって、この地域はPCの条件①も成立しているのですから、PC(ポテンシャルクラスター)と言えます。
PC由来のTG(交通発生源・トラフィックジェネレーター)
さて、このPCからクルマが出ようとするとクルマは北上します。
そして、そして、最初に出会う幹線道路との交差点があり、この交差点で初めて三方に分かれることになります。
ですから、この交差点は「交通発生源」ということになり、この交差点を「PC由来のTG(交通発生源)」と呼びます。
この交差点の角地に、前記事で紹介した「不思議なコンビニ店」があったのです。これで、この店が売れていた理由がわかったのです。
この西楽田団地の人口は1400人いますが、この1400人は全員、この交差点を通る、あるいは認知することが確かなのです。
つまりは、この交差点のところに1400人住んでいる巨大タワーマンションがあるようなもので、コンビニはそのタワーマンションの1階出入口にあるようなものです。ここで売れないほうがおかしい。そういう一等地だったわけです。
人々は「すぐ近くにある」店ばかりではなく、近くになくても「必ずその前を通る」店、あるいは、「そこにしか行けないような」店を利用することがあったのです。
そういう人たちは、PCになっている地域に住んでいるのです。
西楽田団地以外にも「〇〇団地」などの名前がついた地域はPCになっていることが多いことが、その後の調査でわかってきました。
そして、このことを知ったチェーン企業のいくつかはそうした立地を探し出し、成功をしていることも確かです。
PCには、この他にもいろいろな形があることが、今ではわかっています。
◆TG(交通発生源・トラフィックジェネレーター)の詳細記事
売れる商圏 (2)行動制約囲まれ型商圏
図3は、東京のベイエリアで見つかったもので、湾岸型PCです。
昔から「なぜ西葛西周辺の店はよく売れるのか」と不思議がられていました。
「団地が多いからだ」、「新設された地下鉄東西線が良いからだ」、「ディズニーランドが近いからだ」、「若い世代の家族が多いからだ」、「都心に近いからだ」、「葛西臨海公園があるからだ」等々さまざまな理由、珍説があったのです。
しかし、今では、この地域が巨大なPCになっていて、人々の行動が制約を受けているからだと考えたほうが理にかなっているように思えます。
制約を加えているのは、海であり、荒川、旧江戸川という大河川、そして、東西を走る大幹線。
住民は簡単にこのエリアから出られません。出るとしたら、その道、交差点は限られてくるのです。だから、みんなが利用する場所は共通して、限られています。
その限られたところに出店するからこそ、大繁盛しているというわけです。
売れる商圏 (3)幹線囲まれ型商圏
完全に閉ざされたようなPCではありませんが、大幹線に囲まれると、歩いている人にとっては、似たような状況になります。
大幹線は、横断歩道ある地点と別の横断歩道のある地点までの間は、横断できません。大幹線は、人の行動を分断します。
ですから、図4にある名古屋市内のように、四方八方を大幹線に囲まれた地域というのは、歩行者にとってのPCになっていると言って良いでしょう。これを幹線囲み型PCと呼んでいます。
そして、そういうPCにいる人々は、数少ない地域脱出地点に向かうわけです。それが、地下鉄の駅です。だから、これらの駅近くなると、急に繁盛立地になるわけです。
売れる商圏 (4)河川囲み型商圏
図5は、東京の湾岸からやや内部に入った場所ですが、川が蛇行しているために、河川に囲まれたようなPCになっています。
大昔なら、この地域は洪水氾濫を恐れてだれも住んでいなかったでしょうが、今は違います。ここにも多くの人々が密集して住んでいます。
この地域の需要はどこで解消できているか、その有力立地はどこか、みなさんも考えてみて下さい。
売れる商圏 (5)山麓型商圏
図6は宮城県仙台市の北部の山麓地帯に広がる住宅地です。ここにも明確なPCが形成されていることがわかります。
どこに「PC由来のTG」があるか、つまり、どこに繁盛立地があるかすぐにわかるはずです。
売れる商圏 (6)高層マンション型PC
昨今では、30階建て、40階建てのタワーマンションも珍しくありません。
この高層マンションもPCの三条件を完全に満たしていることは確かです。ですから、PCです。
出入口は、文字通り、玄関と裏玄関(ないしは非常口)しかありません。限られた場所からしか出入できません。
ほかにも、さまざまなPCを見つけることができます。
ただし、そのためには、ふだんから意識して、いろいろな土地、街、都会を歩き見て回ることがたいせつです。そして、地図をじっくり見て考える習慣もつけることです。
こうして、あなたもプロ中のプロとしての立地探しができるようになることを願っております。
また、あなが見つけたPCや繁盛立地を筆者に教えてください。ピープル・ビジネス・オンライン編集部まで連絡をお待ちしています。
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