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【この記事の概要】
あなたの店は、駐車場でお客様を失っていませんか?
かつて、駐車場はアスファルト舗装していることもなく、ましてや、乗用車を止める位置もはっきり決められてもいませんでしたが、店舗経営の発展とともに駐車場の近代化も進みました。一方、「これは違うだろう」と思えるような駐車場で立地の観点から言っても、それはお客さまを失うもったいないことがあることも事実です。そこで本記事では、1970年代に確立された商売繁盛の大前提「集客ができて、売上が上がる駐車場の条件」を身近な事例とともに分かりやすく解説します。
集客と売上アップ!商売繁盛の大前提「駐車場」の標準化
1970年代に確立された使いやすい駐車場の配置方法や仕様
日本には、この狭い国土に、約6200万台の乗用車が走っています(注1)。ほぼ、人口2人に1台の割合です。一部の都市部を除いて乗用車なくては暮らしが成り立ちません。
今や都心部の超一等地を除いて、どんなお店でも、「“駐車場”がある=クルマで来店可能であること」が商売繁盛の大前提です。
しかし、この“駐車場”について、その配置方法や仕様を確立したのがマクドナルドであったということは意外と知られていません。
乗用車の保有台数が1000万台になったのが1967年で、マクドナルドがドライブスルー1号店を出店したのが1977年ですが、当時は郊外にレストランがあること自体が珍しかった時代です。
ですから、駐車場がアスファルト舗装していることもなく、ましてや、乗用車を止める位置もはっきり決められてもいませんでした。
そこで、日本のクルマの大きさに合わせて、幅2.5m、奥行き5.0mという1台当たりのスペースを最初に決めたのがマクドナルドでした。もちろん、駐車場はアスファルト舗装が前提です。
このほかにも、駐車するときに後輪を止めるストッパーを敷設することや、クルマを誘導するためのラインや文字を白ペイントで描くことなどを次々に決めて行きました。
これを多くの郊外レストランが参考にして、この「マクドナルド式」が普及していったというのが実情です。
(注1)一般社団法人日本自動車工業会JAMAによると四輪車保有台数は7,875万6千台で、うち 乗用車は、6,232万台となっている(2023年12月末現在)。
駐車台数を増やそうと駐車スペースを狭くした店の末路
中には、駐車場の台数を多くしようと、幅2.5mのところを2.3mと狭くしてみた店も出ましたが、こうした店は「必ず」閉店の憂き目にあっています。
なぜなら、マクドナルドがこの規格を決める前には、何度も何度も実験を繰り返し、運転者の心理を確かめていたからで、決して勝手に決めたものではなかったからです。
たった20センチメートルの違いで、普通乗用車のドライバーにとっては、「楽に止められる」と「停めるのがすごく難しい」と変化するのです。
お客さまにとっては、どちらが良いかは一目瞭然です。
さて、この当然の駐車場について、近年でさえも、「これは違うだろう」と思えるような設置の仕方をしている店があることが事実です。立地の観点から言っても、それはお客さまを失うもったいないことです。
商売繁盛の大前提「集客ができて、売上が上がる駐車場8つの条件」
では、1970年代に確立された商売繁盛の大前提である「顧客を惹きつけ、売上を上げる駐車場の条件」を身近な事例から重要なチェックポイントを解説します。
集客ができて、売上が上がる駐車場の条件
■商売繁盛の大前提「集客ができて、売上が上がる駐車場8つの条件」
条件1 駐車場は、お店の建物と同一の敷地内にあること
条件2 駐車場は、店前道路から進入できること
条件3 駐車場からは、元来た所へ帰れること
条件4 駐車場の車1台分の幅は2.5m以上なければならない
条件5 駐車場は、その入口も出口も見えなければいけない
条件6 駐車場内に、樹木や大きな構造物を設置しない
条件7 夜間照明が全体に行き渡るようにすること
条件8 じゅうぶんな駐車台数があること
次に条件ごとの重要なチェックポイントを解説します。
条件1 駐車場は、お店の建物と同一の敷地内にあること
まずは、お店と離れたところに、駐車場を作っても人々は来店してくれない、ということです。
多少の例外はありますが、原則、車道を挟んで反対側に設けたり、店から歩いて5分かかる場所にあったりしても、駐車場があることにはなりません。
また、店前や側道に、停車も駐車もできるから、「車ドライバーもお客様になります」と思っている人もいるようですが、公道は、原則的に「停車も駐車もしてはいけない」と考えるべきです。
昔は、確かに大手ファストフードでさえ、幹線道路沿いに「自前の駐車場を持たない」店を次々と出していて、その社長さんからじきじきに「なかなか駐車場は(確保が)難しいですから仕方ないのです」と言われるようなことがあり、びっくりしたものです。
同一の敷地ではないが、間に、通行車両のほとんどない狭い道を挟んでいるような場合は、この条件を満たしていると考えて良いでしょう(図1参照)。

