ディズニー流経営の極意 6.「ウォルト・ディズニー創業の想い」を100年間承継し続けているワケ

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果たしてマニュアルを読んで、その通りにできるような『魔法のようなマニュアル』なんてあるんでしょうか?大切なことは、先輩が見本となり新人を引っ張って、ディズニーの満たす基準まで引き上げること

マニュアルで教えるのではなく段階的に成長機会を与え、先輩が見本となって新人を引き上げ、あえて答えを教えない人財教育

新人がオリエンテーションを経て「現場に出てOJTを受けられる資格」

導入教育であるオリエンテーションを受講した後に、新人キャスト(以下、新人スタッフ)はそれぞれの部署での専門となるトレーニングを3時間ぐらい受けます。

商品部であれば金銭の取り扱いについてだったり、食堂部では食品衛生についてだったり、僕は運営部(アトラクション)だったので話し方、言葉(敬語・謙譲語・尊敬語・丁寧語など)について学びました。

この部署ごとで行うトレーニングをディビジョントレーニングと言い、各現場の業務に最低限必要な知識を事前に教わる事前教育を受けるのです。

これを受講した後、各現場でのOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)に進むことができるのです。

◆ディヴィジョン* とは:Division[英]。divideの名詞形で、語意は師団、分割、境界、区域などで、企業や団体に関する場合は部、局、課などの「部門」の意味で用いられる。

◆OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)*とは:詳細は「店長マニュアル 2.業務知識 (6)トレーニング」を参照してください。

早期離職を予防し、お客様満足度向上ができる人の即戦力化「ディズニーランドのOJTが他と違うこと」

特徴的なのはOJTの実践方法なのですが、当日の従業員の頭数に入れずに、先輩トレーナーとマンツーマンで新人スタッフのトレーニング*を早番・中番・遅番と3日間のスケジュールでトレーニングを行い、全体の流れを習得します。

そして、特徴的で重要なことは、仕事をしながらの「ながらトレーニング」ではない点です。

しかしながら、多くのお店や組織でよくあるケースは、とりあえずお店のオープン前に先輩がついてやるべき事を教え、お店の開店と同時に先輩と一緒にシフト(頭数)に入れて一人工として考えているので、トレーニングは「ながらトレーニング」になっていることが実態です。

当然、お客様を優先しますからお店が忙しくなればなるほどトレーニングどころではなくなり、新人スタッフは置き去りにされしまってポツんと立ちつくしてしまいます。

「えー、でもそれって売上に関係無い人件費が2倍でしょ。それはディズニーだからできることで、そんなことうちみたいな中小企業にはとても真似できないよ」とよく耳にすることがあります。

でも、頭数に入れてのトレーニングをすることのデメリットは、

・新人教育の実験台にしている印象をお客様に与えてしまう
・スムーズな対応ができずお客様に迷惑をお掛けしてしまう
・新人スタッフは、いきなりの接客や作業で極度に緊張し、緊張に耐えられなかったり、トレーニングの効果が薄れてしまったりしてしまう
・忙しくなって放置されることで新人スタッフは不安になってしまう

そして、マンツーマントレーニングではなく、複数の先輩たちが都度教えるやり方だと、人によって教える内容や言っていることが違ったりすることで新人スタッフは混乱し、モチベーションは下がり、成長スピードも遅くなり最悪、退職してしまうこともあるのです。

このような背景からディズニーランドではその日の運営の頭数には入れずに教えるトレーナーと新人がマンツーマンのトレーニングをプログラムにそって行います。

例えば、アトラクションのチケットポジションにはその日のキャストが入っていて、新人スタッフはトレーナーと一緒にバックステージでチケットポジションを練習して、その後実際のポジションを借りてやってみる。しばらくやってまたバックステージに戻って来て、フィードバック*をして修正し、また表に出てやってみるの繰り返しを行うのです。

そして重要なことは、一見当日の頭数に入れない新人とトレーナーは売り上げを上げずに給料だけ支払うのは無駄以上と思われがちなのですが、先ほども話した通り、人は2週間で環境に慣れてしまいます。

チャンスは入社時後の2週間しかありません。このチャンスに大切な事を伝える方が、のちのちのこと考えると回収が十二分に可能な人財を即戦化するわけです。

さらに、お客様満足度に与える影響や新人スタッフの早期退職は、お店にとっては計り知れないダメージでこの損失はとても大きいため、必要で即回収可能な先行投資でもあるのです。

◆マンツーマントレーニング*とは:英語では「One-On-One Training」と呼び、トレーニー(教わる人)一人に対し、トレーナー(教える人)が一人ついて、目的やトレーニーに合ったトレーニングとサポートの実施によって、教わる人の習得度を短期間に向上させると共に、教える人のレベルアップを同時に図る効果なトレーニング方法のこと。教わる人にとっては、質問もしやすく、人によって教える内容や言うことが違うといった退職要因を無くす効果もある。別称、Buddy Training(バディ・トレーニング)とも呼んでいる。Buddyは兄弟や相棒の意。

(詳細)トレーニング:参照先「店長マニュアル 5.業務知識 (6)トレーニング」

◆フィードバック*とは:feedback(英語)。トレーニングでは「相手の言動に対して改善点や評価を伝え、軌道修正を促す」意で、人間関係におけるコミュニケーションでは「自分から相手へのメッセージ(プライマリーメッセージ)に対する相互の反応」の意。

詳細は、PB(ピープル・ビジネス)理論 第4章 人間関係論にて公開予定です。

果たしてマニュアルを読んで、その通りにできるような『魔法のようなマニュアル』なんてあるんでしょうか?

ディズニー流トレーナーの教え方「マニュアルは新人には見せない」

トレーナーがトレーニーに教える方法の特徴は3つあります。

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