ピープル・ビジネス理論 8章 人事評価 1.人事評価制度とは

【この記事の概要】
 「目標主義か?ノルマ主義か?」「多面評価で公平な評価?」
人事評価の歴史は「渦巻く金と欲望、試練の連続」。経営者を悩ます部下の自己防衛本能。有益な人財の確保と育成から年齢、学歴や経験に関係なく主体的で創造力のある経営チームをつくる

人事評価制度の歴史とは、渦巻く金と欲望、そして承認欲求や自己防衛本能による試練の連続

人事評価制度の歴史を紐解くと、1930年代、アメリカから科学的管理法の一部として、その評価方法が導入され広がり、1937年経営コンサルタント荒木東一郎による「人事考課表」が、1954年には経済学者のピーター・ドラッカーが著書で提唱した「目標管理制度*」などが採用されていった。

1970~80年代にかけて、大企業を中心に人事考課の三要素*で人事考課が行われ、1990年代以降、成果主義や客観的評価のために上司の評価だけでなく、人事担当者、同僚や部下など、あらゆる立場から評価する多面評価(360度評価)が導入されていった。

成果主義にはメリットの反面、運用実態から本来「従業員の自主性」で達成を目指す「目標主義」であるべきが会社が一方的に設定した「強制的、義務的な目標」である「ノルマ主義」の要素が強く、達成を執拗に迫られることで自爆営業といった粉飾、心身が追い込まれうつ病などの精神疾患を発症するなど社会的問題にまで発展するといったデメリットもある。

多面評価では、実際に仕事ぶりを見ていない人たちが被評価者に対して好き嫌いなどの個人的な感情移入による主観が加わり、本来目指すべき客観的評価ではなくなったため曖昧要素が排除できなかったり、モチベーションが低下したり、人間関係が悪化したりなどの問題点が露呈した。

どんなにマニュアル化やシステム化をしたとしても、その設計や運用は人がする。

そのため、このように人事評価制度の歴史は、渦巻く金と欲望、そして承認欲求や自己防衛本能による試練の連続であった。

◆目標管理制度*:[英]Management by ObjectivesでMBOと称し、個人や組織で目標を設定し、達成のためのアクションプランの進捗状況や目標の達成度で評価をする制度のこと

◆人事考課の三要素*:業績考課(遂行した仕事の量・質)、能力考課(仕事の遂行能力)、情意考課(仕事への意欲や勤務態度など)のこと

すべては「日本式経営法への挑戦」から始まった

店舗経営(ピープル・ビジネス)における人事評価制度の歴史は、1950年から70年代にかけて米国からフランチャイズチェーンやチェーンストアが続々と日本に上陸*し、その中、人事評価制度の原点は1971年7月20日、日本マクドナルド第1号店 銀座三越店のオープンから始まった。

『マクドナルド―わが豊饒の人材』ジョン・F. ラブ (著)、 徳岡 孝夫 (翻訳)に「藤田の協力で、アサハラは若くて創造力のある経営チームをつくることができ、因襲的な老人が権力を握る日本式経営法に縛られないよう注意を怠らなかった」と記載されている。

この「アサハラ」とは、当時、マクドナルドの3代目社長兼CEOのフレッド・L・ターナー氏の腹心で、日本上陸にあたり米国本社から送り込まれた日本マクドナル運営部顧問で日系二世「ジョン・アサハラ」さんのことだ。

日本マクドナルドは同時期に日本上陸した他チェーン店とは異なり、ハンバーガーという商品が経営パッケージやその運用方法とともに輸入されていた。

この日本上陸にあたりターナー社長はマニュアルに徹底的服従の日本人の姿にマイナスを感じたことから、日本式経営手法を変えるために日本マクドナルド創業者藤田田氏のもとでアサハラさんが現場に目を光らせてピープル・ビジネスにおける人事評価制度の原型が築かれていった。

後に、その概念を受け継いだ林俊範、その愛弟子の筆者が様々なチェーン店への人事評価制度の導入によって日本版ピープル・ビジネスの人事評価制度の構築がなされ、現在形にまとめられた。

・フランチャイズチェーンやチェーンストアが続々と日本に上陸した*(参照先:ピープル・ビジネス理論 0章 概論 5.ピープル・ビジネス理論の誕生と構築の背景)

ピープル・ビジネスにおける人事評価制度とは

人事評価制度の落とし穴。「評価項目」や「評価方法」を変えてもうまく機能しない

人事評価制度は、企業の目標達成のため、従業員の仕事ぶり、貢献度や成果などを総合的に評価し、報酬や待遇に反映、人員配置などの意思決定が主目的の制度のことと一般的には解釈されている。

ピープル・ビジネスでは、これらに加え「ピープル・マネジメント」や「パフォーマンス・マネジメント」の概念である人財育成や能力開発を含めた人的資源開発までを網羅している。

シェアお願いします
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
この記事の目次