【出店戦略】店舗立地と商圏 7.東京各駅制覇は天王山|地方の数十店より東京の1店が持つ「価値」 〜成功率を高める店舗開発〜

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【この記事で分かること】
 地方で数十店出店するより東京の3店が評価される。激戦区で勝ち抜く戦略とは?
 東京は日本の人口・富が集中する「商業の天王山」であり、地方で数十店舗を展開するよりも、東京での少数の成功が企業の将来性を大きく左右します。激戦区で生き残るには、物件オーナーとの誠実な交渉に加え、競合に勝つための戦略、物件のハード面を科学的に評価することが不可欠です。

この記事の目次

なぜ、「東京制覇」を目指すのか?

 前回の『6.正確な商圏設定』で解説した「行動ベクトル」は、人の流れを科学的に分析し、売上に貢献する地域を特定するための重要な指標です。

では、そのベクトルは、一体どこへ向かうべきなのでしょうか?全国展開を目指す大手チェーンも、地方で奮闘する小規模チェーンも、そして何よりも未来の繁盛店を目指すすべての店舗経営者が、必ず「東京制覇」を目指すのはなぜなのでしょうか。

昭和から平成にかけての立地判定、売上予測や出店戦略は、まさに「勘と経験」に頼る部分が少なくありませんでした。しかし、現場最前線で「科学的高精度システム化の実務」をしてきたからこそ、激変するマーケットで生き残るためには、データ分析に基づいた戦略が不可欠だと分かります。

今回の記事では、富と人々が今なお集中し続ける日本の首都、東京を舞台に、なぜ東京が「商売の天王山」なのかを解き明かします。そして、この大激戦区で「間違ってはいけない」立地選定と、生き残るために欠かせない物件交渉のポイントを徹底解説します。

東京は商業の天王山:なぜ、この地での出店が勝敗を分けるのか

 全国展開を志すチェーン企業はもちろん、地方で活躍している小規模チェーン店も、こぞって東京制覇を目指します。古くは、マクドナルドやすかいらーくなどのファストフードやファミレスがそうでした。今でも、多くの新興チェーンは東京での成功を目指しています。

その理由は明確です。最新のデータでは、日本の可住地面積のわずか1.2%ほどの土地に、日本の総人口の1割以上にあたる約1,400万人が住み(※2024年6月時点)、さらに小売業の年間販売額では実に12.0%が東京に集中しているからです(※2021年商業統計)。

この一極集中の現状は、まさに東京が商業における「天王山」であることを示しています。

東京の日本全国に占める割合を示す統計図表

項目単位全国東京都占有率年次
可住地面積km²122,9541,4231.2%2022年
総人口123,170,00014,268,18211.6%2025年
財政歳出額億円1150,00078,0106.8%2025年
小売業年間販売額億円1671,530200,54912.0%2024年

質の高いマーケットと「東京ブランド」の価値

 人口の内訳を見ると、20~24歳の年齢層では11.0%が、25~29歳では12.6%が東京に集中しています。どちらも流行やファッションに敏感で、活動的で消費意欲も旺盛な年齢層です。さらに、所得別世帯数では、年収1,500万円を超える世帯の実に20.7%が東京に居を構えています。そのため、東京のマーケットは、その規模と質のいずれにおいても最も重要です。

将来性を決めるのは店舗数ではなく、東京での成功

 他の地域で損益分岐点ギリギリの店舗を何十店舗も出店するより、この大きなマーケットである東京で、たった1店舗でも大繁盛店を作り出す方が、収益面だけでなく、認知度向上、ブランド価値向上といった面ではるかに大きな効果を期待できます。

地方で数十店舗を展開するチェーンよりも、東京でわずか数店舗を成功させている店のほうが、その将来性は高く評価されることでしょう。

「郊外への逃避」は生き残りの道ではない

東京の賃料高騰と郊外への逃避

 多くの企業や起業家が東京に集中することで、東京は飲食業に限らず、あらゆる商売にとって大激戦区となっています。

駅前に空き物件が出ると、たちまち多くの企業や起業家の争奪戦になり、それが賃料相場を押し上げ、最終的にはどんな商売の店にとってもほとんど採算割れとなる水準に達してしまう場合さえあります。ですから、「東京の駅前は物件が取れない。取れても賃料が高すぎて利益が出ない」と経営者が嘆くのも無理はありません。

そして、そう思った経営者はどうしようとするか。低い家賃を目指して「郊外」に活路を見出そうとします。しかし、東京の郊外もそう賃料相場は安くありません。

そのため、東京の周辺にある首都圏だけでなく、関西圏や中京圏にも店舗を拡大していく必要があります。そこで、東京とその周辺の首都圏や、あるいは関西圏、中京圏に店舗開発を広げて行かざるを得ません。いつしか、こうした企業はとても多くなりました。

地方マーケットの飽和と地盤沈下

 地方でも、立地のベストといわれる交差点角地が次々と開発されていきました。今はどうでしょう?もうそういった交差点角地でチェーン企業の店舗が出店しているところは、ほとんど見かけなくなっているのではないでしょうか。そういった意味で、地方のロードサイドは「飽和状態」になりつつあります。

では、どうしたら良いのでしょう。それは「もう一度、東京を見直すこと」です。なぜなら、東京一極集中は、これからも数十年は続くことが明らかだからです。

確かに、大阪や名古屋、福岡といった東京以外の大都市も少しずつポテンシャルを高めるでしょうが、大きな成長は望めません。それ以外の地方都市でも同様です。ましてや、地方は少子高齢化、人口減少がますます激しくなり、商業の地盤沈下は明らかです。

これから家賃などの出店費用が下がったとしても、それ以上に深刻なのは、顧客数の減少、つまり売上の減少です。物販を例にとると、巣ごもり需要が落ち着いた後も売上は拡大していますが、コロナ禍でECが急成長した時期に比べると、その成長率は鈍化しています。これは外食や旅行といった「コト消費」の回復や物価高が影響しているからです。

もう、地方に大きな成長は望みにくい時代なのです。富や人々がまだまだ集中を続ける「東京」こそ、成功する最後の頼みの綱と言えるでしょう。では、東京のどこだったら良いのか。売上が、そして収益が望めるのか?やはり東京ならば、最大の良き立地は“駅前”に違いありません。

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