いきなりステーキの新業態“お一人様、野菜なし”すき焼き専門「すきはな」が新規開店早々、SNS炎上の真相

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【この記事の概要】
 いきなり!ステーキを運営するペッパーフードサービスの新業態 “お一人様、野菜なし”すき焼き専門店「すきはな」が、なぜ新規開店早々にSNS炎上したのか?
 ペッパーフードサービスが立ち上げた新業態、お一人様すき焼き「すきはな」がグランドオープンして間もなくSNSで炎上しました。なぜ「すきはな」が炎上をしたのでしょうか。本記事では、「すきはな」のコンセプト、特徴やビジネスモデルから顧客ニーズや競合他社に着目して、今回の炎上内容と実態からその真相を探ります。そもそも「すき焼き」ってどんな料理でしたか…?

この記事の目次

ペッパーフードサービスが提案する斬新なお一人様すき焼き「すきはな」

一号店グランドオープン後、すぐにSNSで話題に

 ペッパーフードサービスが新たなビジネス展開のため新業態「すきはな」という斬新なお一人様すき焼き専門店をオープンしました。

今までのグループ店舗とは一線を画す、新業態を取り入れたこの新ブランドで、本来ならば大人数で鍋をつつく鍋料理「すき焼き」を一人でも堪能でき、高品質なすき焼きを提供しています。

一号店グランドオープン後に「すきはな」はすぐにSNSで話題となり、多くの利用客で賑わいを見せています。

「すきはな」のコンセプトと特徴

 「すきはな」のこだわりは“旨い肉、 旨い米、 シンプルな割り下。 それらの旨味を包み込む新鮮な卵。肉の味に集中していただくために、あえて野菜は入れません”としています。

そのため、肉、野菜、卵を使った従来のすき焼きとは異なり、野菜を入れずに肉の旨味に焦点を当て、割り下、ご飯や卵も厳選された素材が使われているのが店の特徴です。

また、他店との大きな違いは、大勢で囲む鍋ではなく、一人用の膳で提供すること。これにより、従来のすき焼き店で感じられた「何人で行く」という敷居の高さを解消して、ビジネスマン、OL、単身者やインバウンド客らのターゲットがお一人様からグループ客まで自分の膳を楽しむことができます。

さらに、料理の提供は、専任スタッフが注文を受けてからカウンター席の目の前で肉を調理して盛り付けしてくれるので、五感でライブ感ある食のエンターテインメントを楽しめる提供方法を採用しています。

店舗立地は、ターゲット層の多い銀座に近い新橋で、銀座八丁目と新橋駅の動線上に出店しています。

「すきはな」のビジネスモデルと顧客ニーズ

「すきはな」のビジネスモデルと実態

 このライブ感ある食のエンターテインメントを楽しむために、一号店の店舗面積は約76㎡、座席はカウンター席のみの15席で、各席ごとに電磁調理器機と蓄熱に優れた「鉄鍋」を設置しています。

滞在時間は1組当り30分、客単価は税込2500~3500円を想定しているため短時間でサービスが提供できるようにレイアウトやオペレーションは効率化を図り、工夫がなされています。

営業時間 は11:00〜23:00、ラストオーダーは22:30の設定です。

この設定の実現性を見てみましょう。

お客様が着席した後、メニューを見る、注文、調理、盛り付け、商品の提供、食事をする、食後に一服する一連の行動があり、それぞれに時間がかかります。

30分の滞在時間を実現するためには、まずは提供をするまでの時間が重要なのですが、実態はスタッフが一鍋に付きっ切りで調理、盛り付けして提供をするため、提供に時間がかかっていてなかなか食事にありつけません。

ターゲットのビジネスマンが求めるのは、”サクッとランチ”をすることなので、提供時間が長いことは致命傷になります。

食べるまでの時間を短縮するためには、お客様自身がすき焼きを焼くか、スタッフ数を増やすかのどちらかしかありません。

また、日本人とインバウンド客は6:4の比率を想定しているため、日本食に慣れていないインバウンド客に日本食を説明しながら30分で食事を済ませることは難しいのではないでしょうか。

さらに、新橋という立地上でビジネスマンの利用も見込んでいることから、単時間で食事ができることに加え、ランチの予算はワンコインから1000円以下ではないでしょうか。

消費者ニーズと「すきはな」のこだわり

 「すきはな」のメニュー構成、価格設定や提供方法とお客様満足度などを見てみましょう。

牛丼チェーンで498円の牛丼や877円の牛すき鍋膳をカウンター席で食べることとは異なり、高品質の国産牛や和牛を専任スタッフが注文を受けて目の前で肉を焼き、割り下で味付けをして提供してくれます。