条件2 駐車場は、店前道路から進入できること
これは、あえて言う必要がないくらい重要なことです。
しかし、現実はそうなっていないことがしばしば見受けられます。
例えば、駐車場へ入るための進入間口が5mしかないなどです。
これでは、店前道路から自動車の進入はきわめて困難になります。進入間口は、最低限「6.0m」以上必要です。
また、よく見かける事例に、数店~10店前後の店が同一敷地を共有しているような場合、店からひじょうに離れたところに進入間口が設置される場合があります。
つまり、自店舗の周囲には、間口がない。
これでは、そうした状況を初めから知っている客しか来店できません。衝動来店客は期待できなくなります。

条件3 駐車場からは、元来た所へ帰れること
これは、店でいちばん大事な「目的来店のお客さま」をないがしろにしていませんか?ということです。
店前道路の交通量が断続的にひじょうに多かったり、中央分離帯などがあったりすると、クルマが「元来た所」に帰れないという事態が発生します。
この顧客の行動パターンが店舗経営に及ぼす影響について来店動機と固定客化を整理してみましょう。
■顧客の行動パターンにみる来店動機と固定客化の関係
・衝動来店、ついで来店:「自宅・所用先 → 店 → 別の場所」という順で行動する人は、お客様になってくれる。
・目的来店:「自宅・所用先 → 店 → 元の場所」という順で行動する人はお客様になってくれない。
つまり、「元来た所」に帰れないということは店でいちばん大事な「目的来店のお客さま」をないがしろにしてしまうことになるのです。
しかし、よく駐車場まわりを見ると、裏道をいくつか経由して、元来た道に帰ることができる場合があるものです。
こういう迂回路のようなものが見つかったなら、きちんと駐車場に案内板を設置しておくことがお客様の身になった店というものです。

条件4 駐車場の車1台分の幅は2.5m以上なければならない
これは、冒頭でお話ししたことです。
くどいようですが、確かにこの幅を短くすると、同じ敷地でもより多くの台数を「確保」できます。しかし、2.3mにしたら、途端にその幅内に入れない車が続出します。
すると、駐車する車が少しずつずれていき、結局、思惑通りにはならないものです。それより、多くのお客様を不快にさせることでしょう。「ぜったい」駐車幅を2.3mにするのはやめてください。
また、最近では、駐車場の仕切り線をU字タイプの白線を使っていることが多いですが、この場合はその中心から中心までの距離と考えてください。

条件5 駐車場は、その入口も出口も見えなければいけない
これは、条件2と同じようですが、少し異なります。
物理的には容易に進入も退出もできるにもかかわらず、道路から走ってきて「どこが入口なのか見えない」、だから入れない。
ついでに、どこに駐車場から出られるのか、その「出口」もわからない。よく見えない。
なので、危なくて「そこから進入して良いのか」が不安になって「入ること」もできない。
そういった現象のことです。
例えば、この原因となるものに、“のぼり旗”があります。
これは、お店の営業感、「営業中です」という雰囲気を出すために、有効です。
しかし、
「のぼり旗が邪魔で、入口がわからない」。
「のぼり旗が邪魔で見通しがきかなくて出るのがたいへん」
となると話は別です。
車の出入りに支障が出てしまうようなのぼり旗の置き方にするのは本末転倒です(写真1参照)。

条件6 駐車場内に、樹木や大きな構造物を設置しない
多少、敷地が広いとデザイン的な良さを求めてなのか、樹木などを駐車場内に設置している店を見かけます(写真2)。
これでは、せっかくの面積が無駄になるばかりか、駐車場の見通しも悪くします。

樹木などを駐車場内に設置していると駐車場の使い勝手が悪くなり、さらに、事故の原因にもなります。
具体的には、照明塔などの構造物が何の囲いもなく立っていたりすると、車がバックしたりするときに死角ができて自損したり、車同士の接触事故など、思わぬ危険をもたらします。
ドライバーの過失とは言え、そんな思いをしたお客さまは二度とこの店を利用したくないと思うでしょう。
条件7 夜間照明が全体に行き渡るようにすること
駐車場が広ければ広いほど求められることです。また、ローカルな地域でも同様です。しかし、夜間照明を忘れていませんか?
夜間照明は防犯上、絶対欠かしてはなりません。駐車場に「暗がり」ができてしまうような設計はぜったいにだめです。なぜならば、夜間に人々は来なくなるからです。
自店舗の駐車場の明るさを他の店と比較して検証してみることをお勧めします。また、できるならば駐車場全体を監視できる「防犯カメラの設置」が望まれます。

条件8 じゅうぶんな駐車台数があること
何台がじゅうぶんと言えるのか、これについての明確な基準はありません。
駐車台数はそれぞれの業種業態あるいは企業で決めておくべきことです。
チェーンレストランではおおむね30台以上としているようですが、自店舗に合ったじゅうぶんな駐車台数を確保しましょう。
とりわけ、駐車場台数は、お客様の滞在時間が長いほど多く必要になることがわかっています(図5)。

また、(客席数+店内で待たせることができる人数)÷同伴人数で計算することもできます。一つの目安としてください。
余談ですが、駐車場に車が最も止めやすいのは、斜めにスペースが取ってあることです。敷地に余裕があるUSAではよく見かけます(図6)。

が、クルマは必ずバックから入れるものだと固く信じている几帳面な人が多い日本ではほとんど見かけませんね。日本はつくづく不思議な国だと思います。

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