【この記事の概要】
店舗経営に必要なビジネスモデルは、「商品に頼るのではなく、ブランド、商品や店の存在を認知してもらうための仕組みも設計する」
商品が売れず赤字が続き店舗経営が軌道に乗らないと、必ずと言ってよいほど商品をいじったり、新商品の投入を考えることがありますが、その情報がターゲットに浸透するまではある程度の期間が必要になります。今日では毎月のように期間限定の新商品を発売するマクドナルドでさえも、日本上陸後、なんと8年3ヶ月後に新商品を発売しています。それまでの期間、ブランド、商品や店の存在をターゲットに認知してもらうために、時間を掛けてマーケティング活動を継続してきたのです。
創業時や草創期によくある店舗経営の落とし穴
売上が上がらない理由は商品だけとは限らない
創業時や草創期に、商品が売れず赤字が続き店舗経営が軌道に乗らないと、必ずと言ってよいほど商品をいじったり、新商品の投入を考えたりすることがあります。
もちろん、商品の味は重要ですが、その味や商品などの情報がターゲット(お客様や消費者)に浸透するまではある程度の期間が必要になります。
その期間とは、店で集客活動を継続的に行って、商圏内のターゲットにその情報が伝わるまでの期間のことで平均して約1~3ヶ月はかかります。
つまり、あなたの商品をいじったこと、新商品を発売したことすら伝わっていない可能性が高いのです。もっと言えば、あなたの店の存在すら、知られていないのかもしれません。
そして、多くのお客様は、あなたの店を外から見て入店し、店内で商品を購入し、食して味の評価をしています。どんなに美味しい商品であっても、万人受けする味であっても、お客様が口にされる時の品質(温度や味)で決まってしまいます。
さらに、あなたの店の評価は、お客様が入店から退店されるまで、あなたの店で経験したサービスの質や清潔さなどの経験によって決まり、記憶されます。
つまり、売上が上がらない理由は商品だけとは限らないのです。
にもかかわらず、ずっと店の中にいて、お客様の来店を待ちながら味や商品をいじったり、新商品の開発ばかりをしていて、外の様子が分からないといったこともあります。
そこで必要になることは、自らが店の外に出て、自店のレベルと競合店の状態を知り、店の存在を知ってもらうために重要な集客活動をすることなのです。
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店舗経営の基本である立地の改善や営業力をおろそかにして新商品を投入!?
一例を紹介しましょう。平均乗降人員が18千人ほどの駅と住宅地を背後に抱えるスーパーマーケットとの動線上に立地するテナントの2階にあるうどん店は創業して半年ほど経過するも売上が上がらず苦戦していました。
地粉を取り寄せ店で製麺し、店主こだわりの出汁で、自信の逸品なのに売れない…。と店主は頭を抱えていました。
そこで店主は打開策を思いついたのです。
それは、うどんを製麵するためにあるうどん粉を使って、お好み焼きも提供しようと!そこで早速、店内の小上がりのテーブル席にお好み焼き用の鉄板の設置とガスの工事を済ませました。
後日、その様子を見た筆者は店主にこう質問しました。
「今現在、自信の逸品であるうどんすら売れない店がお好み焼きを売って、お客様が来店され、本当に売れるのか?」
店主の答えは、
「この辺には、お好み焼き屋もないので、ある程度来店されて、そこそこ売れると思います」
と危機感を感じない希望的観測で、自店が売れない本質すら把握していない様子でした。
筆者は、店主を店の外に連れ出して、スーパーマーケットの出入口から店主の店が見えるか、何屋か一目でわかりやすいか、入りやすいか、などを一緒に確認し、現状とあるべき姿から課題を抽出しました。
なぜならば、売れない原因は商品ではなく、店の外にあるからです。それは、店舗経営の基本である立地の改善や営業力にあって、お客様を店まで連れて来る仕組みもなかったことが原因だったからです。
