ピープル・ビジネス理論 2章 ビジネスモデル論 3.業態革新の探究と競合差別化の歴史

マクドナルド アメリカ ミュージアム
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【本記事の概要】
 「今では当たり前の文化」 創業当時は「当たり前ではなかった」 失敗と試行錯誤 あくなき挑戦
 店舗経営、ピープル・ビジネスでは「商品」ではなく「売り方」での差別化、つまり「業態革新」の重要性を説明しています。そもそも、コンビニエンスストア、リユースやデリバリーなどの業態はありませんでした。時代とともに変化する消費者ニーズとともに業態は進化してきたのです。「今では当たり前」として根付いている文化も、創業当時は「当たり前ではなかった」のです。その背景にある失敗と試行錯誤の繰り返しとあくなき挑戦について解説します。

この記事の目次

「業態革新」の重要性

 これまで店舗経営(ピープル・ビジネス)では「商品」ではなく「売り方」での差別化、つまり「業態革新」の重要性を以下で解説してきました。

「今では当たり前」として根付いている文化も、創業当時は「当たり前ではなかった」のです。失敗と試行錯誤の繰り返しとあくなき挑戦の結果で「大手チェーンだからできた」のではないことなのです。

そもそも、

・コンビニエンスストア
・リユース
・デリバリー

などの業態はありませんでした。

時代とともに変化する消費者ニーズとともに業態は進化してきました。

「業態革新」の事例

セブンイレブン:酒屋店などの小売商店からコンビニエンスストアに

 日本国内展開は酒屋店などの小売商店を中心に、

  • 長時間営業
  • 年中無休
  • 豊富な品揃え
  • フレンドリーサービス
  • 明るく清潔感のある店内外

としてコンビニエンスストアが始まり、現在では地域のインフラ的存在としてATM、公共料金の支払い、チケット購入や住民票の発行などまで様々なサービスが加わって発展を続けています。

ブックオフ:古本屋を新古本書店、総合リユースに

 古い、かび臭い、暗くて入りにくかった古本屋から新刊書店のような店づくり。キャッチフレーズは「本を買います」から「本をお売りください」に変更しました。

そして、やまびこ式の挨拶、目利きと経験が必要だった買取り、古本を磨き上げる商品化、商品回転率アップなどをパートアルバイトでできるように、3S*化などで進化させました。

創業当時、紙やすりを使った手作業で古本を磨き上げていたため作業時間も労力も掛かり、スッタフの手の皮が剥けてしまうなど大変な作業が機械化され、書籍バーコード導入による単品管理や本以外の買い回り品や専門品を取扱う総合リユースに発展しました。

◆「3S*」とは:チェーン化やマニュアル化に必要な下記要素頭文字を取ったもの
・単純化(Simplification)
・標準化(Standardization)
・専門化(Specialization)

ドミノ・ピザ:出前からデリバリーへ

 うどん、そば、ラーメンやすし屋の出前は日本の文化として、店が忙しい昼食時や休日に注文してから商品が届くまでに相応な時間が掛かる。店の都合に顧客が合わせて注文する文化として昭和時代に発展して定着しました。

その時代に「焼き立て、とろけるチーズの熱々ピザ」を「注文からお届けまで30分の約束*」「30分を過ぎたら700円引き(米国では50セント)」のキャッチコピーで顧客と「時間と品質の約束」を訴求し国内で展開を開始しました。

その当時、「30分の出前?まさか無理でしょ」と疑って、面白半分に700円引きを狙って注文して、逆の意味で期待を裏切られ、ドミノファンが増えていきました。

このようにお客様に配達の時間と品質の約束をして、商品の写真入りメニューチラシが定期的にポスティングや折込で配布されるデリバリー文化が今日の私たちの生活に根付いています。

◆「30分の約束*」:30分の約束を守るために配達を急いで重大な交通事故発生による社会問題から日本でも700円引きを廃止し、経営理念の一つである安全を最優先しましたが迅速なデリバリーには変わりはありません。

ドミノ・ピザの経営理念「S.S.P.I.P.」

  • S(Safety):安全なオペレーションと安全運転
  • S(Service):30分内のデリバリー、親身なサービス
  • P(Product):高品質の商品、熱々のピザ
  • I(Image):清潔なイメージ、身だしなみ
  • P(Pride):ドミノマンとしての誇り、プライド

商品での差別化ではなく、売り方による差別化の進化

 このように商品での差別化ではなく、売り方の差別化を時代とともに進化をさせています。

生活必需品、最寄品などの身近な商品の販売、提供方法の「業態革新」の徹底や店舗イメージなどの改善の結果、生まれた業態。すべてはお客様との約束実現のため、失敗や試行錯誤の繰り返しから業態を探究した結果と言えます。

グローバルチェーンに見る業態革新

ビジネスモデルで驚異の競合差別化・儲かる集客を実現

 競合と同じ事を、同じレベルで、同じように実施しても、勝ち目はありません。勝つために、現状を見直し、打破するために、何が必要かを考え、他とは敢えて違うことを実施することが店舗経営、ピープル・ビジネスにおける競合差別化戦略です。

