佐藤勝人の実践的リーダーシップ論 17.部下に任せて、結果を出すことは難しくない。【後編】「任せる」と「丸投げ」の違い

佐藤勝人 実践的リーダーシップ コミュニケーション サトカメ 勝人塾 商業経営コンサルタント 部下に任せて、結果を出すことは難しくない。リーダーとしての感情コントロール術|「任せる」と「丸投げ」の違い。なぜ部下に任せられない?

【この記事で分かること】
 なぜ部下に任せられない?感情を制し、部下の信頼を勝ち取る方法。
 現代のリーダーシップには、単なる指示命令ではなく、部下との対話、共感、信頼が不可欠です。部下を自律的に動かす「任せるリーダーシップ」を発揮するためには、自身の感情コントロール力が鍵となり、その感情と向き合う訓練を積むことで、リーダーは部下との間に揺るぎない信頼を築き、組織を新たな高みへと導くことができます。感情を制する勇気が、現場を動かす最強のリーダーへと成長させるのです。

この記事の目次

感情を制したリーダーが拓く「現場力」

 前編(第16回)では、リーダーシップを阻む最大の要因が「感情」であること、そしてその感情をコントロールすることが、部下を自律的に動かすための究極の要であることを解説しました。リーダー自身の感情を制する「人間力」を磨くことが、いかに重要であるかをご理解いただけたかと思います。

後編となる今回は、リーダーが感情をコントロールした先に何が待っているのか、なぜIT化が進む現代においても人間のリーダーが不可欠なのか、そして感情を制することでどのように「任せるリーダーシップ」が実現し、組織の「現場力」が最大化されるのかを深く掘り下げていきます。

「感情」が動かす現場:なぜ人間のリーダーが不可欠なのか

AIやシステムでは代替できない領域

「これだけIT化・システム化が進んでもなぜ現場に人間のリーダーが必要かというと、ケアしてほしいのは数値化されない部分だからなんだ。『各メンバーの感情を読み取って上手く現場を回してくれ。それはAI とかシステムじゃ無理だ。お前を頼るしかないんだ。頼むよ』ということなんだよ」。

 何を進めるにも結局はリーダー自身だったり部下一人ひとりだったりの感情が伴うわけで、「それで進捗が1.1倍速くなったり、事故が減ったり怪我が減ったりということが実際にある」。

私自身も2019年から「感情よりシステムをしっかり」という方向で自社の組織運営を考えてきましたが、コロナ禍を経験して、「やっぱり『最後は感情だ』という境地になっている」。

小売業や飲食業の店舗は現場ですが、店長の仕事の究極はシステムを規定通り回すことではありません。「現場の一人ひとりの感情をマネジメントすることだ。『現場は生き物』とはよく聞く言葉だが、私もその真意を痛感しています」。

リーダーが自身の感情をコントロールし、部下の感情を理解し、適切にマネジメントすることで、チーム全体の「現場力」が飛躍的に向上するのです。

感情をコントロールした先にある「任せるリーダーシップ」

 リーダーが自身の感情をコントロールできるようになれば、これまで阻害されていた「任せる勇気」が自然と湧いてきます。

失敗を恐れない度量と組織文化の醸成

「失敗例からヒントを探ろう」(第4回)で触れたように、失敗は成長の糧です。部下が失敗することを恐れて任せないのではなく、リーダーが感情的に責めることなく、なぜ失敗したのかを共に考え、次にどう活かすかを議論する「失敗を許容する組織文化」を醸成できます。

感情をコントロールできるリーダーは、部下の挑戦を奨励し、萎縮させることなく積極的に業務に取り組ませることができます。

真の「承認」と「信頼」の構築

 部下を「任せる」ことは、単に業務を割り振る「丸投げ」とは一線を画します。それは、部下の能力を信じ、成長の機会を与え、彼ら自身が仕事のオーナーシップを持つことを促す行為です。

リーダーが感情的にブレることなく、重要な仕事を任せることは、「君の能力を信頼している」「君に期待している」という無言のメッセージとなり、部下のモチベーションを飛躍的に高めます(第13回)。この行動で示す深い承認こそが、部下との間に強固な信頼関係を築く土台となります。

自律型組織への変革と「現場力」の最大化

 リーダーが感情をコントロールし、「任せる勇気」を持ち、適切な権限と責任を与え、そして失敗を恐れずに挑戦できる環境を提供すること。これこそが、部下を「指示待ち」から「自律型」へと変え、組織全体の潜在能力を最大限に引き出す道筋となります。

自律型組織は、変化の激しい現代において、極めて高い適応能力を発揮します。個々のメンバーが現場の状況を判断し、迅速に意思決定を行うことで、組織全体のスピードと生産性が向上します。

これは、第7回の「令和時代のリーダーシップで経営課題を解決する」で述べた、ビジネス、チーム、個人の各課題を解決するための強力な武器となるでしょう。リーダーが部下を信頼し、権限を委譲することで、部下は「自分たちの力で組織を動かしている」という強い当事者意識を持つようになります。このポジティブな循環こそが、持続的な成長を可能にする「強い組織」の源泉となるのです。

感情を制し、現場を動かす「最強のリーダー」へ

令和時代のリーダーシップは、もはやトップダウンの指示命令や、単なる能力・人間性だけでは務まりません。部下との対話、共感、そして何よりも「信頼」を基盤とした関係性が不可欠です。そして、その信頼を築き、「任せる勇気」を発揮するための究極の鍵は、リーダー自身の「感情のコントロール」にあります。

店長や店舗経営者の皆さん。目の前の部下を信じ、一歩踏み出して「任せる」ことから始めてみませんか。そのためには、まず自身の感情と向き合い、コントロールする訓練が必要です。

その勇気が、あなたの組織を、そしてあなた自身のリーダーシップを、新たな高みへと導くはずです。感情を制し、現場を動かす「最強のリーダー」として、店舗の未来を拓きましょう。

シェアお願いします
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
この記事の目次