労務管理入門「人で失敗し、人で成功する実務」 (第1回)イントロダクション

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人の育成とは、教科書通りにはいかない!「自分の責任で確保育成して定着させる」ことを通じ、自分の至らなさから学ばせる

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店舗ビジネスの特徴

お客様や従業員と商圏特性

店舗ビジネスの特徴はなんだろう。それは概ね商圏が狭く、お客様も従業員(特にパート、アルバイト、以下P/A)も、ほとんどが近くに居住している。

つまり、お客様の来店促進も店舗スタッフも同じマーケティングエリアであり、訴求するものが「商品orサービス」なのか「仕事」なのかの違いだけだとも言える。

店舗ビジネスを成功させる肝は同根なのであるが、大きな違いもある。それは、「仕事」は「人間」が行い、そこには感情や思惑、様々な人間関係に加えて法律が強制的に関与してくることにある。

もちろん、「商品orサービス」にもその種類や内容によって、法律が強制的に関与してくともあるが、店舗ビジネスでは少なくとも「人間」は「商品orサービス」そのものでは無いことも付け加えておきたい。

仕事の標準化と従業員雇用の標準化の必要性

それでは、店舗ビジネスの特徴である「仕事」を行う「人間」のほとんどがP/Aである。それは、店舗ビジネスの多くはフランチャイズ形態、直営展開によるチェーンストアなどで多店舗を展開している企業が多く、店舗の運営は標準化され、そこで行う「仕事」はマニュアル化されている。

このことが多くの店舗ビジネスはP/Aを中心に運営することが可能である大きな要因に挙げられる。

その一方で、店舗ビジネスの「仕事」の内容は多岐に渡り、標準化やマニュアル化は比較的行いやすい特徴がある一方、機械化やシステム化には馴染みにくく「人間」による作業、いわゆる人手で行うものが多く、多くのP/Aを雇用する必要がある点も挙げられる。

激動の労働市場

少子高齢化における労働市場

多くのP/Aを雇用する必要がある店舗ビジネスは、労働市場の動向の影響を受けやすい。それでは現在の労働市場はどのようになっているのだろうか。それは既に多くの方がご存じのとおり、少子高齢化の流れが益々加速し、労働力の中心となる満15歳から満64歳の人口は1997年の8,697万人をピークに減少の一途であり、2019年には7,510万人まで減少している。(出典:総務省「労働力調査」)

このように、労働力の中心となる満15歳から満64歳の人口が減少する一方で、就業者数は2019年の6,724万人がピーク(出典:総務省「労働力調査」)となっているのは、店舗ビジネスを始めとする多くの企業が、女性や高齢者雇用を増やしたことが伺える。

逆説的に言えば、よく体が動く若者=学生アルバイトは奪い合いとなり、時間や体力に制約があるP/Aに頼らざるを得ない、苦しい店舗運営となっていることが推測できる。

学生らアルバイト雇用での昨今の問題と解決策について

よく体が動く若者=学生アルバイトを雇用することができた店舗は勝ち組なのかというと、そうは問屋が卸さないのが現状である。「若気の至り」という言葉があるように、学生アルバイト等はアルバイト同士で悪ふざけしたりすることは以前からあったと思われるが、情報化社会となり多くの人がSNSを使うようになり、悪ふざけをSNSに投稿した場合、仲間内だけにとどまらずあっという間に拡散する社会となった。

BeforeSNS時代と比較すると、afterSNS時代である現代は、店舗ビジネスに与える影響の大きさは格段に異なり「バイトテロ」と恐怖と揶揄をもって表現されるようになった。

それでは、「バイトテロ」が起きないようにするには、どうすればよいのであろうか?また、「バイトテロ」が起きないように、上司が厳しく指導したり、監視カメラを設置すること「バイトテロ」は起きなくなるのであろうか。

確かに、上司が厳しく指導したり、監視カメラを設置した直後は抑止効果があると思われるが、いつまでも抑止効果が続くとも考え難い。

現代は、スマートフォンの普及で誰もがカメラマンになり、SNSの普及で誰もが発信することが可能になった、過去に類例を見ない時代である。その対策を店舗ビジネスの経営者や店長は、どうやって行っていけばよいのか、その答えを読者と一緒に考えていくのが、このシリーズの目的の一つである。

