ピープル・ビジネス理論 2章 ビジネスモデル論 1.「商品」ではなく「売り方」での差別化

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店舗設計以上に重要な「ビジネスモデル設計」どんなに素晴らしい商品であっても、認知され、売り方がなければ売れない

「ビジネスモデル」のコンセプト

「商品ではなく、売り方での差別化」で付加価値を獲得

 ピープル・ビジネス理論は半世紀以上にわたる「成功と失敗の事例」から至った結論は、「物真似はできても、者真似はできない。つまり、商品のコピーは作れても、人のコピーは作れない」「商品ではなく、売り方での差別化」で付加価値を獲得することコンセプトにビジネスモデルが開発構築された。

店舗経営でよくあるのは、他でやっていない商品で差別化を図ろうとしたり、売上が上がらないと商品やメニューをいじりがちなこと。しかし、それはとても危険なことで、新規出店や新商品の発売などをした場合、その存在を消費者に知ってもらい、買ってもらうまでの期間がどれほど必要なのかを把握できていない。チラシなどで告知しても情報の浸透には最低でも3ヶ月ほどかかる。

「商品」「売り方」「マーケティング」と「お客様との約束」

 つまり、新商品の投入と告知をしても、売れないから次の商品へとなってしまう。本当は、消費者まで情報が浸透できていないため売れないのだが、商品が問題との誤った認識から同じことを繰り返している。そこでまず「商品」「売り方」と「マーケティング」の設計が必要だ。これは新規顧客の獲得が目的になる。

ちなみに、マクドナルドもドミノピザもコメダ珈琲も、新商品の投入は既存商品が浸透するまでしていなかった。

そして、来店されたお客様に「商品や時間の約束を果たす」こと必要になる。商品の約束とは品質や出来立てのことで、時間の約束とは迅速な対応のこと。マクドナルドに代表されるファストフードだから時間を意味することではない。これは固定客化することが目的だ。

作り手、売り手と買い手の思いの不一致

 もっと顕著なことは、多くの店やチェーンは「味へのこだわりや自信」「厳選された素材」や「地域最安値」といった「商品」にこだわり、「価格」での差別化をする傾向が強い。もちろん、美味しくて、安いにことに越したことはないない。しかしながら、そこが盲点の一つでもある。

ファミリーレストランチェーン「ロイヤルホスト」創業者の江頭匡一氏は、「例え、本社本部がどんな良い商品を開発したとしても、それを調理し、提供するのは店である」とおっしゃっておられた。つまり、どんなに良い商品の開発をしたとしても、良い素材を仕入れ、仕込み、調理、提供のプロセスを経て最終的に「顧客が口にした時がすべて」だということ。

例えば、地方で個人経営のレストランのコーンポタージュスープは調理人がこだわり、厳選した新鮮なとうもろこしで仕込んだ逸品だ。ただ、それは、出来立ての話…のこと。出来上がったスープはピークタイムに備えホール担当者が湯煎機で保管しているため、時間の経過とともに劣化してドロドロになってしまい、それが提供されていた。

このように、作り手、売り手と買い手の思いが一致しないこのようなケースが山ほどあり、それらは残念ながら撤退していった。この事例はビジネスモデルでの一要因に過ぎないが、重要でとても恐ろしい事実でもある。

ビジネスモデルの定義

 本ビジネスモデルの正式名称は、「ビジネスフォーマット・トータル・マネジメントシステム」と呼び、経営理念実現に必要な店舗経営ノウハウを体系化し、売上の獲得、利益の確保、高顧客満足度と高質人財の育成を達成する為に、どんなビジネスにも対応できるよう各マネジメントを連動させたシステムのこと。

1980年当時、ビジネスモデルの構成は6項目だったが、現場での実践検証を経た現在、14項目まで細分化され進化した。この項目に着眼してビジネスモデルを見ると、根本要因も把握でき、改善が容易になる。

チェーン展開における背景と課題

 先述の通り「商品」と「価格」で競合との差別化を図ろうとする企業が多いが、「商品」は何れ物真似されて「価格」競争に陥ってしまう。

価格での差別化も重要な要素ではあるが、同じ商品を取り扱う小売業で例えると、専門店、百貨店、GMS、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、ディスカウントストアなどの業態(売り方)があり、価格訴求にこだわり過ぎるとスーパーマーケットなのか、ディスカウントストアなのかが分からなくなってしまい、低粗利から全体の利益を圧迫して経営が厳しくなってしまう。

そして、消費者の購買活動に合った生産と販売力も重要で特にランチやディナータイム、給与前と後や四季折々のタイミングで限られた時間に需要が集中するため、それが獲得できる生産と販売力、設備や人の確保が可能な設計も必要になる。

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