【最新版】店長マニュアル 2-3.損益管理(実践編)数字を利益に変える、実践型「儲かる」店舗の損益管理術!

店長マニュアル マネジメント知識 経営管理 損益管理 利益を最大化する、実践型「儲かる」店舗の損益管理。売上最大化、原価・人件費の最適化、店長管理可能経費の削減、数字の裏の真の原因を探り、予実管理、PDCAサイクルで継続改善

【記事の概要】
 店長必見!数字に強い店舗経営で利益を最大化する「攻めの損益管理術」
 損益計算書(P/L)は単なる成績表ではなく、店舗の成長を導く羅針盤です。売上最大化、原価・人件費の最適化、店長管理可能経費の削減を優先し、数字の裏にある真の原因を五感で探りましょう。徹底した予実管理、PDCAサイクルによる継続改善、他部門との連携を通じて、店舗の収益性を劇的に向上させる実践的な戦略を解説します。

この記事の目次

はじめに:損益計算は「読む」から「活かす」フェーズへ

 前回の『店長マニュアル 10のマネジメント知識 3. 損益管理 知識編』では、店舗マネジメントにおける損益計算の重要性と基本構造を解説しました。損益計算書(P/L:Profit and Loss Statement)は、一定期間の企業の収益と費用を明らかにし、最終的な利益または損失を示す財務諸表です。

これは単なる過去の成績表ではなく、店舗の健康状態を示す診断書であり、未来の成長を導く羅針盤です。 私たちはP/Lの数字をただ「読む」だけでなく、その意味を読み解き、具体的な行動へ繋げる「活かす」段階へ進む必要があります。

本記事では、店舗の損益を改善し、収益性を高める実践的なアプローチを店長の視点から解説します。

損益管理の基本と優先順位

 店舗の損益を効率的に管理するためには、以下の優先順位で管理項目に取り組むことが重要です。

  • 売上コントロール: 利益の源泉である売上を最大化することが最優先です。
  • プライムコスト(原価・人件費)コントロール: 売上に直結する主要な変動費を最適化します。
  • 店長管理可能費コントロール: 店長の裁量で管理できるその他の経費(販売促進費、広告宣伝費、水道光熱費、消耗品費など)を最適化します。

この順序で損益を分析し、対策を講じることで、店舗の収益性を着実に向上させるでしょう。

損益計算書(P/L)は、売上、原価、経費、そして最終利益という店舗のあらゆる経済活動を集約した羅針盤です。これを正しく読み解き、日々の意思決定に活かすことが、店長の最も重要な役割の一つとなります。

数字の裏側を探る「なぜ?」とP/Lの活用

 P/Lの数字はあくまで「結果」に過ぎません。本当に大切なのは、なぜその結果になったのか、その要因を深く掘り下げて考えることです。数字に異常や違和感を見つけたら、その背景を徹底的に突き詰めることで、問題の本質が見えてきます。

  • 売上減少の原因: 客数減少なのか、それとも客単価の低下なのか。新規顧客の獲得状況やリピーターの来店頻度、販売促進の効果はどうか。天候、競合店の動向、地域イベントなど、外部要因の影響はなかったか。
  • 原価率増加の原因:仕入れ価格の高騰、食材のロス・廃棄、標準レシピの不徹底(過剰なポーション量)、乱雑なオペレーション、注文ミスなどが原因ではないか。
  • 経費増加の原因:人員の過剰投入、水道光熱費の無駄遣い、広告宣伝費の効果が薄かった、といった原因が考えられないか。
  • 問題の本質究明のコツ:一見、複雑難解に見える問題でも、店舗経営における「ピープル・ビジネスの三大要素」を活用すれば、P/Lの異常値からの現場検証で根本を見抜き、シンプルに捉え、整理し改善することができます。根本は「森を見て、木を見て、その根を見る」ことで見えてくる。『ピープル・ビジネス理論 0章 イントロダクション Ⅲ 物事をシンプルに捉える』を参考に、問題の本質究明に取り組んでください。

現場検証の事例:電気代が高い場合

 P/Lで電気代の増加に気づいたら、すぐに現場で具体的な状況を確認します。

例えば、

  • 照明やエアコンの不要な点灯や稼働、消し忘れはないか?
  • 照明はLED化されているか?
  • エアコンの冷暖房の温度設定は適切(夏は28℃、冬は20℃)で、客数の温度計を確認して温度を調整しているか?
  • エアコンのフィルターは定期的に清掃されているか?
  • 冷凍冷蔵機器の性能低下はないか?
  • 窓用断熱シートを貼る、バックヤードなどはセンサーライトにするなど、節電対策をしているか?

