店舗監査(会計と業務)のすすめ方 7.店舗運営水準(お客様満足度)の監査 実施項目と着眼点

店舗監査 お客様満足度の監査 商品の欠品 

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【この記事の概要】
 「会社の定めた基準の遵守と基本を徹底することが重要」
 と聞くと「機械的、マニュアル的な人財開発」をイメージされることがありますが、「正しいことを正しく行う」ための最低限のルールや基準のことを指します。店舗経営では、業務やルールが標準化されておりかつ単純・わかりやすさ・明快さが必要です。
店舗監査では、このような状況で働く人たちすべてが心を一つにして、声を掛け合いながら観察し合い、確認し合いながら業務を行っているかを確認します。粗探しではなく、決められたことを徹底して実践しているかが重要な視点なのです。

会社の定めた基準の遵守と基本を徹底することが重要

 と言うと「機械的、マニュアル的な人財開発」をイメージされることが多くあります。

しかしながら、決してそうではなく「正しいことを正しく行う」ための最低限のルールや基準のことを指します。

店舗経営(ピープル・ビジネス)の場合、業務やルールが標準化されておりかつ単純・わかりやすさ・明快さが必要です。それを一言で表すと「シンプル」といえるでしょう。

人間は自分勝手な存在であり誰もが自分の都合で考えますので、基本動作や考え方については店舗間のばらつきを極力抑えて同じように行われて同じような結果が出せることが求められます。

そのためには店舗で使う言葉などは誰もが同じ認識ができるように定義しなければなりませんし、オペレーションについては、誰もが同じようにできるように詳細に規定して疑問の余地を残さない工夫が必要です。

これは、人種、国籍、性別、学歴や年齢などなど、多様化した人たちの誰もが同じようにできるようにオペレーションを単純化(Simplification)、標準化(Standardization)、専門化(Specialization)の3S*で設計開発しています。

このような観点から本社本部で想定している想定と比較して各店舗でのオペレーションや結果がどうであるかを見ながら店舗水準を監査します。

ここではその際の視点としてチェックすべき項目とそれに関する着眼点(視点)をご説明します。

■3S*の詳細は「ピープル・ビジネス理論 2章 ビジネスモデル論 3 業態革新の探究と競合差別化の歴史」を参照してください

1.クレンリネス(清潔)と衛生

 店がきれいであるかどうかは売り上げに直結します。汚い店は人を寄せ付けないと店舗経営(ピープル・ビジネス)では定義しています。店舗イメージの源は清潔さや衛生さに表れます。

店舗環境はそこで働く人たちの心の状態を示していますので、仕事にやりがいを持ち、生き生きと働けている職場では5S*が徹底され、掃除が行き届き清潔で衛生的な環境が実現しています。

クレンリネス(清潔)と衛生の着眼点

(1)トイレ 清潔で衛生的か?用具や紙類は十分補充されて欠品が起こらない状態になっているか?

(2)従業員の身だしなみ 清潔で衛生的か?

(3)休憩室やバックヤード 5Sが徹底されており清潔で衛生的か?

(4)店舗外観 店外の雑草除去や植栽の手入れ、看板の状態、のぼり旗や懸垂幕など店舗外観イメージは良いか?清潔で衛生的か?

(5)店舗出入口 ドアガラス、入口マットや自動ドアの溝の汚れは手入れがされているか?清潔で衛生的か?

(6)店舗内 5Sが徹底されており、天井から床までが清潔で衛生的か?照明切れが無く、床に照明が鏡のように反射しているか?

(7)売場やレジ周り 5Sが徹底されており、清潔で衛生的か?