セットメニューの構成は、牛肉1枚(110グラム)、ご飯、生卵、味噌汁、お新香、卵かけご飯のお供、ミニソフトクリームでおかわりはご飯と味噌汁のみ一回まで。

価格設定は、牛すき焼きセットが1980円、2530円と3850円の三種。

滞在時間の設定は、先述の通り着席してから、食事後にミニソフトクリームを堪能し、お茶で締めて、席を離れるまでが30分。

店側がどんなに効率化をしたとしても、顧客が支払う金額と滞在時間を考えた時、滞在時間30分で想定客単価3000円前後でどれだけの価値、いわゆるコスパを感じ満足してもらえるかが、重要な要素です。

また、一般的に満腹感を感じるまでの時間は、食事を始めてから約15~20分と言われており、脳の「満腹中枢」が刺激されるまでにかかる時間を指しています。

ここで言う満足度とは、顧客が商品やサービスに支払う対価で価格に見合った品質や品数であり、それを満足と感じるために必要な時間も含まれます。

高品質の肉を堪能し、満足に必要な商品と品数、そして、満足を感じる時間は30分で足りるのでしょうか。

消費者の求めるコスパは他店での経験と比較し判断されるので、この食事体験を通じて、また来店したいと思ってもらえるような満足を与えることが重要になります。

◆コスパとは:コストパフォーマンス(cost performance[英])の略で、支払った費用に対する効果や満足度、つまり「費用対効果」を意味する言葉です。

期待していた利用客とのギャップが生んだSNS炎上

 消費者ニーズに対し「すきはな」のこだわりと実態が一致しているのでしょうか。

実際には「すきはな」のオープンと同時に、期待していた利用客は実態のギャップからSNSで次のような投稿をしました。

・想像していたすき焼きと違う
・すき焼き肉1枚とご飯で2千円
・お金持ちは高級店に、普通の人には高すぎる
・少ない牛肉の量
・焼いたら縮んでしまう肉
・高級イメージでセルフレジ
・牛丼チェーンのほうが豪華
・インバウンド向けファスト高級店

その結果、炎上しました。これも織り込み済みのこと…??

これら投稿からも顧客や消費者ニーズと「すきはな」のこだわりには大きなギャップがあることが分かります。

顧客は「すきはな」に期待をして店に行った結果、大きな不満を感じています。

具体的には、顧客や消費者の求める価格、商品、品質、品数、量、提供までの時間と食べる時間、サービスやホスピタリティ、店の清潔さ、雰囲気や居心地などの経験から得た総合的な満足度と支払った金額を比較した「費用対効果」のコスパが悪いと感じています。

そこで、このギャップを埋めるために「すきはな」のこだわりをターゲットのニーズに近づけていくか、あるいは、現在のこだわりを受け入れてくれる消費者をターゲットにするかなど、ターゲティングとこだわりの見直しなどが求められます。

「すき焼き」ってどんな料理?

 そもそもの大前提として、「すき焼き」と聞いて消費者が描くイメージとのギャップが大きいとも言えます。

ちなみに、農林水産省では「すき焼き」について以下のように解説しています。

すき焼きとは醤油、砂糖、酒をベースにした割り下に、牛肉にネギ、春菊、焼き豆腐などの具材を添えて共に煮た料理。現在、東京の老舗店では関東大震災後より熱した鍋に牛脂を入れて溶かし、牛肉を炒めてから残りの具材と調味料を入れて煮込む、関西と同様の調理法が主流となっている。

農林水産省「うちの郷土料理」すき焼き 東京都

商品力 商品 こだわり 商品力も重要 商品での差別化 売り方での差別化 店舗経営 生き残りの条件 ビジネスモデル 落とし穴  商品が売れない 赤字 すき焼き 国産和牛 肩ロース ペッパーフードサービス 一瀬健作 社長 はなすき

このような社会通念の中、「すきはな」がこだわる斬新な野菜なしすき焼きを世間に浸透させ、さらに定着させるには相応の時間と費用、そして、努力が必要になります。

このこだわりは店舗経営、ピープル・ビジネス成功のためにとても重要なことですが、逆に落とし穴にもなります。

それは、職人気質の商品へのこだわりと店舗経営の基本である「売り手の都合と買い手のニーズ」の違いを見極め、業種業態の確立、商品開発、マーケティングや出店戦略などのビジネスモデルを開発することが必要だからです。

つまり、どんなに優れた商品であっても売り方がなければ、その商品は売れないことを意味します。

「すきはな」運営会社のペッパーフードサービスの一瀬健作社長は、「当面は1店舗のみ営業し、将来的には30店舗ほど展開したい」としています。

消費者は店がオープンすると興味本位で一度は来店してくれますが、再来店はお客様満足度によって決まる店舗経営、ピープル・ビジネスの大原則の実践が求められます。

この炎上騒動を受け、多くのお客様から高い評価を受け、安定した客足を獲得するための改善によって多店舗展開の基盤を構築し、飲食業界を牽引してほしいと切に願います。

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