内部崩壊寸前から最強のスターバックスチームに。そして更なる飛躍へ
内部崩壊寸前の店を共に立て直したパートナーからこれ以上の幸せはない何よりも嬉しいプレゼント
赤坂店のストアマネジャー(店長)として4ヶ月が経過した秋のある日、ディストリクトマネジャー(DM)*の昇進辞令が出た。
紆余曲折あった赤坂店だったが、ベテランパートナーに対する時給アップ(本人たちからすれば元の時給に戻った!)の一件以来、店舗の雰囲気は目に見えて良くなっていた。
各パートナーの役割を明確にして仕事を任せるスタイルをあえてとっていたことから、私は何もしていないストアマネジャーに映っていたと思う。
実際にミステリーショッパー(CS覆面調査)*の結果が定期的にフィードバックされるのだが、そのコメント欄に「ランチのピークタイムに立ったまま何もしないで店内の様子を見ているだけの人がいました」との記載があった。「ギャハハ!これ目黒さんのことじゃん」内容を見たパートナーたちは揃って声を上げた。
私はその状況が嬉しくてたまらなかった。ランチピークにフリーな立場でいられることは、パートナーたちが自らの役割を理解し、職務を全うするために主体的に行動して、しっかりと連携して動けていることを意味していた。
そして、もっと嬉しかったのは入社希望の友人を紹介したいとの申し出があったことだった。
友人の紹介があるとととは、自らが働いていて友人にも紹介したいと思う職場であるからで、「もしあなたがスッタフなら自店舗で働きたいと思うか?」の店舗経営(ピープル・ビジネス)の大原則をスッタフが心底思い、友人にも自信をもって薦められる職場だと太鼓判を押してくれた証であり、その立場にいる者として、これ以上の幸せはない何よりも嬉しいプレゼントだからだ。
その友人は1年ほど前まで赤坂店で勤務していたが諸事情で退職を余儀なくされていたとのこと。面接を通じて想いを確認し、ベテランパートナーたちには「悪ガキチームでなく、スターバックスのチームの一員として迎え入れ、いいチームワークを発揮すること」を約束してもらい、仲間入りしてもらった。
その頃からパートナーたちからは親しみを込めて「パパ」と呼ばれるようになっていた。おそらく当時のストアマネジャーの中では最年長だったし、パートナーからすれば自分の父親と同じくらいの歳なわけだし。ちょっと照れくさかったが「目黒パパ!」と声がけされることが無性に嬉しかった。
このような中、こんなに素晴らしい赤坂店を離れることになるなんて…。
DM候補として入社しているわけだから、一日でも早くそのポジションについて仕事をする必要があることも認識していたが、ただただこの子たちと離れたくない。みんなの笑顔とパワーでもっともっと感動経験をお客様にお届けしたい。このような複雑な気持ちで最終日を迎えた。
◆ディストリクトマネジャー(DM)*とは:District Manager[英]地区にある複数の店舗をマネジメントする管理者の意。その頭文字をとってDMと呼ばれる。ピープル・ビジネスではスーバーバイザー(SV)が直営店5店舗の経営責任者として、その上司の統括スーバーバイザー(SV)が直営店30店舗の経営責任を負う。ちなみに、加盟店への経営指導者はフィールド・コンサルタント(FC)と呼び加盟店経営のマネジメント特性から直営店とは分けた職務になっている。
◆ミステリーショッパー(CS覆面調査)*とは:Mystery Shopping[英]覆面調査の意で、飲食、小売りやサービス業などの店舗における品質、サービスや清潔さなどをお客様の視点や立場で実態の把握のために行う調査のこと。CSとはカスタマーサティスファクション[Customer Satisfaction]の略で顧客満足の意。この場合、顧客満足のための覆面調査の意。覆面調査の実態把握のことを「真実の瞬間(MOT」と呼ばれ、スカンジナビア航空の業績を回復させたヤン・カールソンCEOが著書『真実の瞬間:SAS(スカンジナビア航空)のサービス戦略はなぜ成功したか』でMOT(MOMENTS OF TRUTH)を革新的なマーケティング手法として述べている。
直接的マネジメントから間接的マネジメントへの職責変更の難しさ
翌日からはDMとしての仕事がスタートした。