出店攻勢に人の確保が追いつかず、人手不足に拍車をかけ、顕著になった人的問題
店舗経営を襲った採用難、定着難から「退職」が問題視され、定着促進のために人事評価も見直される機会に
日本では1980年代後半から1990年初期にかけて、バブル経済で好景気に沸いていた時代に各チェーンがシェア拡大をすべく、こぞって出店攻勢をかけたため出店が加速され、人の確保と育成のスピードが追いつかなくなった頃の話です。
そもそも、店舗経営、ピープル・ビジネスのビジネスモデルは、パート・アルバイトらが中心となり店舗運営を行い、正社員はマネジメント中心とした店舗経営とそれぞれの職務と職責を明確に区分しています。
ピープル・ビジネスが日本上陸する前は、家族経営や正社員を中心とした経営であったため、パート・アルバイトの募集、採用、教育、評価や人間関係に加え、間接的に店を動かすという日本にはあまり馴染みのないビジネスモデルでした。
また、バブル経済の好景気ゆえに、求人広告は高時給、高待遇など労働条件も良い売り手市場で求人広告は溢れていました。二大求人誌『フロムエー』『アルバイトニュース』の厚さは1㎝以上もあり、それを求職者が100~200円で購入していたのです。
明らかになった人的問題とその原因
そのため求人広告を出しても、なかなか人の確保ができない。さらに、人が辞めていくといった人手不足の問題が一気に表面化したのです。
そして、この人手不足問題の原因究明によって、問題は次のように大別されました。
店舗経営における二つの人的問題の原因
・人が集まらない原因:募集時給、店のイメージ、通いやすさや競合の影響など
・人が辞めてしまう原因:従業員が抱いたイメージと実際の体験とのギャップや人間関係などから生じる不満が主で、その内容は入社前の募集準備、応募受付、面接や採用。そして、入社後の労働環境、教育、コミュニケーションや人事評価などのタイミングで異なる
さらに、退職のタイミングで細分化すると、
退職のタイミング
・入社前退職:採用辞退や音信不通など(厳密には退職ではありませんが、体系化の便宜上「退職」と表現、位置づけしています)
・早期離職:入社後、1~2週間で辞めてしまう
・慣れた頃退職:入社後、1ヶ月頃、慣れた頃に辞めてしまう
・育った頃退職:入社後、3ヶ月頃、一人前の戦力に育った頃に辞めてしまう
に分類されます。
そこで、これらの問題解決のため募集準備、採用、教育から人事評価や定着促進までを網羅した人財開発マニュアルの一つである「リクルートアクション・マニュアル」が体系化され、開発されました。
また、この人的問題のうち、“慣れた頃退職”あるいは、”育った頃退職”を解決するための手段として、個々の強みを引き出し育成して、会社にとって有益な人財を定着させる人事評価として構築されました。
「リクルートアクション・マニュアル」の詳細は下記をご参照ください。
人を評価をすればするほど、人が辞めてしまう
「トレーニングをして評価をすれば人が育つ」と教わったにもかかわらず…
正社員の定期的な人事評価と考課査定は夏、冬と決算賞与と定期昇給時の一年間3~4回、パートアルバイトは三ヶ月に一度の頻度で実施されていました。
そして、人は評価すればするほど育つと教えられてきました。しかしながら、人の評価をしても、なぜか人間関係がギクシャクしたり、辞めてしまった経験をしたことはありませんか。
実は、ここでいう評価とは、人事評価のことだけでなく、普段の仕事ぶりの評価も含まれているのです。
でもなぜ、評価をすると、人が辞めしまうのでしょうか。
人事評価上の問題
実態と評価が伴っていない
顕著なのは、実態と評価が伴っていないことが挙げられます。
具体的には、評価基準が不明確、評価者の主観や経験による評価のバラつき、仕事ぶりが認められない・評価されない、自己評価よりも低い評価でその理由も曖昧でわからないなど。
一部のことを大きく評価してしまう
本来、日常的な店舗業務の結果やプロセスを積み重ねて評価することが必要です。
しかしながら、人事評価査定直前になって慌てて評価資料を取りまとめたり、直近の印象が大きく評価に反映されるなどから、実態と伴わない評価を招きます。
その結果、「きちんと評価してくれない」との不満が生じ、退職してしまうのです。
普段の仕事ぶりの評価上の問題
評価の誤った認識
普段の仕事ぶりの評価とは、仕事ぶりを認め、褒めること。必要であればフォローアップすることが必要です。
また、人の育成は「できない人をできるようにすること」。評価は「それを伝え改善を促すこと」と教えてられています。
そのため評価とは、
・「ここができていない」「これがダメ」といった「ダメ出し」や「否定」
・”できていないこと”を指摘し、できるようにするために改善を促す
との誤った認識で改善を促すも、一向に改善されません。
このような評価では、改善どころか、どんどん人が辞めてしまいます。
人を評価をするために必要なこと
その人が”よく出来ていること”と”改善が必要なこと”を分けて実態を把握することが必要です。具体的には、以下の通りです。
人を評価をするために必要なことは、
・その人の仕事ぶりをよく観察して、
・その人が”よく出来ていること(機会点)”と”改善が必要なこと(問題点)”を分けて実態を把握。
・相手を条件付きで褒めるテクニックを使ってフィードバックをする。
問題点ばかりを見て指摘する人
多くの場合、人は機会点よりも問題点ばかりに目が行き、問題点を指摘がちと言えます。
それは、自身が育ったバックボーンにもよりますが、
人間というのは、脳科学的に欠点に目が行きやすく、他人の
・欠点
・嫌なところ
・悪いところ
ばかりに目がいきやすく、目につくのです。
そのため、相手の良いところを見るためには、意識して見つけるセルフトレーニングが必要になります。
また、これら機会点と問題点は見る人の知識や経験と比例するため、「指摘レベル=自分自身のレベル」になるとの認識も重要です。
時給アップや賞与などの待遇改善で定着促進は可能か?
正しく人の評価ができないと、育てたかったはずの人は辞めてしまう
正しく人の評価ができないと、人間関係がギクシャクして仕事ぶりが低下したり、あなたに失望し諦めて、お店を辞めて競合店に行ってしまいます。
そして、新たな人を確保するも、同じような結果を招いて、あなたの店は慢性的な人手不足になってしまいます。
新しい人を採用し、寝る間を惜しんで育てても、一人前になった頃や慣れた頃に辞められてしまうのです。
この時の精神的、肉体的ダメージは経験した人にしか分かりませんが、一度は経験することと言えます。
このような場合、時給、賃金アップや賞与の支給。希望日に休日取得などの待遇によって定着促進を図ったり、と。本来ならば、人事評価での処遇で定着しなければならないのに、、、
人事評価の項目や内容の見直しや待遇改善前にやるべきこと
正しく人の評価ができないと、仕事ぶりは改善されませんし、人間関係もギクシャクして、職場の雰囲気は悪くなりお店全体の士気にも影響して、育てたかったはずの人も辞めてしまいます。
ここでいう評価とは、一人の人と認め、接することです。いきなり待遇や処遇の改善をすることではありません。
日々の店舗経営で正しく人を評価することを意識して実践してみてください。人間関係が良くなり、職場の雰囲気や仕事ぶりはポジティブになります。
これができて、はじめて正しい人事評価につながることの認識が重要で、人事評価の項目や内容を見直す前にやるべきことがあるのです。