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【この記事で分かること】
「見た目」を変えれば売上が変わる!顧客を惹きつけるビジュアル戦略で繁盛店へ!
本稿では、顧客の購買意欲を刺激する「見た目」の重要性を10の成功事例で徹底解説。商品のパッケージング、萌え断、店頭陳列、オンラインストアの商品画像といったビジュアル戦略を通じて、売上を最大化する具体的な手法を、店長・店舗経営者の皆様へお届けします。
第一弾では「ギルティ、増量、メガ盛り、飯テロでの差別化戦略」、第二弾では「消費者の心を掴み、記憶に残る商品ネーミング戦略」について解説しました。どんなに素晴らしい商品でも、顧客の目に触れ、心が動かされなければ購入には至りません。そこで今回は、商品の「見た目」、つまりパッケージングとビジュアル戦略が、顧客の購買意欲をいかに強く刺激するか、具体的な事例を交えながら深掘りしていきます。
五感を刺激するパッケージデザインの重要性:商品の質感、色、形状が顧客に与える影響
マーケティングでは、顧客の購買行動において「第一印象」が極めて重要です。商品そのものの「見た目」は、顧客が最初に得る情報であり、購買行動に決定的な影響を与えます。パッケージングやビジュアルは、顧客の五感に訴えかけ、商品への期待値を高める役割を担います。
古典的なマーケティングのフレームワークAIDMA(アイドマ)の法則を例に考えてみましょう。
- Attention(注意): 魅力的なパッケージや陳列で顧客の注意を引きます。
- Interest(興味): 色使いや形状、手触りなどで顧客の興味を喚起します。
- Desire(欲求): パッケージが伝えるベネフィットや品質で「欲しい」という欲求を高めます。
- Memory(記憶): ユニークなデザインやビジュアルで顧客の記憶に留めます。
- Action(行動): 上記のステップを通じて、最終的な購買行動を促します。
パッケージデザインとビジュアル戦略は、顧客の購買ファネルのあらゆる段階で重要な役割を果たします。単なる商品の入れ物ではなく、ブランドの顔として、顧客との最初のコミュニケーションツールとして、そのデザインには細心の注意を払う必要があるでしょう。
1. 質感:触覚が伝える「上質さ」と「安心感」
人は無意識のうちに、触れるものから多くの情報を得ています。例えば、ざらざらとした手触りは「手作り感」や「素朴さ」を、マットな質感は「高級感」や「落ち着き」を、ツルツルとした光沢のある素材は「フレッシュさ」や「先進性」をそれぞれ連想させます。
事例1:岩国市「むさし」のソフトクリームの圧倒的なバリエーションとビジュアル
- チェックポイント:圧倒的なバリエーションとビジュアルで顧客の注意を引く
「日本一のソフトクリーム店」としてテレビ朝日系のテレビ番組『ナニコレ珍百景』でも紹介された山口県岩国市の錦帯橋のたもとにある「むさし」は、『ソフトクリームの種類 日本一 更新中!ただいまのソフトクリーム200種類』と看板で訴求しているように、常時200種類以上という圧倒的なバリエーションが魅力です。
店内に並ぶ100種類以上のソフトクリームサンプルは圧巻で、顧客はその豊富さと色彩豊かなビジュアルに強く引きつけられ、選ぶ楽しさから購買欲求が高まります。
さらに、既存商品による視覚的な楽しさもSNS映えする要素です。この視覚に訴えかける体験が、むさしのソフトクリームを「特別な一品」へと昇華させ、集客と売上向上に貢献しています。
2. 色:視覚が呼び覚ます「感情」と「記憶」
色は人間の感情や心理に強く作用します。例えば、赤は情熱や食欲を、青は信頼や清潔感を、緑は自然や安心感を連想させます。商品のジャンルやターゲット層に合わせて適切な色を選ぶことで、顧客の購買意欲を効果的に刺激できます。
事例2:ドン・キホーテのオリジナルブランド「情熱価格」
- チェックポイント:鮮やかな色使いと印象的なロゴでブランドを訴求
ドン・キホーテのオリジナルブランド「情熱価格」は、パッケージデザインの独自性が特徴です。2021年のリブランディング後、商品の隠れた魅力やお買い得感を「驚きのニュース」と称し、大きな吹き出しや手書き風のフォント、鮮やかな原色系のカラーを大胆に用いています。
