本連載記事【目次】 | 前の記事 | 次の記事 |
【この記事の概要】
チラシ見た消費者、店前を通行する人や車に来店いただくために重要なこと
お店の開業時に看板などを設置して現在もそのまま。また、チラシなどを配布して消費者の来店を待つまま。といった受け身の経営になっていませんか?これらを実行したからといって売上が増大するとは限りません。このように一見、攻めの経営に見えることも、「○○したまま」ですと受け身の経営となり、結果が出ない一因にもなります。そこでこの記事では、売上を大きく左右する店舗経営の盲点である「店舗視界性」の基準について、あなたの店が見えなければならない10方向、店が見えるための10手段を解説します。
店舗集客と店舗立地の原則
立地判定と立地改善のポイント
前の記事「繁盛立地の紐解き 9.「より多くの人にお客様になってもらう」ための立地改善と店舗集客」では「最も効果的でリスクを減らしたチラシの撒き方」を紹介しました。
店舗集客の原則は、あくまでも商圏内や店前を通行する人や車に店の存在を知ってもらい来店につなげることです。
よって、チラシ見た消費者や店前を通行する人や車に来店いただくためには、”店の存在を知ってもらう“、”店がある場所を知ってもらう“、”入りやすい店の外観(入店時の心理的制約がない店舗外観)“などが必要になります。
そこで”店を認識してもらうための立地“が重要になり、新規出店の場合は立地判定、既存店の場合は立地改善になります。
コンビニエンスストアや有名チェーン店、そしてマクドナルドなどの大手チェーンはどのような立地と立地改善で繁盛しているのでしょうか。今回は、店舗立地の観点から原則を紐解きます。
店を繁盛させる条件「視界性」
店そのものや店の看板がきちんと見えているかどうかが重要
”店を認識してもらうための立地“を実現するためには、「視界性」が重要なポイントになります。
視界性とは「その店や店の看板がきちんと見えているかどうか」を意味しています。もっと言えば、「あなたの店の存在、商品やサービスを知らない人に対して、自然に視野に入る」ことです。これらは、売上を大きく左右する店舗経営の盲点とも言えますので注意が必要です。
ここでは、マクドナルドの事例を紹介したいと思います。
マクドナルドでは、お店の視界性のことを、部門別に次のように呼び、これをひじょうに重視しています。それは、現代まで受け継がれています。
店舗開発部門 : 露出
運営部門 : ビジビリティー
今では、店舗経営、ピープル・ビジネスでは当たり前のように使われている専門用語ですが、平成以降、定着が進んでいます。
(参考)視界性と視認性の違い:筆者は「その店や店の看板がきちんと見えているかどうか」を判別することを「視界性」と呼んで、視認性と区別をしています。その理由は本連載「繁盛立地の紐解き 2.看板の置き方で変わる立地の良否」で詳しく解説していますので、ご参照ください。
出店の可否を決める厳しい立地判定「視界性」の基準
この視界性は出店の可否を決める基準があり、とりわけ、ロードサイド店ともなると、10方向ないし10手段で店が見えなければ不合格と言われるほど厳しいものです。もちろん、商店街やビジネス街などの通行人を対象にした立地でも同じです。
なぜ、これほど厳しのかと言うと、「なにしろ、黙っていたら確実に不振店になるような商品を売っている」という危機感が創業当初からあり、その遺伝子がれんめんと続いているからです。
ここで言う商品とは、もちろん「ハンバーガー」のことです。現在では「月に1回以上食べる」人の割合が30%以上とも言われ、既に日本の三大国民食のラーメン、カレーとハンバーグと肩を並べる商品です。
しかしながら、日本マクドナルド創業時、国内の食文化は三角サンドイッチのようなコールドサンドイッチが主流で、ハンバーガーというホットサンドイッチはまったく馴染みのない商品でしたから、その危機感たるや相当のものだったのです。
あなたの店が見えなければならない10方向、店が見えるための10手段
店が見えなければならない10方向
まずは、店が見えなければならない10方向を下記に要約しますので、図10を参照して自店舗を確認してみましょう。
つまり、10方向からあなたの店が見えなければ、見えない店と判断でき、出店はできないことを意味しています。
① 店側車線車道:店から手前100mクルマから
② 同歩道20m通行人から
③ 反対側車線の手前歩道20m通行人から
④ 同先車道100mクルマから
⑤ 店側車線の歩道先20m通行人から
⑥ 交差するサブ道路、店側車線車道:店から先100mクルマから
⑦ 同20m通行人から
⑧ 同店の手前歩道20m通行人から
⑨ 交差するサブ道路、反対車線の手前100mクルマから
⑩ 同手前歩道20m通行人から
店が見えるための10手段
① 大看板(横型看板)
② ポール看板(回転看板)
③ IN看板
④ 据え置き看板
⑤ ネオン看板
⑥ ガラス窓へのロゴサイン
⑦ 壁面看板
⑧ 大型バナー
⑨ のぼり旗
⑩ そで看板
などを指します。
これだけを見ると、当たり前のことのように感じるかもしれませんが、この当たり前のことを、徹底して実行し、検証と改善を繰り返しているのです。
さらに、実は、これらにとどまりません。
それは、ポスターやドナルド人形やリクルート案内、屋外物置やゴミ箱へのロゴ入れやさまざまな器材が動員されているのです。野立看板も多いところでは3基以上設置されています。
これほどまでに、店が見えるための努力を徹底して実行し続けているのです。
よって、これでマクドナルドの店に気づかない人がいたら教えてほしいほどです。是非とも、著者までご連絡ください
“店が見えること”についての異常なまで執着するワケ
マクドナルドに限らず、コンビニエンスストアや他の有名チェーン店も同様に視界性を重視するも…
この見えることについての異常なまでの執着は、もちろん、マクドナルドに限りません。
すでに多くの人が気づいているように、コンビニエンスストアや他の有名チェーン店が同じように行っています。
しかし、それらは多分に、「コスト意識」「節約意識」にとらわれ不十分なものが少なくなく、マクドナルドほど徹底的に行っている企業はないでしょう。
とにかく、視界性の確保によって「一人でも気づかない人が出ないようにする」ことが、「人々の幸せのためだ」とさえ思っていると言って良いくらいです。
この意識は、戦国時代の勇敢な武士ほど、より目立つ格好をして戦場を駆け巡ったという、その気概に通じるものがあるのかもしれません。
自分の商売に「人々を必ずとりこにする」という強い自信があるからこその行為だと言えるからです。自信がなく、後ろめたいと思う人ほど目立ちたくないものでしょう。
そういえば、日本のマクドナルドの創業社長、藤田田氏が、歴史学者が舌をまくほどの無類の「戦国武将」研究家であったことはあまり知られていません。
いかなる店にせよ、見えない店にはしたくないものです。
本連載記事【目次】 | 前の記事 | 次の記事 |