ブックオフ・ハードオフ「従業員による巨額内部不正」[第五弾]ブックオフ不正29件、業績への影響額6億円超!調査で明らかになった被害と不正の全容

ブックオフ 従業員による巨額内部不正 架空買取や不正現金取得 横領 不正29件 不正の手口16種 業績への影響額6億円超 2021年から不正があった
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【この記事の概要】
 不正調査と決算から明らかになったブックオフ不正の全容と被害
 ブックオフ不正による業績への影響額6億円超、横領など不正29件でその手口は16にも及び、2021年から不正があったと報告されました。ブックオフは今回の調査で、すべての膿を出し切ることができたのでしょうか。この記事では、明らかになった不正の被害、発覚の経緯やその手口について解説します。是非、自社の不正防止策にも役立てていただき、信頼経営と安定経営実現のためにも、本件に関する記事を把握しておくことをおすすめします。

この記事の目次

ブックオフ不正の件数や被害額など全容が明らかに

 2024 年10月15日、ブックオフホールディングス(以下、ブックオフGHD)は従業員による不正行為の発覚を受けて設置した特別調査委員会から提出された「特別調査委員会の調査報告書(公表版)公表に関するお知らせ」を公表しました。

同日、記者会見の席上で堀内康隆社長は「お客様、株主の皆さまをはじめ、ブックオフグループに関わる様々なステークホルダーの皆さまに多大なるご心配とご迷惑をおかけしたことを深くおわび申し上げる」と憔悴しきった表情で陳謝しました。

ブックオフ不正の調査結果は、国内26店舗、子会社1部署で従業員による横領など不正が29件、不正の種類は16にも及び、影響額は8100万円と公表されました。

そして、堀内社長は「不正の原因は、従業員によるコンプライアンス意識の欠如などが原因とし、その背景には、マニュアルに定めたものが守られていなかったことや棚卸し時のチェックの見落としがあったなどと管理体制に問題があった」と述べています。

また、10月21日にブックオフGHDの公式ホームページで公開された2024年5月期 決算説明会はオンライン配信され、

1. 不正の概要と不正が業績に及ぼす影響
2. 2024年5月期の決算概要と取り組みの進捗
3. 2028年5月期に向けた中期計画方針の取り組みの状況についての説明
4. 質疑応答

の順で進行され、調査報告書とともにブックオフ不正の全容が明らかになりました。その中でも冒頭、「1. 不正の概要と不正が業績に及ぼす影響」で説明された不正に関わる損失はとても衝撃的でした。

ブックオフ不正の概要と影響

前代未聞の被害と業績への影響額6億円超を公表

 今回の調査報告書や決算説明会では、国内26店舗、子会社1部署で29件の不正行為が認められました。被害額と影響額は6億円超、不正の手口は架空買取や棚卸偽装など16種もあり、2021年から不正があったと報告されました。

堀内社長はこの報告を受けて、不正を働いた複数の社員を懲戒解雇し、今後、刑事告訴や民事裁判の提訴を検討するとしています。

ここまで多く発生した内部不正と大きな被害は店舗経営、ピープル・ビジネス史上、前代未聞と言えます。

(ブックオフ不正件数、影響と損失金額)
・横領など不正が 29件、影響額 8100万円、被害額 5600万円
その内、
・従業員による現金の横領、商品の内引きを伴う不正 8件、影響額 6400万円、被害額 5600万円
・現金の横領や商品の内引きを伴わない在庫の計上や不適切処理 21件、影響額 1700万円
・組織的な不正は認められなかった
・不正の背景は個人的な利得、個人の評価に伴う店舗数値の達成を期に不正が実行された

と調査報告書がまとめられていると説明しました。

続いて、前期2024年5月期の決算に織り込み済みとした業績への影響は、

(ブックオフ不正、業績への影響)
・不正関連損失 6800万円
・調査委員会費損失 5億5000万円
・計 6億1800万円

と大きな損失を計上しました。

最終的に2024年5月期の決算は、売上高と経常利益が前期より増加したものの、今回の不正に関わる特別調査費用等引当金繰越額5億5000万円等の特別損失計上と前期特殊要素の剥落により、純利益は前期よりも▲10億円となりました。