などの視点で店内をくまなく回り、「五感」で確認することが、数字の裏にある真の原因を見つける上で非常に重要です。

予算と実績の管理徹底

 目標(予算)と実績との差異を早期に把握し、迅速に対応することが損益改善の鍵となります。

1. P/L分析と迅速な改善

 月末に当月近似値のP/Lを作成したら、予算との差異分析と現場検証に基づき、その原因を特定します。そして、来月以降の具体的な対策を検討し、翌月の月初から修正計画を実践することで、月次目標の達成に繋げます。

2. 週次・日次での売上管理

 日々の売上目標を明確に設定し、実績と比較します。目標は月次から週次、日次、さらには1時間あたりまで細分化することで、常に店舗の状況を詳細に把握できるようにします。目標が未達の場合は、すぐに原因を探り、翌日以降の対策を講じる柔軟な対応が求められます。

3. 週単位でのコスト管理

 売上だけでなく、原価、人件費、販促費、水道光熱費などの主要な変動費も週単位で管理し、問題点を早期に発見し、速やかに是正することで、損益悪化を未然に防ぎます。

売上最大化の実践戦略

 売上高は、店舗経営において利益を生み出す最も重要な要素であり、損益計算書の中でも特にコントロールしやすい勘定科目です。 まさに、店舗経営の基本中の基本と言えます。

ここでは、店舗が持続的に成長していくための売上最大化戦略について解説します。

要素分解/計算式
売上客数 × 客単価
客数新規顧客数 + 固定客数
客単価一品単価 × 購入点数

売上を最大化する鍵は、客単価・来店頻度・新規顧客のバランスを向上させることにあります。

客単価の向上、来店頻度の増加、そして新規顧客の獲得という3つの要素に偏ることなく、これらを総合的に強化する戦略を立てることが重要です。特に、固定客への施策には限界があるため、新たな顧客獲得に向けた施策を積極的に実施することが効果的です。

1. 新規顧客獲得

 Web広告や地域フリーペーパーなどの広告宣伝、チラシやクーポン券の配布、SNSの積極的な活用、MEO対策(マップ検索エンジン最適化)で店舗の露出を高めます。 魅力的な外観・内装でお客様の目を引き、口コミの促進、チラシやクーポン配布なども効果的です。

2. 客単価向上

 セットメニューの推奨や、お客様にとって価値のある上位商品や関連商品(例:メイン料理にデザートやドリンクの追加)を提案するアップセル・クロスセルを徹底します。 高単価商品の開発や、スタッフの接客スキル向上も客単価アップに貢献します。

3. 来店頻度向上

 会員制度の導入、季節限定メニューやイベントの開催、SNSやDMを通じた継続的なコミュニケーションで、お客様の来店意欲を高めます。既存顧客のLTV(顧客生涯価値)を高めることで、安定した売上基盤を築きましょう。

  • 来店頻度アップの方法:「数か月に1回のライトユーザーを月に1回のミディアムユーザーに」「ミディアムユーザーを週に1回以上のヘビーユーザーに」「ヘビーユーザーを1日に数回利用するスーパーヘビーユーザーに」といった具体的な目標を設定し、アプローチします。

売上計画を精度を上げる

 精度の高い売上計画は、食材の仕入れ量や人員配置の最適化に直結し、無駄を削減する上で非常に重要です。

1. 過去データの活用

 曜日別、時間帯別、季節別、イベント別の売上データを詳細に分析し、売上傾向のパターンを把握します。POSデータや顧客データを活用することで、より精度の高い予測が可能になります。

2. 外部要因の考慮

 天候の変化、競合店の動向、地域のイベント、周辺施設の状況など、売上に影響を与える可能性のある外部要因を常にチェックし、売上計画に反映させます。

3. 変動費の活用

 精度の高い売上計画に基づいて、食材の仕入れ量やパート・アルバイトのシフトを事前に調整することで、売上に対応した最適な変動費に抑え、無駄を排除します。

販促費の費用対効果検証

 店舗におけるマーケティング活動や販促活動は売上向上に不可欠ですが、その効果を厳しく検証しなければ、無駄な経費となる可能性があります。

1. 施策ごとの効果測定

 実施した販促キャンペーンや広告が、具体的にどの程度の売上増加に寄与したかを測定します。例えば、クーポン回収率や利用率、SNSからの来店数、特定の広告を見た顧客の購買行動などを詳細に追跡し、効果を数値化しましょう。

2. 費用対効果の算出

 販促費を投じる際は、事前に明確な目標を設定し、施策実施後に投下した費用に対してどれだけの効果があったのかを明確にします。ROI(投資対効果)の考え方を取り入れ、効率の良い販促活動に重点を置くことで、より少ない費用で最大の効果を狙います。