その具体例を以下に紹介します。

マクドナルド ハンバーガー

 1955年4月15日オーブンのシカゴ1号店(米国創業者 レイ・A・クロック氏、日本国内創業者 藤田田氏)

単能工化と大量生産

 ハンバーガーの製造を分業担当制で、短期で素人をプロに育成。

オペレーションの効率化と高生産性

 これまで30分かかっていた商品の提供時間を20秒以内に。ハンバーガーの生産システムにフォードシステムを採用。トレーオペレーションで高生産性を実現。

スピーディー・サービス・システム

クイックサービス可能なシンプルなメニュー構成。

客単価アップ

 一品単価を上げるのではなく、購入点数を上げて客単価を上げる。 られるレストランとしての商品構成で前菜、メイン、デザートやドリンクまでの品揃えで、メニュー表やPOPが作成され、レジ担当者も提案販売がしやすいように”おすすめのルール”が決められている。

低価格の実現

オペレーションの3S化、紙コップやハンバーガーの包み紙など使い捨て容器の導入によって食器洗浄の無駄をなくし、初期投資やランニングコストを抑えるとともに人件費も削減。

顧客満足度向上

 不良のたまり場であった店を安心安全にし、清潔な店で出来立てで熱々のハンバーガーをクイックサービスでの提による口コミ拡大で新規顧客の獲得。

科学的立地判定と高精度売上予測

 勘と経験による立地判定や売上予測で出店の失敗もあったが、昭和後期、地域購買力など連動した独自の出店戦略システムMcGIS)を開発し、科学的立地判定と高精度売上予測を構築。

マクドナルド下北沢店 店舗への入りやすさ 建物間口、看板間口、そして出入間口がそろって狭い物件 売上が苦戦 隣のビルも借り、ビル同士をつなげ店舗への入りやすさを改善

(関連記事)繁盛立地の紐解き 6.好立地にも、なぜか、いつまで経っても売れない… 当時、入手できる最高の立地への出店に幹部の多くが、都内売上水準を大きく超える月商を予測し、達成を誰もが信じて疑わなかった。それに水を差し、社長ら皆をア然とさせた『出店調査部』の売上予測はその半分近くで大きく下回った…

1号店の記録

 1955年4月15日オーブンのシカゴ1号店のオープン初日売上は約194万円(366ドル12セント。1個15セントのハンバーガー約2,400個の販売を達成。物価から日本円に換算)と驚異的な記録。

ドミノ・ピザ

 1985年9月30日オーブンの国内恵比寿1号店(米国創業者 トム・モナハン氏、日本創業者 アーネスト・エム・比嘉氏)

マインドシェア向上

継続的なポスティング、ドミノジャイロ(3輪バイク)、営業感など。

明朗価格

 ピザの商品写真とサイズ別価格が明記され、ピザの美味しさが訴求されたメニューチラシ。創業当時は、写真の無い文字だけのチラシで分かりにくく、注文もしにくいメニューチラシだった。

配達時間の約束

 ピーク時間やどの時間帯でも30分でのお届けの約束。

品質の約束

 焼きたての熱々ピザ。創業当時、デリバリー時にピザの偏りによる変形をなくす特許品の独自六角形ピザBOXを採用。

スタッフの質

 世界№1チェーンのプライドを持った高質人財の確保と育成。

高生産性の実現

 注文、製造、ジェットオーブンのシステムキッチン。スタッフ工数削減と移動動線を最短にするレイアウトと設備稼働率の向上。

オペレーションシステム

 3Sと大量生産。

⑧ 人財開発

 昭和後期から平成、キャリアパスプランによる大胆な権限委譲と本部サポート体制で高質人財を育成。

科学的マーケティング

 昭和後期から平成、CRMとやCTI等と連動したGISマーケティングを開発構築。

⑩ 結果

 米国の創業当時、わずか500ドルで買収した個人ピザ店が創業から62年を経た米国ドミノピザ。年商41.17億ドル、時価総額159億ドルに及ぶ巨大企業になりました。

世界的ピザデリバリーチェーン店 ドミノピザ 宅配ピザ

(関連記事)ドミノ・ピザとスターバックスに学ぶグローバルビジネス 1.「出前からデリバリーへ」ドミノ・ピザとの出会い 1970年以降、マクドナルドやケンタッキーフライドチキン、デニーズなどの米国発のビジネスがどんどん日本に上陸し、グルメブームの中、米国最大で日本初のピザデリバリー「ドミノ・ピザ」一号店が1985年9月30日に東京・恵比寿にグランドオープン…

業態革新とビジネスモデルによる圧倒的な競争優位性の確立

コストリーダーシップ戦略:お手頃価格の実現と圧倒的な集客

顧客との約束:納期(提供時間)、品質やお客様満足度の約束

競合差別化戦略:選択と集中(圧倒的な集客をさばく製造、販売などのオペレーションと人財開発)

グローバルチェーンのビジネスモデルにおける共通点は、商品での差別化には限界がある。「売り方、すなわち業態と集客力・人財開発力で差別化」を実現していることです。

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