国内チェーンにおける店舗マネジメントシステムの成否を分けた要因
優先導入された主要システム
「トータル・マネジメント・システム」の導入・構築内容はチェーン店ごとに異なりました。特に、P/Aや正社員の賃金制度と人材開発システム「キャリアパスプラン」、人件費の変動費化「ワークスケジュール」、店舗損益管理「P/Lコントロールシステム」などが優先的に導入され、少数の正社員と多数のP/Aによる店舗経営が一般化しました。
SV経営管理の落とし穴
各店舗の経営管理はSVが担うようになったものの、このSVの経営管理のあり方が企業の成否を分ける結果となりました。多くの企業が中央集権型経営を採用しつつも、顧客満足度測定、人材開発、労務管理、販売促進、損益管理といった運用を店長やSVに権限委譲しました。しかし、ここに大きな落とし穴がありました。
実際の権限委譲は名ばかりで、予算執行や人事評価、店舗会計・業務監査などには本社本部の稟議承認が必要なケースが多く、SVからの報告を受けた本社が承認や決裁を行う内部統制に留まっていました。この結果、対応の遅延、上司への説明や説得を目的とした業務の増加、納得できない人事評価などが横行し、現場の士気や顧客満足度が大きく低下し、人的問題を誘発しました。
機能不全が招いた負の連鎖
人的問題による退職者が増える一方で、採用は進まず人手不足に陥り、オペレーションは崩壊し、不安定な店舗運営がクレームを誘発。SVや店長はいつの間にか問題処理係となり、本来の業務ができなくなり、事態はさらに悪化しました。
主な要因は、経営権限(評価権、人事権、予算執行権)の委譲が不十分だったことです。店舗は「任せ放し」の状態で、業績悪化時には場当たり的な販促やコストカットで一時的にしのぐ対応が繰り返されました。これらは短期的には効果があるように見えても、長期的には大きな損失につながります。
このような場当たり的な対応を繰り返す要因の一つに店舗監査が機能していなかったことが挙げられます。店舗監査が機能しないと、売上低迷、モラル低下、問題の誘発、離職者数の増加、内部・外部不正の横行を招き、利益も現金も失われます。結果として現場は荒廃し、業績は悪化、リストラによる縮小均衡に陥り、経営危機を招いてきました。つまり、企業にとって最も恐ろしいのは、内側から壊れていくことなのです。
景気に左右された利益確保対策の逆効果と店舗監査の必要性
中央集権化への回帰とその影響
バブル崩壊やリーマンショックといった厳しい経営環境下で、多くの企業は利益確保のためにSV制度を廃止し、高給取りのSVを解雇して本社本部による中央集権型経営を推進しました。
その結果、店舗の人手不足対策として労働力確保を正社員に依存したため、社員は「店番」的な存在となり、大きく士気を低下させました。売上増大や利益獲得といった創造性や達成感のあるダイナミックな仕事ができなくなり、単純作業の繰り返しという業務内容になったことで、仕事の魅力が失われました。
キャリアパスプランの形骸化と人材流出
さらに、仕事内容と評価を給与に反映させるキャリアパスプランも形骸化し、努力の有無に関わらず評価も賃金も変わらないため、従業員満足度も大きく低下しました。
このような状況に加え、景気低迷や増税、社会保障費増大などから将来不安につながり、成長意欲のある有益な人材が他業種に流出するなどしてしまい、現在の厳しい状況に陥ってしまったとも言えます。
現代における店舗監査の不可欠性
現代のチェーン展開において、店舗監査は不可欠な要素です。かつては、店長やSVに大きな権限が委譲され、彼らが店舗経営の根幹を担い、多層的な監査体制と人事権の適切な行使により、人材育成、最適な人員配置を通じて現場を強化し、売上・利益の最大化を追求することで企業全体の成長を支えていました。
しかし、店舗監査が機能しなくなると、業績悪化、内部不正、離職者の増加といった問題が連鎖的に発生し、企業は危機に陥ります。店舗監査は、単なる監視ではなく、「人」の健全な成長と店舗、企業の持続的な発展を支える、極めて重要な経営管理システムなのです。
まとめ:本記事の要点と次回への展望
店舗監査は、店舗経営の健全性を保ち、企業の持続的な成長を支える上で不可欠な経営管理システムです。本記事では、過去の多店舗展開における店舗分権経営の成功と、監査機能不全が招いた危機的状況を振り返り、現代において店舗監査がいかに重要であるかを解説しました。
次回記事では、この店舗監査の必要性をさらに深掘りし、「店舗監査マニュアル 2.店舗監査の必要性|店舗経営の核心!売上と信頼を盤石にする監査戦略」について詳しく解説していきます。ぜひご覧ください。

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