繁盛立地の紐解き 11.人口も交通量も平均以下なのに、倍の売上をもたらす立地と商圏

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【この記事の概要】
 農地の中の交差点で、周辺人口も少ない。交通量もさほど多くない立地条件でも、他より倍売れる本当の理由
 まだコンビニエンスストアが、郊外で手当たり次第に出店していた1980年代の頃のお話しです。交差点なら、交通量も多いから立地が良いと言えるから、どんどん出していこうとしていた時代。しかしながら、うまく行かないケースが多いということに気づき始め一年もの調査の結果、人口も交通量も平均より少ない立地条件なのに、他店より倍も売れるすごい立地条件が解明されました。その立地条件、商圏特性と店舗開発の基準について解説します。

この記事の目次

不思議なほどの大繁盛をもたらす立地条件と商圏特性

人口も交通量も平均より少ないのに、他より倍売れるコンビニエンスストア

 これはまだコンビニエンスストアが、郊外で手当たり次第に出店していた1980年代の頃のお話しです。

それは、交差点なら、交通量も多いから立地が良いと言えるから、どんどん出していこうとしていた時代です。

しかし、その交差点にあってもうまく行くケースと、うまく行かないケースがあり、後者のうまく行かないケースが多いということに気づき始めたのです。

その中で、とても不思議なコンビニエンスストアがありました。日販で30~40万円がふつうと言われた中で約二倍、60万円も稼ぐ店があったのです。

図0をご覧ください。左側がグーグルマップ(2024年)、右側がゼンリン地図(2010年)です。

図0 1980年代に発見された他店より2倍売れるコンビニエンスストアの立地

真ん中の交差点の角地に店があります。そして、コンビニエンスストアの主要な商圏とされる半径300mの円を赤で描いてあります。

さて、ここで質問です。

この赤い円の内側、主要な商圏である店の周囲を見て何か気が付きませんか?



はい。そう、その通りです!

当時も今も店の周囲にはほとんど家がありません。それどころか、あちこち農地です。

農地の中の交差点で、周辺人口も少ない。交通量もびっくりするほどは多くなかった。でも、売れているのです。

人口も交通量も平均より大きく下回っているのに売れている店

店の周囲にはほとんど家が無く、あちこちに農地と立地条件は悪いのに売れるワケ

なぜ売れているのか?

この店の不思議を解き明かす必要がありました。

そうしないことには、店舗開発の基準がすべてだめになってしまうからです。

店舗開発における高いリスクは、”少ない人口、少ない交通量であっても繁盛できるのだということを基準にしてしまうこと”です。

ですから、何としてもこの店の繁盛している本当の原因を探し出す必要がありました。

なんとこの解明には、一年もの期間がかかりました。

解明されたすごい立地条件・店舗開発の基準

 立地条件、商圏特性の要因であるPC(Potential Cluster[英]ピーシー)という概念があります。これは、「需要集合体」と言う意味です。文字通り、需要が集まっている地域のことです。

そして、きちんとした定義が以下のようにあります。

立地条件、商圏特性:PC(ポテンシャルクラスター・需要集合体)の定義
 ① その地域に人々が密集している
 ② その地域が自然の地形や大きな施設などによって囲まれていること
 ③ その地域に出入りできる場所が、1カ所~数カ所に限られている
この三つの条件があてはまるような地域をPCと呼んでいます。

この立地条件、商圏特性:PC(ポテンシャルクラスター・需要集合体)のイメージが図1になります。

図1 PC(ポテンシャルクラスター・需要集合体)のイメージ図

このPC(Potential Cluster[英]ピーシー)は、立地調査、立地判定や売上予測に長年携わり、研究してきた筆者が作った立地用の造語や概念です。

このように人口も交通量も平均より少ない立地条件で、他店より倍も売れるすごい立地条件、商圏特性とは、PC(ポテンシャルクラスター・需要集合体)があり、良い影響を受けたこと、と言えます。

繁盛をもたらす商圏特性要因『PC(ポテンシャルクラスター・需要集合体)』が意味する長所と短所

PCには繁盛をもたらす長所もありますが、その逆を読むことも重要

 そして、PC(ポテンシャルクラスター・需要集合体)定義の三条件があることによって、結果的に、この地域の人達の日常的な行動がよく似てくることが知られています。

それは、人々が密集しているということはそれだけ需要が多いことを意味しています

ポイントはその次です。

この人たちの行動が、自然の地形や大きな施設などに囲まれることによって制限されているということです。東西南北どこにでも向かうことができるという地域ではないということです。

例えば、北に向かうと丘や山になってしまうから行けない、川があって行けない、崖があって行けない、海になっていて行けないというような具合です。

また、大きな工場があるとか、飛行場があるというような場合も同じです。こういう行けない場所、バリアのような場所は実はあちこちにあります。

しかし、それが、あっちにもこっちにも行けない。東西南北のうち、東側だけには行けるが、西側も南側も北側も行けないというような地域だったらどうでしょう?そういう地域があまり多くはありません。

この珍しい地域のことをPC(ポテンシャルクラスター・需要集合体)と呼んでいるのです。

バリアとは:barrier[英]壁、障壁、[侵入を妨ぐための]柵、フェンス、妨げとなるものや防壁の意。ここでは、商圏を分断する要素を意味しています。

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