(ブックオフGHD、2024年5月期決算)
売上高 1116億5700万円(前期差+98億1400万円・前期比 109.6%)
営業利益 30億5100万円(前期差+ 4億7300万円・前期比 118.4%)
経常利益 34億4800万円(前期差+ 4億 800万円・前期比 113.4%)
純利益  17億 500万円(前期差▲10億6400万円・前期比 61.6%)

この純利益▲10億円は、今回の不正だけが原因ではありませんが、とても大きな損失額です。また、今回の不正について記者会見で堀内社長は「管理体制に問題があった」と述べていますが、調査報告書やこのような結果も踏まえると、店舗経営のあり方、本部体制や組織のあり方なども原因の一つではないでしょうか。

ブックオフ不正発覚の経緯

 2024年6月4日から6月10日にかけて、ブックオフ事業部は期末の実地棚卸結果を点検しました。この点検に対し、社内調査委員会が主導して再点検を実施した結果、C店での帳在不足と架空買取の事実が発覚しました。また、6月11日までの調査によると、

  • A店の事案とC店の一部事案は、店舗従業員による架空買取を含む横領のため、帳在差異が生じた。
  • しかし、C店の残りの事案とB店の事案は、必ずしも従業員の個人的な動機によるものとは認められず、組織的な不正の可能性が残る。

とあり、ブックオフ事業部の再点検により、2024年6月13日にはE店、同17日にD店、同19日にG店、H店、F店で不正行為の疑義が認められる事案が次々と明らかになりました。

これらの状況を受けて、ブックオフGHDは、同月18日の取締役会で外部専門家により構成される調査委員会における調査を実施する方向性につき協議を開始しました。 

そして、2024年6月25日、ブックオフGHDは取締役会で外部専門家によるブックオフ特別調査委員会の設置を決議し、不正行為についての調査開始に至っています。

調査で明らかになったブックオフ不正の手口

オペレーションごとの不正行為を洗い出し

 調査結果によると、

BOGHグループの中核事業である国内ブックオフ事業の業務フロー(詳しくは後記第2のとおり。)は、大別すると、商品買取、商品管理(棚卸)、販売の3段階に区分することができるところ、不正行為を多角的・横断的に調査するうえで、まずは俯瞰的に各業務フローの段階における不正リスク(内部統制上の問題を内包する不正行為)の洗い出しを行うこととした。

調査報告書【公表版】 2024年10月15日 ブックオフグループホールディングス株式会社 特別調査委員会

としています。

つまり、オペレーションの段階において想定される不正リスクを明確化して、実態と照らし合わせて、不正行為をあぶり出しています。

ブックオフ不正の区分

 ブックオフ不正の手口はオペレーションごとの4段階(区分)に分類されています。

1.商品買取時の不正
2.商品管理・棚卸時の不正
3.販売時の不正
4.その他の不正

この区分で調査の結果、16もの不正の手口が認められています。

ブックオフ不正 – 16もあった不正の手口

1.商品買取時の不正

(1)架空買取
 実際に買い取る商品が存在しないにもかかわらず、架空の買取登録を行い、代金相当額をレジ又は金庫から持ち出して領得する行為。

(2)水増し査定による差額横領
 顧客と合意した商品数及び金額で買取りを行いつつも、店舗内では顧客と合意した商品数・金額よりも大きい商品数・金額で登録を行い、顧客に渡した金額との差額の現金を横領する行為。

(3)セット買取による買取点数の過少申告
 架空在庫を圧縮する目的で、実際に買い取りした商品数よりも減らした商品数で買取りしたこととする行為。

2.商品管理・棚卸時の不正

(1)商品持出し
 店舗従業員による店舗内在庫の窃取行為(内引き行為)。

(2)自店舗在庫を他店舗に買い取らせる行為
 自店舗の在庫について、顧客の持ち込み商品であると偽って他店舗にて買取りをさせ、その買取代金を領得する行為。

(3)棚卸偽装
 実地棚卸により帳在差異が発生した際、現物がないにもかかわらず在庫があるように偽装する行為(棚不足の場合)、又は、実際の実地棚卸の結果よりも少ない数の在庫数を棚卸結果として入力する行為(棚過剰の場合)。

(4)杜撰な棚卸等
 定められたルール等に則っていない棚卸に関する行為、又は、ルール等が定められていないか明確でないことによって棚卸作業に不備を生じさせた行為。

(5)滞留在庫隠蔽
 
粗利額低下を防ぐため、個品の滞留在庫について、データを書き換え、滞留在庫が販売されたように偽装する行為。

(6)架空・虚偽転換
 本来の転換の目的に反して、内引き・架空買取を隠蔽する等、本来と異なる目的のもと、単品を部門品に転換する・部門品のコードを他の部門品コードに転換する等の行為。