3. 店長の獲得売上

 クーポン券1枚あたりの獲得売上(Add on sales=AOS)のように、特定の販促施策によって発生した売上を指します。これを把握することで、個々の販促施策の効果をより具体的に評価し、次回の販促計画に活かすことができます。

プライムコスト(原価・人件費)管理

 粗利の改善は店舗の利益体質を強化する上で非常に重要であり、売上に直結するプライムコストである原価と人件費の厳格な管理が求められます。

売上原価の最適化

 原価を効果的に抑えるためには、仕入れと在庫の効率化、そしてロス率の削減が不可欠です。

1. 仕入れの最適化と在庫管理

 複数の仕入れ先を比較検討し、価格だけでなく品質や納期も考慮した最適な仕入れ先を選定・交渉します。

適正在庫を維持するために、先入先出の徹底、棚卸し精度の向上、適切な保管方法(積段数、すのこの使用、壁との距離確保)、受領検品の徹底、盗難防止対策、発注頻度の見直しなどを行います。

2. ロス率の削減と歩留まり向上

  • 廃棄ロス削減:発注ミスを防止し、鮮度管理を徹底します。期限切れ対策として在庫を常にチェックし、売れ残り商品は割引販売や加工転用を検討します。
  • 調理ロス削減: 標準レシピの不徹底(過剰なポーション量)、注文ミスをなくし、調理スタッフへの研修を徹底します。盛り付け量の均一化や、食材を無駄なく活用する工夫も重要です。
  • 歩留まり改善: オーバーポーション(過剰な盛り付け)を防止し、適正な歩留まり率を維持することで、食材の無駄をなくします。

3. 粗利率改善のための商品構成見直し

 商品別の粗利率を詳細に分析し、高粗利商品の販売強化を図ります。マージンミックス(商品の組み合わせによる利益最大化)を徹底し、利益率の高い商品と低い商品をバランスよく提供することで全体の粗利率を高めます。「死に筋商品」(売れ行きが悪い商品)は定期的に見直し、メニューから外すか改善策を検討します。

人件費の最適化

 人件費は店舗経費の大部分を占める重要な項目です。単に削減するだけでなく、従業員の生産性を高める視点を持つことが重要です。

  • パート・アルバイト人件費の構造:「平均時給 × 労働時間」で、それぞれをコントロールすることが必要です。

1. 平均時給のコントロール

 個々の従業員の職務要件と時給が明記された「キャリアパスプラン」を用い、生産性、業績貢献、リーダーとしての存在を評価して時給と職務要件を連動させます。

高い生産性を持つスタッフは短時間で大きな貢献が可能です。これは、効率的に業務をこなせるスタッフが、より少ない時間で大きな成果を生み出す能力を持っていることを示しており、その「短時間での高い貢献度」に見合う形で、高い時給が設定されるのが一般的です。

2. 労働時間のコントロール

「ワークスケジュール」(シフト管理システムなど)で最適化を図ります。時間帯別の売上や売上を上げるための業務に適正な人員数と人員配置(ピーク・アイドルタイムの見極め、多能工化)、業務効率化(自動化、マニュアル見直し)を進めることで、無駄な労働時間を削減します。

3. スタッフ育成とモチベーション管理

 スタッフのスキルアップはサービス向上と人件費効率化に直結します。定着率向上も、採用・教育コスト削減に貢献します。

店長管理可能経費の最適化

 経費は単に「削る」だけでなく、「最適化」することで店舗の生産性を高めます。店長の裁量で管理できる経費を適切にコントロールすることが重要です。

固定費の見直し

 売上に関わらず発生する経費です(家賃、固定人件費、リース料など)。これらの削減は原則スーパーバイザー(SV)が担当し、定期的な見直し(家賃交渉、リース契約見直し、保守やレンタル品などの不要な固定費の洗い出し)を行います。

水道光熱費・消耗品の見直し

日々の小さな積み重ねが大きな経費削減に繋がります。

1. 省エネ対策チェックリスト

厨房機器のオン/オフ管理:「ファイヤーアップスケジュール」で不要な稼働を削減していますか?

照明の最適化:点灯・消灯時間の最適化、LED化を促進していますか?

空調の効率化:定期的なフィルター清掃、ガラス断熱フィルム導入、適切な温度設定、細やかなオン/オフ調整の徹底、窓用断熱シートを貼るなどを促進していますか?

冷蔵冷凍庫の管理:扉開閉回数削減、コンデンサー清掃、ビニールカーテン設置、庫内整理整頓を徹底していますか?

