2024年小売業の好調、不振要因
小売業界では、2024年は物価高の影響がいくぶん和らいだ半面、賃金水準が追いつかず消費需要が伸び悩む傾向
ドン・キホーテや家電量販店がダイナミックプライシングを導入し、エリア別に価格対応を強化している点は好調要因の一つです。ドラッグストアは業態の進化を続けて着実な成長をしています。
プライベートブランド(PB)商品で低価格帯を拡大するセブン-イレブンの戦略も注目されましたが、商品の改良、サイズや価格の変更が多く「高価格」「小さめ」と消費者から不満の声から「うれしい値!」商品を拡大し、量が多い商品を価格据え置きで展開をして競合との差別化を図っています。
このように需要の変動に合わせて素早く対応する会社が業績を維持しています。販路拡大や柔軟な価格設定などを早期の対応が求められています。
GMSは縮小、CVSは不振の中ドラッグストアが着実に成長
総合スーパー(GMS)の縮小やコンビニ(CVS)の失速が続く中、ドラッグストアは出店数と売上の両面で堅調に伸びています。
ドラッグストアは、医薬品だけでなく食料品、化粧品や日用品など多様な商品を揃えることで、地域のニーズを満たし、日々の生活を支援する業態として存在感を高めました。
とくに地方や郊外では大型店舗を設定し、ワンストップサービスを提供する方法で顧客の購入頻度を上昇させています。
例えば、ウエルシアホールディングスはウエルシア薬局のほか、ハックドラッグ、ダックスやハッピードラッグなどを展開。ツルハホールディングスではツルハドラッグ、B&Dドラッグストア、くすりの福太郎、ウォンツやウェルネスなどのブランドで各地に展開しています。
スーパーマーケットとの競合が激しいエリアでも、肉や野菜などの生鮮食品を揃え、高騰する原材料を抑えた価格戦略や便利な売場作りを工夫し成長する事例が目立ちます。
EC市場の拡大と競争激化:ネット通販が苦戦
ネット通販市場は拡大を続けていますが、競争激化によって一部の事業者は苦戦を強いられています。
コロナ禍以降、外出自粛でオンライン需要が急上昇した反面、運営コストや広告費の増大が利益を圧迫しました。
コンビニエンスストアとスーパーマーケットの業績格差が象徴するように、一方的な通販推進だけでは消費者の変化に対応しきれないケースもあります。ユニクロのようにリアル店舗との連動や価格設定の見直し、顧客データを活用したパーソナライズで差別化を図れば回復の糸口も。
パーソナライズされた購買体験の重要性
消費者が多くの選択肢を持つ今、個々の志向に合わせたパーソナライズされた購買体験が注目されています。
店舗やECサイトでの推奨商品表示や、利用履歴をもとにした割引サービスを導入することにより、他社との差別化につながる効果は大きいです。
例えば、「airCloset(エアクローゼット)」は、プロのスタイリストが選んだ服が毎月3着届くファッションレンタルのサブスクサービスや「MEDULLA(メデュラ)」は、5万通りの組み合わせから個々の髪に合ったヘアケアを提供するパーソナライズサービスがあります。
個人情報の取り扱いや配信のタイミングを最適化できれば、余計な負担を感じさせずにリピーターを増やせます。
サプライチェーンの再構築と課題
原材料費の高騰や物流の混乱など、サプライチェーンを取り巻く課題が店舗経営に大きな影響をもたらしています。
コロナ禍後の外部環境が不安定な中で安定供給を実現するには、調達先の分散や在庫管理の最適化が必要です。
メーカーや卸業者との連携を強化し、迅速な対応を可能にする仕組みを導入することで、マイナス要因を抑えられます。
多様な業種・企業が得意分野を持ち寄り、協力することで、結果として全体のコスト削減やリスク回避が期待できます。