(最新版)ディズニー流経営の極意 3.”会社の方針に沿って主体的に考え行動できる人”を育成する仕組み

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【この記事の概要】
 「ディズニーにはゴールと行動指針以外に細かなマニュアルはありません」
 笑顔やホスピタリティに満ちあふれた接客でお客様満足を実現する「魔法の国ディズニー」は、マニュアルがしっかりしていて、細かく書かれていると思われがちなのですが、実は、真逆で細かなマニュアルなどは存在せず、ゴールと行動指針以外に細かなマニュアルはないのです。にもかかわらず、従業員が”ディズニーのゴール”実現のために自ら考えて行動することで、質の高いサービスでお客様の心を掴み、多くのお客様のリピートを獲得しています。この事例をもとに、主体性を引き出す、また店舗の諸問題の解決ができる人を育成する仕組みについて解説します。

この記事の目次

マニュアル化をすれば、主体的に考え行動できる人が育成できるのか?

昭和から続く経営者や管理職の苦悩「主体性のある人の育成」

 中小企業を取り巻く人の育成に関わる苦悩は昭和から続く経営課題の一つでもあります。

中小企業の経営者らが抱える苦悩:
「従業員が指示された事しかやらない。もっと自分から動けるようになってほしい」といった声があげられます。

佐藤勝人の実践的リーダーシップ論 9.あなたの部下は「なぜ受け身、指示待ちになってしまうのか」

上記からも分かるように、経営者が求めているのは”主体性“です。

また、人財育成に必要な能力開発について、1955年に米国の経営学者ロバート・L・カッツが提唱した「カッツモデル」では入社後の組織でのキャリア(役職・経験)に応じて必要な3つの能力を次のよう示しています。

 テクニカルスキル(業務遂行能力)
 ヒューマンスキル(対人関係能力)
 コンセプチュアルスキル(概念化能力)

つまり、”主体性“とはテクニカルスキル(業務遂行能力)に含まれます。

正社員やパート・アルバイトに関わらず求められることは、入社後、まず最初に一連の業務を習得して、その後、刻々と変化する状況下、限られた時間内に業務を遂行することで、そこでタイムマネジメントや問題解決が必要になり、これらが”主体的“に行われることです。

一般的には、主体性を引き出すために、また店舗の諸問題の解決などをマニュアル化で図ろうとするのですが、あまり効果につながりません。

なぜ、効果がでないのでしょうか?

ディズニーにはゴールと行動指針以外に細かなマニュアルはありません

すべてができるようになるマニュアルは存在しない

 マニュアル化をすれば、人の育成や問題解決など、すべてのことができてしまう万能薬であるかのように思われがちですが、マニュアル化をしても思うような結果が得られないことを経験した読者も多いのではないでしょうか。

笑顔やホスピタリティに満ちあふれた接客をする「魔法の国ディズニー」は、マニュアルがしっかりしていて、細かく書かれていると思われがちなのですが、実は、真逆で細かなマニュアルなどは存在せず、ゴールと行動指針以外に細かなマニュアルはないのです。

それでも、昨日までまったくの素人であった従業員でも会社の方針に従って、素晴らしい接客が主体的にできるようになるんです。

実効性のある育成・問題解決のマニュアルとは?

マニュアルが人の育成や問題解決に効果があるのでしょうか

 どのようなマニュアルが人の育成や問題解決に効果があるのか考えてみましょう。 

この要素を意識することで、主体的に考え行動できる人の育成を進めることは容易になるでしょう。そして、組織全体としての店舗経営力を高めることにもつながります。

マニュアル化の利点と欠点

 マニュアルの作成や見直しにおいてマニュアル化のメリットとデメリットを理解することが必要になります。なぜならば、どこまでをマニュアルに記載すればいいのか。マニュアルに明記できないことはどう教えればいいのか、などの判断に重要な要素であるからです。

例えば、“商品やサービスのレベル向上や即戦力化のためマニュアルに頼って、マニュアルを作成して現場に導入した場合、マニュアル通りのことはできるようになります。しかしながら、マニュアルに書かれていないことしかしない、指示されたことしかしない”ようになってしまいます。