このように、今ある商品を売ることできない店が、新商品を発売すれば売れるという期待から新商品に走ることはよくあることです。しかしながら、期待したほど売れず、また、他の商品に走ってしまうのです。
そのため、先述の新商品の情報がターゲットに伝わるまでの期間が1~3ヶ月かかる中、情報が伝わりきる前に諦めてしまっているとこが多くあるのです。
つまり、あなたの店が味を変えた、新商品を発売したことすら伝わっていない。もっと言えば、あなたの店の存在すら、知られていない可能性があるのです。
そして、店舗経営の基本、立地の改善や営業力を強化する方法の一つに「攻めの5段階集客術」というノウハウをビジネスモデルに加え、ターゲットへの確実な情報伝達と来店促進の段階的な実施によって集客効率を向上させます。
(関連記事)集客の教科書「攻めの5段階集客術」 1.売れる店は外から見てわかる 「ちょっとした心配りがお客様の入店を促すんです」 店前の通行人を入店させることができない店が、商圏にチラシをばら撒いて来店を促しても入店に繋げることは難しいのです……
マクドナルドが日本上陸後、新商品を投入するまでかかった期間
今日では毎月のように期間限定の新商品を発売するマクドナルドでさえも、日本に上陸した1971年7月から、なんと8年3ヶ月後に新商品「エッグマフィン(発売当初の名称。現在の名称ははエッグマックマフィン)」を新発売しました。
日本に上陸してから新商品の発売までこれほどの期間を要したのは、マクドナルドブランドやレギュラーメニュー(定番商品)を浸透させるためにかかったためで、レギュラーメニューの販売促進を季節ごとに徹底することで、安定したオペレーションのもとで高いお客様満足度と共に認知度を上げていったのです。
ブランド、商品や店の存在をターゲットに認知してもらうために、時間を掛けた、マーケティング活動を継続して実施し、それぞれの認知度が上がってから新商品導入に踏み切りました。
このように自社ブランドや商品などの認知度が上がるまで新商品を投入しなかった事例は、マクドナルドに限らず大手チェーンに多く見られることです。
職人気質の商品へのこだわりと店舗経営の基本
「売り手の都合と買い手のニーズ」の違い
飲食店の創業者は自分で料理を作る料理人やパンやお菓子を作る職人出身者が多くいます。その中で、チェーン展開ができている人と、大きな違いがあります。
それは、職人気質の商品へのこだわりと店舗経営の基本である「売り手の都合と買い手のニーズ」という点にあります。
職人気質の店主は、原材料や手作りにとてもこだわる傾向にあります。とても素晴らしいことです。
例えば、新鮮なとうもろこしを仕入れて、手間をかけて逸品のコーンポタージュに仕上げます。
出来立てのコーンポタージュは、とうもろこしのやさしい甘さと旨味、そして、風味がありとても美味しいのです。
しかしながら、それをお客様に早く提供できるように湯せんして保管しているため、時間が経つと表面に膜がはり、煮詰まってドロドロになってしまうため、風味や美味しさどころかポタージュとはいえない別物になってしまうのです。
注文が入ると、アルバイトはそのポタージュを提供していましたが、店主はアルバイトにまかせっきりでその状態を確認しません。そして、クレームにもならなかったのでまったく気がつかないのです。
実は、これが店舗経営にとって恐ろしいことの一つでもあるのです。
お客様はどんな思いをされ、お会計をして、店を出られたのでしょうか。
なぜ、お客様はクレームを言ってくれなかったのでしょうか。お客様はこの店をどのように評価したのでしょうか。
先述の店舗経営における品質管理の基本は、お客様が口にされる時の品質(温度や味)で決まるので、その時にベストな状態にするようにオペレーションや設備などの設計が必要になるのです。
ここで紹介した内容は、必ず店舗経営ビジネスモデルに加え、体系化することが必要になります。詳細は別記事で解説します。