店舗経営マニュアル 1.マニュアルとノウハウとは

店舗経営 ノウハウ
本連載記事目次次の記事

マニュアルとは成功と失敗の事例集。 機械的な人の育成ではなく、失敗から学び人間力を開発。人、物、金の目的別三分冊から構成

この記事の目次

1.マニュアルとノウハウとは

(1)マニュアルとは

店舗経営(ピープル・ビジネス)とは、人に特化し、ビジネス全般に人が関わるビジネスのことを指し、その成功と失敗事例をまとめたのがピープル・ビジネス理論です。ここで紹介する店舗経営マニュアルも人に関することが中心で、商品に関わる内容は発注、品質管理や歩留まり程度になります。ほとんどの内容は店舗経営を通じ能力開発から売上や利益を増大させる人に関わる内容で構成されています。よって、一般的解釈と異なるピープル・ビジネス理論における各ツール類の定義、考え方や構築の背景を理解の上、各項に進まれることをお薦めします。

会社の経営理念、ビジョン、経営戦略、経営方針等の諸政策を達成するために形成されたチェーンオペレーション・システムを遂行し、お客様に最高の商品やサービスを提供し、信頼経営の実現(利潤経営と物心両面の幸福追及)実現をするための一貫した法則でオペレーションと連動させることが必要です。

マニュアルを一言で表すならば、「現場の失敗と成功の事例集」のことで、「手順と基準」が明記されたツールです。あるべき論、べからず集、手引書や作業指示書でもなく、機械的な人間を育成するものでもありません。人の潜在能力を開発して、人間力向上によって最大の売上と利益獲得を可能にするものです。

(2)ノウハウとは

「再発防止策と生産性向上のために時間の使い方」と定義し、形式主義ではなく本質主義で、現場事例を原則SV(スーバーバイザー=店長の上司)らによって、会社中枢部である本社人財開発(教育)部などに吸い上げて再検証の後、SVエリア単位で現場へのノウハウ導入と構築を推進し、その過程でマニュアル類の改訂も行います。

(3)マニュアルやノウハウの実践

店舗経営の実践において、店舗とは「1冊の問題集」、プログラムは「店舗経営を習得するツール」を意味しています。常に実践し結果をだすためにプログラムは目標、目的、実施期間やアクションプランが明記された「人の能力開発」をする内容で構成されています。

2.マニュアルの熟知とマニュアル化

マニュアルの熟知とは読み合わせ、知識の有無や暗記のなどを意味するものではありません。「自分の心の底に揺れない不動の心を様々な困難の時に、それを乗り越えていく力が発揮できる状態のこと」をマニュアルの熟知と呼んでいます。マニュアルの熟知とは実践によって体得し、常に実践できることを意味します。

現場オペレーションでトレーニング、人事異動や退職時の引継ぎなどの機会に口伝や必要内容などを会社支給のツールにメモを繰り返すによって成功と失敗の事例を集めることをマニュアル化と呼んでいます。具体的には、以下の手順で実施します。

マニュアルの作り方(マニュアル化の主な流れ)

① トレーニング等の機会において、最初はA4紙、1枚程度に大項目を記した会社支給のツールを準備します。

② 使用方法は各機会に記載内容の読み合わせではなく、ツールに明記のない内容(根拠や裏付け)に基づいて伝え、そのツールにメモを取ってもらいます。

● 行間を伝えるとは、「Why(なぜ)」と「How(どうして)」のことで根拠や裏付けのことです。
● 根拠や裏付けとは、事例や経験談、主に失敗事例と再発防止策(ノウハウ)のことで、その人の経験のことです。

③ このツールを使って、一定期間繰り返し行います。その結果、知見や事例が集まります。

④ その事例集を体系的にまとめたものがマニュアルになります。この機会を繰り返すことで内容は加筆、ブラッシュアップされて精度も向上します。

マニュアルは管理職が本社本部のデスク上で作成したり、人事異動や退職などで0ベースから作成したりすることでもありません。もしこのような状況がある場合は、ノウハウ構築が機能していない証でもあります。マニュアル活用機会の繰り返しからノウハウは属人的ではなく企業資産として形成されて実践的マニュアルが完成するのです。その実証例がこのピープル・ビジネス・オンラインなのです。

当初は数枚から始まったマニュアルは、現在では延べ1万ページを超えました。その過程で5万回の失敗から5万項目の再発防止策(ノウハウ)が構築されたため、その開発背景、根拠や裏付けの説明できるのです。

現場で使うマニュアルは必要に応じて加筆することで、決して分厚い物が良いという事ではありません。有効な活用方法は、全てを教えたり、質問に答えたりするのではなく、自分でマニュアルを確認させるなど、必要な時に必要な情報の活用によって体得が可能になります。

原理原則論など普遍的ものはありますが、進化する現場の事例は日々生じることから永遠にマニュアルは完成しません。もしも、マニュアルの加筆や進化が止まってしまった場合は現状に満足してしまった証で、そこから衰退が始まると考えることも必要です。現場事例から加筆し、日々進化することを指してマニュアルの構築と言います。

本連載記事目次次の記事
シェアお願いします
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
この記事の目次