つまり、マニュアルに頼りすぎるとマニュアル通りにしか動けない、指示されたことしかしない、指示がないと動けないといった”指示待ち人間”を育成してしまうことになり、リーダーや店長が常に指示をしていないと店が動かなくなってしまうのです。

そして、このような問題が発生すると解決もマニュアルでなんとか試み、人を動かそうとするのですが、マニュアルはどんどん細かくなって、ボリュームも増えてしまうため現場で使われなくなってしまい、人の育成もできず、問題は解決どころか悪化し、さらに、他の問題をも誘発してしまうのです。

これがマニュアルで問題解決を試みた場合に悪循環に陥ってしまうよくあるケースです。

人の能力を開発するマニュアル

 マニュアルには、あれもこれも記載するのではなく、業務上最低限の情報を次の項目(ピープル・ビジネスの三大要素)でまとめます。

 ➊ 手順と基準
 ➋ 手順ごとの注意ポイント

を明記する程度にして、一連の流れで上記ができるようになったら

 ➌ 考え方

を教えます。教え方は、知識の詰め込みではなく「Why(なぜ、そうするか)、How(どうして、そうするのか)」をオープンクエスチョンで質問するようにします。

木と根のイラスト ピープル・ビジネス理論構成要素「ツール」「システム」と「考え方」 「森を見て木を見ず」「木を見て森を見ず」だけでは不十分で、複雑に絡み合った木の根っこまで見ることで根本原因が見え、物事をシンプルに捉えることができる

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マニュアルの活用と人財育成のコツ

 マニュアル化のデメリットで一番注意が必要なことは、制限を多くしたマニュアルにしないことです。マニュアルは人の成長を制限し、「誰もが持っている潜在能力を活かしきれない」状況が生じることなんです。

そこでディズニーパークでは、上司がキャストに「この場合だと、行動指針“The Five Keys(5つの鍵)”に照らし合わせてどう判断すればいい?」といった質問と話し合いを繰り返して、一緒に行動指針に基づいて考えられるように、従業員の考えを引き出し、行動指針に近づけることで能力を引き出すことを徹底しています。

それは、「ディズニー流経営の極意 2.2.5万人もの従業員がベクトルを合わせ、驚異のリピート率90%を実現」で紹介したディズニー従業員全員に共通したゴール「We Create Happiness.(ハピネスの創造)」を目指して自身でゴールに向かっているか、時々、行動を振り返ったり、迷ったときにはゴールに向かってどう行動すべきかを行動指針を見て行動するように徹底しているからです。

日々の業務でディズニー従業員全員が共有するゴール「We Create Happiness.(ハピネスの創造)」を達成するために、行動指針「The Five Keys」を見て適切な行動を選ぶよう徹底して繰り返しているのです。

ですので、キャストに質問をすることで、考えが引き出せますし、どのように行動すればいいからこの時点で頭にインプットされるので覚えるもの早くて、実践も伴うんです。

だからこそ、状況やお客様に応じた対応や接客ができるようになるので、ホスピタリティが発揮できるようになるんです。

このようにマニュアルに依存し、マニュアルで人を育てて動かすのではなく、経営理念や行動指針に基づいて主体的に考え行動できるように、人を育てています。

主体性のある人を育成するための重要ポイント

本当に最低限のマニュアルとオープンクエスチョンで人が育つのか?

 ここまでの内容で重要なポイントがあります。実施方法を間違えると逆効果につながります。

先に『マニュアルへの明記は最低限に、トレーニングやフォローアップ時にオープンクエスチョンで質問するようにします』と説明しましたが、それはあくまで、経営理念や行動指針などの基準が明確になって、それに則って判断できることが前提です。

これらの基準がないまま、最低限のマニュアルで、オープンクエスチョンで質問をしても、人の数だけ基準やルールができてしまう可能性がありますので注意が必要です。

また、口頭によるコミュニケーションばかりになると属人的になってしまい、その人が辞めてしまうと人財力の低下を招いてしまいますので、コミュニケーション内容をキャストにメモ書きしてまとめてもらうなどの文章によるコミュニケーションとして形にすることも重要です。

人の数だけルールや基準が存在 人それぞれの考え方

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次回は、ディズニー従業員全員に共通したゴール「We Create Happiness.(ハピネスの創造)」実現のための本質について、解説したいと思います。

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