(最新版)ピープル・ビジネス理論 0章 概論 2 ピープル・ビジネスと呼ばれるワケ

ピープル・ビジネスの象徴』的写真 1980年代の米国マクドナルド社の求人広告 人財の多様性を認め、その多様性を活かす「ダイバーシティとインクルージョン」
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【この記事の概要】
 1980年代、米国マクドナルド社の求人広告に見る『ピープル・ビジネス』
 ピープル・ビジネスとは、人々の多様性を認め、その多様性を活かし、組織をまとめてパフォーマンス向上させる店舗経営のことで、店という狭い空間で、性別、人種、年齢、宗教、経歴や価値観など、多様な要素を持つ人々が持つ違いや特性を理解し、受け入れ、それぞれが力を発揮できるように経営理念や経営目標達成のために支援し、働きやすい環境をつくること。

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ピープル・ビジネスと呼ばれるワケ

あなたはこの写真を見てどう思い、何を感じますか?

ピープル・ビジネスの象徴』的写真 1980年代の米国マクドナルド社の求人広告 人財の多様性を認め、その多様性を活かす「ダイバーシティとインクルージョン」

 この写真は1980年代の米国マクドナルド社の求人広告で『ピープル・ビジネスの象徴』ともいえる写真です。

写真からも読み取れるように、ピープル・ビジネスの店舗や事業所などで働く人たちは、性別、年齢、国籍、人種、言語、学歴、経歴や趣味嗜好や価値観など多様な人たちが店という狭い空間で一緒に働いています。

その人たちの多様性を認め、多様性を活かし、組織をまとめてパフォーマンス向上させる場が店舗であり、店長やスーバーバイザー(SV)ら管理職の責任のもとで、会社のビジョン、経営理念、目的や目標などの達成のためにベクトルを合わせ、協力し合って仕事をしています。

このことをピープル・ビジネスと呼んでいます。別名「ペニービジネス」とも呼ばれており、日本語では「1円をかき集める泥臭い商売」の意もあります。

このようにお客様、従業員も関係者も全て人が関わっていることから「ピープル・ビジネス」とも呼ばれ、関わる人たちのワーク・ライフ・バランスとクオリティ・オブ・ライフ(QOL)の実現を目標に繁盛を追求し、企業規模の大小や業種業態を問わない、店舗や事業所などの経営を指します。

人財の多様性を認め、その多様性を活かす「ダイバーシティとインクルージョン」

「ダイバーシティ」と「インクルージョン」の意味と違いとは?

 ピープル・ビジネスにおいて、人々の多様性を認め、その多様性を活かす、「ダイバーシティとインクルージョン」から組織をまとめることは非常に重要で、これらの考え方のもとで店舗経営や人財開発の仕組みが開発、構築されてきました。

このダイバーシティとインクルージョンの意味と違いとは何でしょうか。

「ダイバーシティ」とは、多様性の意で、人々の違いや多様性を尊重し、その特性を活かすことが目的です。具体的には、性別、年齢、国籍、人種、言語、宗教、性的指向、障がい、学歴、経歴、趣味嗜好や価値観などの属性や多様性を受け入れ、さまざまな人が集まった状態のことです。

次に、「インクルージョン」とは、 包括・受容の意で、多様な要素を持つ人々が持つ違いや特性を理解し、受け入れ、それぞれが力を発揮できるように支援し、働きやすい環境をつくることを意味します。ここには、異質なものを受け入れる柔軟性や共感、チーム内での意思疎通を重視したコミュニケーションが求められます。

この二つの概念は、別々の意味を持ちながらも、相互に関連し合っています。ピープル・ビジネスにおいて、ダイバーシティを重視することでインクルージョンが促進され、組織全体のパフォーマンス向上やイノベーション創出に繋がると言えます。

ピープル・ビジネスの別称「ダイバーシティ(Diversity)」

企業がダイバーシティを重視し、推進する背景と狙い

 ピープル・ビジネスは別称「ダイバーシティ(Diversity)」とも呼ばれ、元来、人権問題や雇用機会の均等などを説明する際に使用されていたのですが、現在では多様な人財の積極的登用と活用によって組織の生産性や競争力を高める経営戦略としています。

ダイバーシティが推進され始めたのは1960年代のアメリカで、もともと多様な人財を積極的に活用しようという考え方のもと社会的マイノリティの就業機会拡大を意図して使われることが多かったのですが、現在は先述の多様性を受け入れ、広く人財を活用することで生産性を高めようとする考え方があります。

企業がダイバーシティを重視し、推進する背景には、有能な人財の発掘、斬新なアイデアの喚起、社会の多様なニーズへの対応といった狙いがあります。

日本では1980年代頃から徐々に導入が始まり、2010年代からの深刻な人財不足対策としてシニア層の雇用を。また、1993年に制度化された外国人技能実習制度、2019年から特定技能という在留資格制度により日本国内での外国人の就労が増え、ダイバーシティが積極的に進められ、現在に至っています。

ピープル・ビジネスにおける「ダイバーシティ」と「インクルージョン」の事例

モスバーガー「モスジーバー」の事例

 モスバーガー五反田東口店では、在籍するアルバイトの2割、約10人が60歳以上のシニアを登用していました。人生経験豊富なシニア層はお客様への気配りも上手いため「モスジーバー」と愛着を込めて呼ばれていました。

シニア層の就業希望時間は比較的余裕があるため、早朝・深夜にシフトを組むことも可能で大きく貢献し、現在では全国的にシニアの雇用を促進しています。

スーパーマーケット「新鮮市場きむら」の事例

 香川県を中心にスーパーマーケット「新鮮市場きむら」を展開する株式会社きむらでは定年制度の廃止と高齢者を積極的に100人採用をしました。

その内容は、65歳以降も本人の希望で雇用を継続して会社が認めれば賃金・役職もそのままの制度導入から、高齢社員だけでなく、50歳代のモチベーションアップと生きた教科書として現場の運営水準も向上するなどの結果を出しています。

この事例のように現在では、人手不足も相まってシニア層を積極的に雇用しているチェーンも多くなっています。

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