(7)架空ラベル貼替
 店頭にある商品に、存在しない在庫の値札ラベルや他の商品の値札ラベルを貼ることにより、当該在庫が存在するように偽装したり、実際には売れていない商品が売れたかのように偽装したりする等の行為。

(8)架空R処理
 実際の商品廃棄を伴わないままに、前倒してR処理を行い、又は、実際の商品廃棄時にR処理を行わずに後ろ倒してR処理することで、R処理に伴う損失の計上時期を操作する行為、及び、本来のR処理の目的に反して在庫データを消去するためにR処理をする行為。

(9)R登録の不実施
 商品を廃棄してもR登録を行わず、理論値を減少させないようにし、又は損失計上を回避する行為。

(10)架空Kコード処理
 実際のトレカの在庫データの移動(本POSシステム1から他社POSシステム)とは相違する内容で本POSシステム1上のKコード処理を行い、架空の在庫を計上させ、又は実態に相違して在庫を消去する行為。

■「R処理」「R登録」とは:不要な商品の廃棄、リサイクル又は国外リユース等を行う際の処理・手続のことで、R処理を行う旨のシステム上の登録のことをR登録と呼んでいる。

3.販売時の不正

(1)現金着服
 顧客に販売した販売代金やレジの現金を着服(領得)する行為。

4.その他の不正

(1)架空買取・架空販売
 商品の架空買取と当該商品を販売したものと偽装する架空販売を一連のものとして実施する行為。

(2)予備釣銭等の横領行為
 社員の個人名義の口座に振り込まれた予備釣銭等の金員を横領する行為。

11月上旬を目途に発表する見込みの再発防止策や役職者の処分

 11月上旬を目途に発表する見込みの再発防止策には、信頼回復に向けた取り組みとして、組織改革や業務プロセスの見直しが含まれます。特に、在庫管理や現金管理を強化することが求められます。

具体的には、店に不正の隙を与えない正しい店舗経営実現のための店舗オペレーションとチェック体制、店舗監査、職務規程や人事評価制度などの見直し。棚卸の信憑性向上。さらに、入出金機、入退室管理や防犯カメラなどのハードや伴うシステムへの投資など、やるべきことが山積しています。

また、役職者の処分は、経営陣や役職者らに適切な処分が行われることが求められます。このような対応が顧客の信頼回復に繋がり、企業の信頼性向上にもつながります。

最終的には、再発防止策の実行と役職者の処分を通じて、顧客に安心して利用してもらえるようにブックオフは問題解決に向けた努力を続け、結果で示すことが求められます。

今回の報告に見るブックオフ不正のまとめ

 今回、公表された調査結果で明らかになった不正の手口は多岐にわたりますが、分類をはたった4つで、その手口は至ってシンプルと言えます。

ブックオフのエリアマネージャー、統括エリアマネージャー、内部監査や本社本部の関係部署が本当にマニュアルや規則に則り、店舗の管理監督や組織の牽制をしていれば、異常に気づくことは十二分に可能なことであったのではないでしょうか。

果たして、ここまで長期にわたって、数々の店舗で、多くの人たちによる様々な不正に誰も気づかない、また、誰にも気づかれないことがあるでしょうか。また、今回の調査で膿を出し切ることができたのでしょうか。

調査報告書からブックオフGHDの管理体制の問題が浮き彫りになり、さらに、ブランドイメージ低下や客離れやなどによる経営への大きな影響が懸念されます。

また、”組織的不正は認められなかった”とありますが、このような事態を招いた原因は、本社本部の各部署の牽制などの機能不全に加え、経営陣や管理職などの役職者らがどれほどの職責を果たしていたかが問われるのではないでしょうか。

そして、年商1000億円超で東証プライム上場企業であるブックオフGHDがこれほどの事態に堀内社長が一人で記者会見や決算説明会に対応していることにも違和感がありました。

このブックオフ不正は、主要メディアがニュースで報じる関心事であり株価にも影響するため、再発防止策に加え、堀内社長や他の取締役や役職者の管理責任にも、厳しい目が向けられています。

ブックオフ 調布駅南口店 目立つ店頭 東京都調布市

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