1.経営理念の基軸
理念経営とは経営の憲法に当たる経営理念に基づいて経営すること
一般に経営理念は
①社会貢献
②顧客貢献
③社員貢献
の3つを軸として経営者独自の人生の信念で「自分はこのために死ねる」という信念を言葉にしたものです。
人間は自らが何かの役に立ち、貢献できることで力がわくようにできていますので、突き詰めて考えると各社似たり寄ったりになりますが、大事なのは経営者が自らの経験を通して「心からこうだ!」と心から確信していることが重要です。
これを称して松下幸之助さんは「経営成功の最短距離」という講演で「経営成功の最短距離は、経営者が“自分はこの考え方で経営する”という人生の目的に当たる経営理念を確立してそれで経営することです。」と言っておられます。
経営の神様の松下幸之助さんと稲盛和夫さんとの関係は、京セラの創業時、松下幸之助さん率いる松下グループの協力工場からスタートし、セラミックを買ってもらっていました。
その中『京セラフィロソフィー』誕生の裏に、松下幸之助さんとの値下げ要求のエピソードがあります。
それを稲盛さんは「下請けいじめは愛のムチ」とおっしゃられ、下請けの多くは「大企業に値切られ、生き血を吸われると発想した経営者は自滅していきました。逆に、私のように『下請けいじめは愛のムチ』と発想してその困難に敢然と立ち向かったところだけが生き残ったわけ」とおっしゃられたと共に、「京セラが今日、世界の電子部品メーカーとして力を蓄えられたのは、松下さんのあの厳しい購買姿勢に鍛えられたからです」と感謝されていました。
そこで、ここでは松下幸之助さんの考え方を交えた理念経営の実践方法をご説明します。
2.経営者が自らの人生の目的に当たる経営理念を確信すること
どんな時でも、皆が「ぶれない」ための心の指針であること
実はこれが一番大事なことです。
なぜなら全責任を負う経営者が「このために自分は生まれてきたし、このために死ねる」という代物が経営理念ですので、その確立で絶対にブレ無い芯が経営に通せるようになるからです。
それではこれはどのようにして確立できるかを3つの例でご説明します。
まず松下幸之助さんはいわば啓示のように自分の人生での苦難が全て繋がったものとして『水道哲学』という哲学の啓示を受けて「このために死ねる」と確信されました。
次に稲盛さんは社員からいわば暴動とも言えるつるし上げを受けてその沈着のために心を割った話し合いを3日3晩続け、その中で「経営とは社員の幸せを追求することだ」と確信されました。
さらに最近流行した「テイール組織」の著者であるフレデリック・ラルーさんは経営理念に当たるものを「事業目的」としてそれは経営者が天からの啓示として受けたものである事が大事だとしています。
いずれも絶対にブレ無いものである事が共通点です。
3.経営理念を社員と共有すること
最も大事な経営者の経営理念の確信が得られたら、次は社員と共有すること
松下幸之助さんは「経営理念を経営者が唯一人確信すれば経営は50%成功する、そして社員と共有できれば成功確率は30%高まる。戦略やシステムなどその他の要因は経営成功にとって20%でしかない」と言っています。