【2026年正月休業の波】百貨店やスーパー、飲食店が売上不安を払拭し人手不足を解消する「戦略的休業」術

この記事の目次
正月, 休業, 2026年, 営業時間, 店舗経営, 人手不足, 働き方改革, 元日, 三が日, キャッシュフロー, 予約販売, タイミー, スキマバイト, 採用コスト, 離職防止, スーパー, 百貨店, 飲食店, 戦略, 生産性向上

休業を「コスト」ではなく「投資」に変えるキャッシュ最大化戦略

 2026年、店舗が生き残るためには、ただ「休む」だけでなく、休業してもキャッシュフローを維持できる「戦略的休業」が必要です。

1.年末の「先行回収」への完全シフト

 三が日に店を開けなくても、12月中にキャッシュを前倒しで回収する仕組みを作ります。

  • 事前予約・前払い制の導入: 寿司、オードブル、おせち料理を「事前予約・事前決済」にすることで、12月中にキャッシュを確保します。
  • まとめ買いの促進: 「正月は休みます」という告知を12月初旬から行い、年末までに日用品や保存性の高い飲料、在庫の買い溜めを促す特売セールを実施します。

2.デジタルツールの活用:無料で今すぐ店長ができること

「せっかく店まで来たのに閉まっていた」という顧客体験の悪化を防ぐため、店長が今すぐ、無料で取り組むべきアクションは以下の3点です。

  • Googleビジネスプロフィールの「特別営業日」設定: 通常の営業時間とは別に、元日・三が日の「臨時休業」を正確に設定します。これだけで、Googleマップ経由の来店客に「本日休業」を表示させ、無駄な来店やクレームを未然に防ぐことができます。
  • SNSでの「休業ストーリー」発信: LINE公式アカウントやInstagramで、単に休みを告知するだけでなく、「従業員の心身のリフレッシュと、新年からより良いサービスを提供するための決断です」という背景を添えて発信します。これにより、不便さを「共感」と「応援」に変えることができます。
  • 店舗検索への「予約ページ」リンク設置: 休業中の売上を完全にゼロにしないために、SNSのプロフィール欄やGoogleビジネスプロフィールの投稿機能を使って、年始営業開始後の予約や、事前予約商品の注文ページへ誘導するリンクを設置しておきます。

3.採用コストを削減し、大手に負けない人財を確保する「二段構え」の戦略

「正月休みを約束する」ことは、採用市場において非常に強力なフックとなります。離職率が下がれば、求人広告費や研修費といった「無駄なキャッシュ流出」を抑えることができます。

しかし、年末の繁忙期はどうしても人手が必要になるのも事実です。ここで注目すべきは、スキマバイトアプリ「タイミー」などを活用した外部リソースの戦略的投入です。

マクドナルドやすかいらーくといった大手チェーンが自社アプリ等での「内製化」を強める中、その隙を突き、タイミーなどの外部プラットフォームを駆使して優秀な単発バイトを大手から奪い取る発想が重要です。

手数料を「コスト」と捉えるのではなく、繁忙期のスポット対応を外部に切り出すことで、正社員やベテランスタッフに「お正月休み」という最大の報酬を与えるための「利益を出す仕組み」と捉え直すべきです。

(参考:【採用の新常識】マクドナルド・すかいらーく内製化の隙を突く!手数料30%でも利益を出し、優秀な単発バイトを大手から奪うタイミー活用術

【事例】三が日休業を成功させた地域密着店の決断

 ある地方の小規模スーパーでは、2025年から思い切って三が日を完全休業にしました。店主は当初、資金繰りの悪化を危惧していましたが、結果は意外なものでした。

  • 結果1: 12月30日・31日の「前倒し需要」を徹底的に狙ったチラシ戦略により、年末売上が前年比120%を記録。キャッシュフローの懸念を払拭しました。
  • 結果2: 従業員から「初めて家族とゆっくり過ごせた」と感謝の声があり、その後の定着率が劇的に向上しました。
  • 結果3: 1月4日の「開店」日には、地域のお客様が「ゆっくり休めましたか?」と声をかけてくれるようになりました。これは「店が休む=不便」という不満を超え、店側の従業員を想う決断が地域社会に肯定的に受け入れられた証であり、店へのロイヤリティ(忠誠心)が以前よりも強固になった。

これは、お客様との間に「店がしっかり休むことで、継続して質の高いサービスを提供できる」という相互の信頼関係が築けていれば、休業は単なる「不便」ではなく「地域から応援される決断」になるという好例です。

こうした「店側の意思表示」は、正月休業に限った話ではありません。かつて議論を呼んだ「店内撮影禁止」などのルール作りも、その本質は「店と客が対等な関係を築き、互いを尊重する環境を守る」ことにあります。

「あなたの店は、どう生き残りますか?」 スーパーの「撮影禁止」や「正月休業」が意味するのは、単なるルールの変更ではなく、店舗とお客様の新しい関係性の構築なのです。 (参考:「あなたの店は、どう生き残りますか?」スーパーの『撮影禁止』が意味する本当のこと

2026年、店舗経営者が描くべき「従業員の夢」

 2026年のお正月休業の拡大は、日本のサービス業が「安売り」と「自己犠牲」の時代から脱却する大きな分岐点です。

経営者や店長が今やるべきことは、目の前の数日間の売上を追うことではありません。10年後、20年後もその地域で必要とされる店舗であり続けるために、従業員という「人財」をどう守り、キャッシュフローをいかにコントロールするかという経営の「仕組み」を構築することです。

「正月は従業員のために休業する」 この決断こそが、人手不足という荒波を乗り越え、持続可能な店舗経営を実現するための第一歩となります。

ピープル・ビジネス・オンラインは、そんな志を持つ経営者の皆様を応援しています。人手不足、生産性向上、資金繰り……。山積する課題を一つずつ解決し、従業員と共に「夢」を見られる店づくりを共に目指しましょう。

この記事は筆者が「note」に掲載した【正月3ヶ日は従業員のために休業します!】」「【デパート・スーパー、外食店のお正月休み】
を要約、加筆したものです。

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