マニュアル作成のコツと活用のポイント 4.マニュアル作成の注意ポイント|不完全なマニュアルは問題を誘発。現場に表れるその兆候

いつの間にか基準が変わっていたり、人の数だけルールが存在していませんか?マニュアルが機能していないと店にはよくない兆候や問題が表面化します。そのような状況を打開するためマニュアルを改訂するも一向に問題は解決せず、さらなる問題を誘発させます

【この記事の概要】
 「人の数だけルールが存在したり、いつの間にか基準が変わっていませんか?」
 マニュアル化のプロセスや運用方法が機能していれば、常に実務的なマニュアルが現場で活用されるはずです。逆に、マニュアルが機能していないと店にはよくない兆候や問題が表面化します。そのような状況を打開するためマニュアルを改訂するも一向に問題は解決せず、さらなる問題を誘発させます。なぜなら、問題の本質は、マニュアルにあるのではなく、運用方法にあるからです。ここではこのような状況を改善する方法を解説します。

この記事の目次

不完全なマニュアルは問題を誘発。現場に表れるその兆候

いつの間にか基準が変わっていたり、人の数だけルールが存在していませんか?

 マニュアル化のプロセスや運用方法が機能していれば、常に実務的なマニュアルで、現場で活用されるはずです。

逆に、マニュアルが機能をしていない場合、次のようなよくない兆候や問題が店舗に現れます。

  • 口頭だけでのコミュニケーションやトレーニングによるずれ
  • 各個人メモ依存による認識のずれ
  • 問題発生時に当事者間でルールを決めてしまう
  • ミスや失敗、問題の発生に慣れてしまう

それでは、これらを具体的に説明します。

口頭だけでのコミュニケーションやトレーニングによるずれ

 教わったことをただ聞くだけで、マニュアルや会社支給のメモ帳などに記録をしないので、基準や作業手順、業務を他の人に教える際に、言っていることが徐々に変わってずれてしまう。いわゆる伝言ゲーム状態で認識や理解のずれが生じます。

この状態が慢性化すると、業務の標準化が困難になり、品質のばらつきや非効率な作業につながります。

また、コミュニケーションについても同様で「言った。言わない」、「誰が正しい。正しくない」などと論点がすり替わってしまうため問題が解決できないのです。

記録に基づいた確認ができないため、責任の所在も曖昧になり、同じような誤解やトラブルが再発するリスクを高めます。

各個人メモ依存による認識のずれ

 トレーニングや指示などの内容を各個人にメモをさせるも、その内容をフォローしないため、それぞれの解釈でメモの内容が異なるため、徐々に認識などがずれてしまいます。

新人や新入社員に必ずといっていいほど、ノートやメモ帳を持参させ、そこに教わったことや指示をメモさせます。しかし、そのメモ帳は個人所有のため退社時に持って帰ってしまいます。

そのため、会社側が教えた重要なノウハウは、社内に残らず、次の新入社員にはまたゼロから教えなければならないという事態が繰り返されます。このゼロからという繰り返しでは、一向にトレーニングの質も生産性も上がりません。

本来ならば、会社のトレーニングツールに教わったことを記入し、会社の手帳に指示などをメモすれば、それらは退職しても会社に残ります。さらに、トレーニングツールや会社の手帳は、定期的、抜き打ちで店長やスーパーバイザーがチェックし、トレーニング内容と進捗状況を把握することが重要です。

これは、何を、どのように教わって、どう解釈しているかを把握し、適切なトレーニングが実施されているか、適正評価がされて適材適所がなされているかなどを判断する上で欠かせません。

その内容は必要に応じて会社に吸い上げて標準化を図ることも重要で、マニュアルやトレーニングプログラムへの反映を通して、トレーニングの質の向上によってノウハウが蓄積されるのです。

問題発生時に当事者間でルールを決めてしまう

 問題発生時によくありがちなことは、責任感や自己防衛本能から当事者間で解決しようとルールや基準を勝手に定めたりするなど、その場をしのぎの対応で責任者への報連相、確認や承認を得ないで独自ルールを決めたり、基準を変えてしまうことです。

これは、組織運営の統一性を阻害し、一貫性のない対応を生む原因となります。やがてこの対応が日常的となって、いつの間にか、店長が知らない基準やルールが現場にあふれてしまうのです。

現場で良かれと思い対応した結果、独自ルールができたり、基準が変わってしまうことで業務の属人化が進み、不正やミスの温床になりかねないのです。

ミスや失敗、問題の発生に慣れてしまう

 ミスや失敗の対処に追われ、問題処理をして終わりとの認識や表面的な再発防止策では、本質的な改善がなされないため、同じような問題が繰り返されます。

このようなことの繰り返しから、内容は少しずつずれていき、いつの間にか基準が変わっていたり、人の数だけルールが存在することになります。結果、管理職は問題処理係として奔走するも一向に問題は減らないため、常に忙しい状態にあるので、ひいてはその状況、ミスや問題が日常的に発生することに慣れてしまうのです。

このような問題処理と表面的な再発防止策では、事態は悪化し、やがて、大きな問題になって表面化します。そこで始めて根本を見直すという、後手後手の対応になります。

ピープルビジネスでは、このような状況を「Fire fighting(消火活動)」と呼んで、問題処理に追われることをさしています。安定経営のためには「Fire protection(防火活動)、つまり問題の再発防止と予防ができるようにマニュアルを作成する必要があります。

そのためには、表面的な対処ではなく、根本原因を特定し、再発防止策を徹底することが不可欠です。

多発する問題と不完全なマニュアルの対処方法

 同じ問題が繰り返されたり、問題が多発した場合、よくマニュアルを改訂する場合がありますが、マニュアルの改訂では問題は解決しません。問題の本質は、マニュアルそのものにあるのではなく、運用方法にあるからです。

そのために必要なことは、標準化、生産性向上、問題の再発防止やオペレーションの精度向上のため、日々の業務において、店舗運営マニュアルの原型となる機会やツールに気を配り、情報を吸い上げ、運用方法を見直すことが必要になります。

「マニュアルの原型」を作成できることが店長の条件

 店舗経営において、標準化、生産性向上、問題の再発防止やオペレーションの精度向上をさせることが店長とスーパーバイザーの重要な役割です。

店長には、店舗運営に不可欠な「マニュアルの原型」を作成する能力が求められます。なぜなら、マニュアルの作成や改善ができない場合、事実を客観的に捉え、それを書面に落とし込むというマネジメントの基本ができていないと判断され、店長への昇格は困難になります。

このように現場で実施されている内容をマニュアル化できることが大原則であり、理論的な内容にならないようすること、つまり、実務に沿ったマニュアルの作成ができることが店長に求められるマニュアル作成のレベルなのです。

(詳細)「マニュアルの原型」参照先:「マニュアル作成のコツと活用方法 3.実務的なマニュアルの作り方」

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