特に印象的なのは、『ド』をモチーフにしたロゴマーク。食品では、商品の特長や開発秘話をあたかも店員が語りかけるかのように記載し、顧客の注意と興味を瞬時に喚起。ストーリーや遊び心をパッケージに込めることで顧客体験を向上させ、リピート購入にも繋がっています。
3. 形状:ユニークさが生み出す「記憶」と「所有欲」
パッケージの形状は、商品を差別化し、顧客の記憶に強く残すための重要な要素です。一般的な形状から逸脱したデザインは、それ自体が話題となり、顧客の好奇心や所有欲を生み出します。
事例3:行列のできるフルーツサンド専門店「纏」の「ショートケーキ缶」のビジュアル戦略
- チェックポイント:ユニークな形状と「萌え断」で視覚的魅力を最大化
「1時間で完売する行列のできるフルーツサンド専門店『纏(まとい)』」は、その圧倒的な人気をフルーツサンドの「見た目の美しさ」と「断面の魅力」で獲得しています。また、同店で販売されている「ショートケーキ缶」も、飲料缶に美しく層をなしたケーキが詰められ、その意外性とビジュアル、そして、何と言っても覚えやすい商品名も相まって注目を集めています。
これらの「萌え断」は顧客の注意を引きつけ購買欲求を高め、SNSでの拡散を通じてさらなる行列と完売を生み出しています。商品の形状と内部のビジュアルを最大限に活かし、記憶に残る購買行動を促進する好例です。
「見せる」から「売れる」への転換:店頭での陳列方法とオンラインストアでの商品画像戦略
どんなに素晴らしいパッケージデザインの商品でも、顧客の目に触れなければ意味がありません。ここでは、「ただ見せる」だけでなく「購買に繋がる」ためのビジュアル戦略について解説します。
1. 店頭での陳列方法:顧客の購買行動をデザインする
店舗での陳列は、単に商品を並べる行為ではありません。顧客の動線、視線、心理を考慮し、商品を魅力的に見せ、購買行動へと誘導する戦略です。
事例4:スーパー「生鮮館やまひこ」の「具材たっぷり惣菜」コーナー
- チェックポイント:ゴールデンゾーンの活用 顧客が最も見やすいとされる目線の高さに、最も売りたい商品や利益率の高い商品を配置します。
愛知県尾張旭市の「生鮮館やまひこ」は、開店前から客が押し寄せる人気スーパーです。その人気の大きな理由が、「タップリすぎる具」と「思わず驚くアイデア」が満載の惣菜。顧客の目線が集中する「ゴールデンゾーン」では、この特徴が最大限に活かされています。
名物の「爆弾おにぎり」や具材ぎっしりのサンドイッチなどが透明パッケージでショーケースに並べられ、圧倒的なボリューム感と見た目のインパクトで来店客の注意を引きつけ、購買欲求を強く感じさせます。この視覚的戦略と期待感が、客数アップに大きく貢献しています。
事例5:ライフスタイル雑貨店「無印良品」の「おうちカフェセット」
- チェックポイント:ストーリー性のある陳列 関連購買の促進。商品単体で並べるのではなく、関連商品を一緒に陳列することで、顧客に具体的な使用シーンをイメージさせ、ついで買いを促します。
ライフスタイル雑貨店「無印良品」では、コーヒー豆やマグカップ、ドリッパー、フィルター、お菓子などをまとめて「おうちカフェセット」として陳列。
自宅で手軽に楽しめるカフェタイムというライフスタイルを提案し、顧客がシーン全体をイメージしやすくなることで、関連商品の「ついで買い」を促進し、客単価アップに貢献しています。
事例6:サンマルクカフェの食品サンプルショーケース
- チェックポイント:照明とPOPの活用 適切な照明で商品を明るく照らし、魅力を引き出します。また、商品の特徴や魅力を簡潔に伝える効果的なPOPは、顧客の疑問を解消し、購買への最後のひと押しとなります。
サンマルクカフェでは、店先の精巧な食品サンプルショーケースが強力な集客フックです。焼きたてクロワッサン、サンドイッチ、かき氷や色鮮やかなパフェなど、見た目の魅力が重要な商品は、ショーケース内でスポットライトを浴び、本物のようなシズル感を演出。これにより、通りがかりの顧客の注意を引きつけ、購買欲求を強く喚起します。
2. オンラインストアでの商品画像戦略:画面越しの「体験」を最大化する
