さて、前回までに、立地で重要な3概念、TG(ティージー)と動線、視界性評価についてお話ししてきましたが、じゅうぶん理解できましたでしょうか。
今回は、少し視点を変えて、「店舗開発」についてお話します。
一寸先は闇「天国と地獄」経営悪化や撤退の危機を招きかねない店舗開発の実態
店舗開発の大きな” 落とし穴“
店舗開発とは、文字通り、店舗を開発していくこと、すなわち、数多くの候補物件のなかから1つを見つけ出し、店舗としてオープンさせることです。
店舗開発と似た行為に、自分の住まいを見つけて借りる(買う)というのがあります。転勤が多い人ならこの行為はイメージしやすいでしょう。そうでないひとでも、「自分の部屋を借りる」というのは想像しやすいはずです。
さすがに、この「物件を借りる」行為は、インターネットだけで済ますという人はまずいない。必ず現地に出向いて、物件とその周辺を調べますね。そうです、実査をします。
環境はどうか、駅から近いか、騒音はないか、日当たりは良いか、買い物に便利か、間取りは気に入るか、など調べることでしょう。
同じようなことは、店舗開発でも行います。それが立地調査です。
しかし、自分の住まい探しと店舗開発では、1つだけ「大事な違い」がある。これがわからないために、店舗開発で大きな失敗をしてしまう人がいます。これが、店舗開発の大きな” 落とし穴“になります。
その「大事な違い」とは何でしょうか?
それは、「立地や物件の良否を決める人」と「物件を契約する者」が違うという点です。
「???」と思うかもしれませんね。
説明します。
経営悪化や撤退を招きかねない『店舗開発』の大きな勘違い
自分の住まい探しでは、自分さえその立地を気に入りさえすれば良いのですね。
他人がどう思うと自分が気に入ってしまえば良い。なにしろ、それが良くても悪くても、「自分が住む」のですから、自分の問題です。だから、「自分が気に入った立地:物件」イコール「自分が契約する物件」というわけです。
ところが、店舗開発はそうではありません。
自分が気に入っているだけではだめなのです。
横道に逸れますが…
チェーン企業の中で、長くこの店舗開発業務をやっていると、往々にして、この「自分が気に入っている」ことが最優先になってしまう。そういう人がけっこういるんです。
これはたいへんな勘違いですね。
「気に入ったから良い物件」、「気に入らないから良くない物件」
この調子で開発を続けていると確実に、その人の店舗開発では、不振店、失敗店が増えていくことになります。そして、それに気づいたときはもう手遅れ。こんな事態に至る。怖いですね~
店舗開発の核心「わしはあんたの意見を聞いているんやないで。事実だけ話さんかい」(マクドナルド巨大帝国を築いた故藤田田社長)
さて本題に話を戻しましょう。
自分で気に入っているだけではだめ。
では、誰が気に入れば良いか?
もしかして、上司の人? それとも社長や経営幹部?
これも間違い。まったくだめです。
確かに、決裁権限は、自分ではなくて、上司や経営幹部、社長にあります。
だから、サラリーマンとしての店舗開発マンにとって、上司や経営幹部、社長に「気に入ってもらう」ことは、稟議書を通すためには絶対条件かもしれません。
でも、そんなことしていたら、ほぼ確実にそのチェーン店は衰退します。
実際、そういう人がチェーン企業をダメにする。上司に気に入ってもらおうとして、通行量を水増ししたり、隠れた瑕疵(物件の問題点)を隠したりして、虚偽を混ぜる。
こういう態度になっている人を、故藤田田社長(日本マクドナルド株式会社の創業社長)は会議中に大きな声でいつも叱咤してました。「わしはあんたの意見を聞いているんやないで。事実だけ話さんかい」