【この記事の概要】
近年、画期的な飲食店のAI電話予約サービスが増えています。一方で店が忙しい時間への架電や店舗情報をWEBサイトに無断掲載するトラブルが急増し、店に悪影響を及しています。
AI予約電話は、店が忙しい時間や週末のかき入れ時にお構いなく電話があったり、繰り返し電話がされるなどの迷惑行為や店舗情報の無断掲載もあり、飲食店の営業に大きな影響を及ぼし、SNS拡散やニュースでも取り上げられる事態に至っています。今回は、この飲食店AI予約代行の実態と必要な対策を紹介します。
【混乱続出】飲食店予約代行システム「オートリザーブ」とは
オートリザーブとは、AI(人工知能)を活用した飲食店の予約代行サービスのことで、予約方法は「公式予約」と「予約代行」の二通りあります。
具体的には、利用者はアプリやサイトから予約したい飲食店を選択し、日時や人数などの情報を入力すると、その場で予約が完結するのが「公式予約」。AIが店の営業時間になったら自動で電話をかけて予約を代行するのが「予約代行」です。
この「予約代行」は、AIが飲食店の営業時間内に電話が繋がるまでかけ続け、電話に出るとAIの自動音声が流れるシステムです。
WEBサイトやアプリへの掲載手数料を削減できる利点がある一方、店からすると忙しい時間帯に迷惑なタイミングで電話が入るため問題も起きています。
AI音声の対応で意思疎通も取りづらく、事前の確認をしたくても充分に情報を得られない状況もあります。
うまく利用すれば手数料や人件費の負担を抑える可能性がありますが、無断で店の情報が掲載されているといった点も確認されています。
【困惑と物議】飲食店を悩ませるオートリザーブが迷惑な理由
予約代行サービス「自動AI音声」が発生させる店の混乱
まず、飲食店が予約システムを導入するメリットについて考えてみましょう。
■飲食店が予約システムを導入するメリット
1. 予約業務の効率化・負担軽減
2. 予約の取りこぼしやダブルブッキングの防止
3. 顧客のニーズ把握や課題の可視化
4. 複数店舗の情報の一括管理
5. 売上改善
6. 混雑時の機会損失の低減
さらに、お客様にもメリットが提供できます。
■予約システム導入による顧客へのメリット
1. 事前予約によるストレスフリーな状況の確保
2. 待ち時間の短縮
3. 席の希望を聞いてもらえる
4. 特別なサービスの提供
このように多いはずのメリットも、店にとって本来の営業の妨げになるような実態です。
例えば、AI予約代行サービスは、店が利用者と直接やり取りできないため、意図しない時間帯に電話がかかってくることで混乱を招いたり、AIの自動音声では受付内容を十分に伝えきれず、人数や希望日時がきちんと確認できないまま予約が進んでしまうなどがあります。
さらに、AIからの電話は、受電されるまで架電が繰り返されるため、書入れ時に何度も電話されることで通常の電話予約の妨げになったり、従業員がその対応に時間を奪われて来店されたお客様への対応に影響がでたりすることで、本来の営業の妨げになり深刻な状態です。
また、誤った店舗情報の掲載や無断掲載なども相次いでおり、このような事態は、2021年頃から現在まで続いています。
【無断掲載】オートリザーブがもたらす情報トラブルの深刻な実態
サイト運営会社に連絡が取れない?無断掲載に飲食店が悲鳴を上げる
オートリザーブに店の電話番号や営業日などが無断掲載されていたり、その情報が誤っていたりすることもあり、利用者も店側にも大きな混乱を招く原因となっていす。
また、事前に掲載許可や契約がない中でオートリザーブのアプリや公式ページには検索対象として掲載されているため、個人情報保護法やプライバシーポリシーなどの法的問題もあります。
これら迷惑を被った飲食店が運営会社に問い合わせをしても連絡が取れない、十分な返答が得られない場合もあり、問題に発展しています。
無断掲載された内容の訂正や削除依頼をしても、運営側の対応がないまま時間が過ぎることもあったり、無断掲載が続けば利用者だけでなく店の信頼にも傷がつくことになります。
【店舗負担増】AI予約システムの便利性と深刻な店舗への負担
忙しい営業時間に店長や従業員の時間奪うAI電話
AI予約システムの導入は、先述の通り利用者から見るとオンラインで予約手続きが済むので非常に便利ですし、店舗にとっても電話予約の手間を省ける可能性があります。
しかし、店側が忙しい時間帯や週末などのかき入れ時に何度も鳴り続けるAI電話に対応する負担は想像以上で、お客様への対応を優先したい店長や従業員にとって時間を選ばない電話はとても迷惑です。