トイレや手洗いの水量調整:無駄な水流をなくすため、水量の調整を徹底していますか?水の出しっぱなしを防ぎ、節水を促す水道を止めやすい蛇口(シングルレバー混合水栓など)を導入していますか?

電気の消灯管理:チェックリストの導入と担当者による管理、そして、店長が最終チェックを行っていますか?バックヤードなどはセンサーライトにしていますか?

2. 消耗品の使用量管理

 無駄遣い防止の意識付けと管理徹底を行います。売上や客数から適正使用量を算出し、週単位の棚卸しでコントロールします。盗難防止のための物理的管理も徹底し、大量購入によるコストダウンも検討します。

3. 不要不急の経費洗い出し

 使われなくなった、または効果が見合わない経費がないか定期的に洗い出します。不要な定期購読、使っていないサービス、効果の薄い契約など、見直しの余地は常にあります。

4. 設備保守・営繕費の管理

 予期せぬ出費となる設備保守・営繕費も、適切な管理と対応で最適化が可能です。

  • 設備故障時の対応:修理業者に原因や方法を詳しく聞き、知識を蓄積します。簡単な修理は店舗スタッフ自身で行えるよう、必要な工具やパーツを用意し、自店舗での対応力を高めます。
  • 日頃のメンテナンス:設備の利用頻度ごとに、年間、半年、三ヶ月、月間、週間から日間の頻度で機器の清掃やメンテナンスを計画的に実施することで、故障を未然に防ぎ、長期的なコスト削減に繋げます。

PDCAサイクルによる継続的改善

 損益改善は一度行えば終わりではありません。計画(Plan)→実行(Do)→評価(Check)→改善(Act)のPDCAサイクルを繰り返し回すことで、継続的な改善が実現します。

1. Plan(計画)

「客単価10%アップ」「原価率2%削減」など具体的な数値目標を設定します。目標達成のための具体的な行動計画を立てることで、計画をより明確にします(例:アップセル研修実施、ポップ増設、販促キャンペーンの企画など)。

2. Do(実行)

 立てた計画をスタッフ全員で共有し、確実に実行します。実行した施策の状況や変化(売上、客数、廃棄量など)を日々正確に記録することで、後の評価に繋げます。

3. Check(評価)

 週次や月次で進捗を確認し、目標との差異を分析します。目標未達の場合、その原因(計画の甘さ、行動不足、外部要因など)を深く分析し、必要に応じ計画を修正し、目標達成に向けて軌道修正を図ります。

4. Act(改善)

 分析結果に基づき、次なる改善策を立案・実行します(計画修正、新施策導入、再教育など)。成功した施策は標準化・横展開を図り、再発防止策を考えることで、次回の改善活動に活かします。

他部門との連携と情報共有

店舗の損益改善は店長一人の力では成し遂げられません。本部や他店舗、店舗内のスタッフとの密な連携と情報共有が不可欠です。

1. 本部との連携

 担当スーパーバイザーに定期的に報告し、適切なフォローやアドバイスを得ます。販促、設備、仕入れ・マーケティング部門など、関連する本部部門との連携を密にすることで、より効果的な施策を展開できます。

2. 他店舗との情報交換

 成功事例や失敗事例を積極的に共有し、自店舗改善のヒントを得ます。他店舗の良い取り組みを参考にしたり、共通の課題について意見交換することで、店舗全体のレベルアップに繋がります。

3. 店舗スタッフとの共有

 P/Lの状況、店舗の目標、具体的な施策などを店舗スタッフ全員と共有します。これにより、スタッフ一人ひとりが当事者意識とコスト意識を高め、店舗全体のパフォーマンス向上に繋げることができます。

まとめ:継続的な改善が店舗を強くする

 損益管理の実践は、数字の理解から始まり、売上最大化、原価・経費の最適化、そしてPDCAサイクルによる継続的な改善へと繋がります。

店長として、これらの知識とスキルを日々の業務に落とし込み、常に店舗の損益状況を意識したマネジメントを行うことで、店舗はより強く、より収益性の高いものへと成長するでしょう。

店長の損益管理は、P/Lなどの数字を把握し分析することから始まり、現場での具体的な検証と、その結果に基づく改善(行動と結果)へと繋がります。そして、この「行動」と「結果」は、店長の勤務評価に直接連動します。

損益管理で把握したエネルギーコストの最適化は、まさに施設管理の重要性を象徴しています。店舗の基盤となる施設を適切に管理することが、安定した運営と顧客満足度向上、さらにはコスト削減にどう繋がるのか、次回の店長マニュアルでは「施設管理」について詳しく解説していきます!

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