などを段階的に詳しくチェックしてください。

その理由は、例えトイレだけが衛生的で清潔に維持できていたとしても、業績が悪い店は、トイレが汚く、スッタフの身だしなみは乱れ、休憩室は汚れ、看板は色褪せし、照明の電球切れ、出入口が店内は汚く、植栽は枯れ、ポスターやPOPは破れ、そして、傘立は傘で溢れているなど、顕著な特徴であり、何れ『腐ったみかん*』のように腐敗が広まってしまいます。

そして、自分のことや身の回りのことに配慮や三配り(目配り、気配り、心配り)ができない人が他人であるお客様への配慮などまでできないからです。

段階的な5Sの徹底により清潔で衛生的であり、できれば見えないところまできれいになっているかを調べると従業員(パートアルバイト、社員)のクレンリネス(清潔)と衛生に対する意識の度合いが分かります。

『腐ったみかん*』とは:1980年代にTBSで放送されたドラマ「3年B組金八先生」で教師役の武田鉄矢が一人の不良少年がクラス全体に悪影響を与えることを表現した言葉で「箱の中のみかんが一つ腐ると他のみかんも腐ってしまう。だから腐ったみかんは早く取り除かなければならない」という名セリフ。『腐ったみかんの方程式』とも呼ばれている

5S*とは:「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「しつけ」の意で、それぞれのローマ字表記の頭文字のSをとった言葉

それぞれの意味は
「整理」とは :必要と不要を区別し、不要なものを捨てること
「整頓」とは : 置き場所を明確にし、使いやすく並べて表示すること
「清掃」とは : きれいに掃除をしながら、あわせて点検すること
「清潔」とは : きれいな状態を維持すること
「しつけ」とは : きれいに使うようにルールを守り習慣づけること

■5S*の詳細は、「中小企業向け補助金・支援ポータル ミラサポplus中小企業向け補助金・総合支援サイト」マンガでわかる「5S活動」を参照してください。

2.売場や客席の状態(仕入から販売まで)

 売場や客席の状態が乱れ、欠品があれば、当然ながらお客様への購買意欲を削ぐ要因となりチャンスロスのみにとどまらず再来店しないことに直結する重要な要因です。

そうならないために、小売店の場合、品出しや配列、棚割り通りの商品配置、消費期限管理、欠品の有無と在庫数、値引き処理などがルール通りに行われているか等を監査します。

ここで重要なのはいかに「基本に忠実にオペレーションが行われているか」です。先ずは正社員が基本をマスターして「決めたことを決めたとおりにやる」ことができているかがここでの重要な視点です。

基本が徹底しているかどうかを確かめるには、売場や客席の状態を見て問題が想定されたら、オペレーションを誰がどのようにやっており問題をどのように検出して、それをどのように解決しているかとった一連のプロセスを聞き出してどこに基本の崩れがあるかを見出しましょう。

基本を徹底するにはパート・アルバイトの全員に至るまで全員が無意識に基本通りの動きができるように、教育の徹底と周りの声掛けやアドバイスが重要になります。よい店舗は働く人たちすべてが心を一つにして声を掛け合いながら観察し合い確認し合いながら業務を行っています。

このプロセスを店舗経営(ピープル・ビジネス)では、問題の発見から本質原因究明*を段階的に検証できる仕組みと考え方がありトラブルシューティングと呼んでいます。

従業員同士の声掛けは、「○○お願いします」「○○ありがとう」といった声掛けを徹底しているので、この時点で依頼漏れやミスがあれば修正(是正)ができますし、職場環境に活気も生まれ、五感を使ったオペレーションの習得によって業務精度の向上にも繋がります。

さらに、商品の仕入からお客様への提供までを一連の流れとして捉えた『品質管理の4ステップ*』というシステムで、各工程の検証ができ、その工程の担当する各持ち場の担当者が作業基準と手順(工程)をダブルチェック、そして、次の工程担当者も同様にダブルチェックするようにオペレーションが標準化され、徹底し遵守されることで、ロス削減と生産性向上から従業員満足度に繋がり、結果、お客様満足度も向上すること念頭に置いた監査が必要です。

■本質原因究明*についての詳細は『ピープル・ビジネス理論 0章 概論 3.一見、複雑に見える事象のシンプルな捉え方』を参照してください

■『品質管理の4ステップ*』の詳細は『店長マニュアル 2.業務知識 (8)商品管理』を参照してください。

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