さらに、オートリザーブからの予約の電話が30分以上鳴り続けたり、何回も電話が繰り返されたりするとお客様にも迷惑がかかしますし、調理やホールとの両立が難しくなって本来の営業を妨げるので、売上、サービスや品質にも悪影響を及ぼします。
【SaaS最前線】国内企業が推進するAI電話予約サービス
AI予約はとても画期的といえるサービス
本来、AI予約はアプリやWEBサイトから店を選び、日時や人数を指定すると、AIが代わりに電話予約を行う仕組みはとても画期的といえるサービスです。
手数料を極力減らしたい店や、電話対応に時間が割けない利用者にとってオートリザーブは確かに便利かもしれません。
国内企業がこうしたサービスを開発する背景には、多くの人がインターネットで予約を済ませたいというニーズがあります。
画期的なシステムの落とし穴
飲食店が独自の方法で集客し、オンライン予約ページやSNSを使った従来通り集客施策に加え、AIを活用した電話予約など複数の施策で効果的に集客し、売上を獲得することで手数料や運営コストの削減を可能にします。
AI予約は自動で予約対応をしてくれるメリットがある一方、掲載情報のメンテナンスが不十分だと、店への信用問題や利用者との間にトラブルが生じる恐れなど、デメリットも大きいといえます。
複数の運営会社を比較検討し、サービス内容やポリシーを慎重に確認してから導入すれば、負担を減らしつつ売上アップも可能にします。
【対策一覧】飲食店が取るべき迷惑電話への対策
このような迷惑行為の対策として、店の電話でオートリザーブのAIからの電話を着信拒否する方法がありますが、店の電話が話し中になってしまい他のお客様に迷惑をかけるなどのトラブルも発生しています。
それでは、迷惑電話から店を守るためにはどうしたらいいのでしょう。できる範囲で対策をしてみましょう。
■AI電話予約サービス迷惑電話対策
対策1:留守番電話で受電し、落ち着いた時間に折り返し電話をする
忙しい時間帯に電話があっても留守番で受電し、必要な場合、忙しさが落ち着いた頃に折り返し電話をする。留守番に録音されたAI予約電話の音声は他の対策に使用。
対策2:「AI予約は一切受けない」ことを消費者に意思表示する
「AI予約は一切受けない」。また、忙しい時間帯には「電話に出られないことがある」旨をSNSやホームページで呼びかけたり、お客様の来店時に注意喚起する。
対策3:運営会社に店舗情報の削除依頼をする
AI予約運営会社に店舗情報の削除依頼をメールで何度か送り、削除に応じない場合、会社宛に内容証明郵便を送る。
対策4:有効な着信拒否の方法を確認する
通信会社と電話機メーカーに連絡し、「AI予約電話」を着信拒否の有効な方法や迷惑電話対策を相談し、必要な設定など対策のアドバイスをもらう。
対策5:個人情報保護委員会に通報する
内閣府の個人情報保護委員会(個人情報保護法相談ダイヤル:03-6457-9849)に連絡し、契約も許可もなく店舗情報が勝手にWEBサイトに公開され、それを知らない利用者の予約によって、個人情報の適切な取得なされていないことを通報する。
対策6:警察総合相談電話「#9110」に相談をする
AI予約電話による業務妨害を警察に相談する方法もあります。その場合、受電履歴やその時間帯の売上、店舗情報の無許可掲載などが説明できるようにして、まずは警察総合相談電話「#9110」に電話、相談する。
これらの対策は、複数実施すると効果的です。
【まとめ】今回の騒動と予約システム導入検討時のポイント
今回のAI予約迷惑電話には、AI音声による予約電話と無断掲載が大きな要因です。
AIを活用する利便性は魅力的ですが、営業に迷惑な行為や運営会社の対策は、飲食店にとって死活問題ともいえます。迷惑行為があった場合、まずは先述の対策を講じてみましょう。
今後、積極的に予約システムやAI予約の導入を検討する際は、事前にWEBやSNSで口コミや評判を確認されることをおすすめします。
WEB化が進んだ現在、WEBサービス提供会社によっては効率を重視して連絡が取れない。あるいは取りづらい。といったことが多々あるからです。
今回のような事態に誠意をもって迅速な対応をしている運営会社かどうかは口コミを見れば分かることが多いため、今回紹介したポイント、メリットやデメリットを参考に自店舗に最適な予約システムを検討してみてください。
このような迷惑行為が止んで安泰な経営環境のもとで営業に集中できる日が一日も早く訪れることを切に願います。