働き方改革の本当のねらい

行政施策と経営のホンネ

オフィス 同僚

働き方改革とは1億総活躍社会を目指して労働関係法令が多数改正されたのは記憶に新しいところです。法律の施行日は企業規模によって多少異なり、現時点では働き方改革に関連するほとんどの法令が施行されている。

店舗ビジネスの経営者や店長においては、「労働時間の上限規制」や「年次有給休暇の取得義務化」の影響が大きく、法令遵守の状況はまだら模様だと思われ、一部の経営者や店長は、「法律なんて守っていたら店舗が運営できない」との考えも耳にする。

また、2020年初頭からのコロナ禍において、飲食、小売りやサービス業をはじめとする一部の店舗ビジネスにおいては、緊急事態宣言等による営業の自粛要請(営業時短要請を含む)で、営業することもままならない状況に陥った店舗も多く、コロナ禍前に多くの店舗で頭を悩ませていた人手不足状態から一転、雇用を維持することも困難に状況となった。

新株の派生型発生、ワクチン接種や治療薬開発からウィズコロナを前提にした社会経済活動や新しいライフスタイルによって経済活性化を見出している。巣ごもり需要からスーパーマーケット、ドラッグストアやデリバリー業態は好調もあり、一定の経済活動活発化は予測可能だ。

先きを予測した準備の必要性

経済活動の活発化は企業の求人状況に顕著に表れており、リクルートが発表した首都圏、東海、関西の3大都市圏のP/A募集の平均時給はコロナ禍前より10円以上上昇している。2021年は過去最高の最低賃金の引上げ(全国平均で28円)が行われたことを考慮に入れても、P/Aの募集時給は上昇傾向にあることは間違いなく、コロナ禍前の人手不足を考えるとP/A争奪戦が再燃することは容易に予想できるであろう。

そもそも、働き方改革とは?

そこで働き方改革である。働き方改革への対応もコロナ禍前の「法律なんて守っていたら店舗が運営できない」との考えでよいのであろうか。働き方改革は「労働時間の上限規制」や「年次有給休暇の取得義務化」ばかりに注目が集まっているが、そもそも働き方改革とはなんだったのであろうか。

堅苦しいかも知れないが、厚生労働省が公表している働き方改革の目的を、ここで再確認しておこう。

◎働き方改革の目指すもの

 我が国は、「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」「育児や介護との両立など、働く方のニーズの多様化」などの状況に直面しています。(中略)

「働き方改革」は、この課題の解決のため、働く方の置かれた個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現し、働く方一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすることを目指しています。

出典:厚生労働省ホームページ「働き方改革」の実現に向けて

厚生労働省の「働き方改革の目指すもの」と、店舗ビジネスの特徴を比較してみる。
(1)働く方の置かれた個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会
⇒お客様もP/Aも、ほとんどが近くに居住しているおり「社会の在り方」に意識を向ける必要がある

(2)育児や介護との両立など、働く方のニーズの多様化
⇒時間や体力に制約があるP/A(女性や高齢者)に頼らざるを得ない

(3)少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少
⇒体力のある学生アルバイトの争奪戦。一方、デジタルネイティブ世代のP/Aは思いもよらぬSNS投稿を行ったりする「バイトテロ」のリスクも

小回りの利く店舗ビジネスだからこそ、必要な取り組み

このように店舗ビジネスは、社会の動きの最先端の影響を受けておりこの問題を解決していくことは、すなわち店舗の力を強くすることに繋がる。つまり、働き方改革を「労働時間の上限規制」や「年次有給休暇の取得義務化」の法規制の部分ばかりに着目するのではなく、その目指すものを正しく理解して、店舗ビジネスにおけるマネジメント力の向上の取り組むことが、ますます求められるであろう。

まとめ

この「労務管理入門」はタイトルを「店舗経営とは、人で成功し、人で失敗する。激動の労働市場や法規に対応し勝ち抜くための労務管理」としている。

店舗ビジネスの特徴を本質的に理解し、激動の労働市場に対応するためには、働き方改革に考え方に則った多様な働き方を選択できる店舗となる必要がある。つまり、店舗運営と経営力(マネジメント力)を高めることが店舗ビジネスを勝ち抜くために必要であり、労務管理の視点から連載していく。ご期待ください。

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