実店舗と異なり、オンラインストアでは顧客は商品を手に取って見ることができません。そのため、商品画像が唯一の「触れる」情報源となり、その質が売上を大きく左右します。オンラインでは「視覚的な代替体験」を顧客に提供し、不安を解消することで、購買へのハードルを下げます。
事例7:衣料チェーン「GU」のECサイト商品画像
- チェックポイント:高解像度で魅力的なメイン画像 商品の第一印象を決める最も重要な画像です。明るく、鮮明で、商品の特徴がはっきりとわかる高解像度の画像を用意し、背景はシンプルにして商品が引き立つように工夫します
GUなどのECサイトでは、主力商品のメイン画像にモデル着用高解像度写真を多用し、服を着た際の「ライフスタイル」をイメージさせます。これにより、顧客は商品のシルエットや素材感、自分に似合うかどうかのイメージを高め、オンライン購入への購買欲求を強く刺激しています。
事例8:家電量販店ECサイトの「携帯型扇風機」
- チェックポイント:複数アングルからの画像 商品は正面だけでなく、側面、背面、内部など、様々な角度から撮影し、顧客が細部まで確認できるようにします。
家電量販店のECサイトで「携帯型扇風機」を販売する際、コンパクトさや機能性を伝えるため、複数アングルからの画像が重要です。本体の基本角度に加え、首掛けストラップ装着、卓上スタンド使用、羽根構造、充電ポート、操作ボタンのアップなど、細部にわたる画像を多角的に掲載。
手で持った際のサイズ感やカバンへの収納例も提示し、顧客が実物を手に取らずとも製品の全体像や使い勝手、携帯性を詳細に確認でき、不安なく購入を検討できるようにしています。
事例9:ファミリーレストラン「ガスト」のテイクアウト・宅配メニュー
- チェックポイント:使用シーンの提案(ライフスタイルショット) 商品単体だけでなく、実際に使用しているシーンを撮影することで、顧客に商品の価値やメリットを具体的にイメージさせます。
ガストは、テイクアウトや宅配メニューの画像で工夫を凝らしています。料理単体の写真だけでなく、家族が食卓を囲む様子やピクニックで楽しむ様子など、実際の食事シーンを想起させるライフスタイルショットを公式ウェブサイトやアプリ、SNSで多数掲載。
これにより、顧客は「この料理で楽しい時間が過ごせる」という具体的なメリットをイメージしやすくなり、手軽に外食気分を楽しめるという購買欲求が高まり、注文数増加に貢献しています。
事例10:調理器具専門店の「時短クッカー」
- チェックポイント:商品のサイズ感を示す動画の活用 写真だけでは伝えきれない商品の魅力(質感、動き、使用感など)は、短尺の動画で補完しましょう。
新発売の時短クッカーは機能の多様さが魅力ですが、写真だけでは伝わりにくいため、調理中の様子を短時間の動画で紹介。食材投入から完成までの流れを見せることで、顧客は「簡単に使えそう」「本当に時短になる」と納得し、購入を決めやすくなります。
手軽さや調理の楽しさを伝える動画はSNSでのシェアを促し、新たな顧客層へのリーチにも繋がっています。
まとめ:視覚戦略で顧客の心を掴み、売上を最大化する
今回の記事では、定番商品の販売戦略におけるパッケージングとビジュアル戦略の重要性を解説しました。
- 商品のビジュアル・パッケージングは、その質感、色、形状を通じて顧客の五感を刺激し、商品の価値やブランドイメージをダイレクトに伝えます。
- 店頭陳列は、顧客の動線や心理を考慮した配置、ストーリー性のある提案、照明やPOPの活用で、顧客の購買行動を促します。
- オンラインストアの商品画像は、高解像度、複数アングル、使用シーン提案、サイズ感の明示、動画活用で、画面越しの「体験」を最大化し、購買に繋げます。
これらの視覚戦略は、単に商品を「見せる」だけでなく、「顧客の心を掴み、購買意欲を刺激し、最終的に売上を最大化する」ための強力なツールです。ぜひ皆さんの店舗でも、今日からできることから取り入れ、顧客の購買体験をデザインしてみてください。
次回は、これらの戦略をさらに加速させるための「顧客とのコミュニケーション戦略」について深掘りしていきましょう。お楽しみに!
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