【この記事の概要】
「経営理念、行動指針と判断基準を支えるオペレーションシステムの重要性」
ドミノ・ピザはお客様に品質保証と納期厳守という二つの約束を掲げ、その約束を支えるドミノ・ピザの経営理念「SSPIP」、行動指針と判断基準がありオペレーションコントロールやオペレーション・コミュニケーションが構築されていることはこれまで解説した通りで、これらを実現する現場、店舗でのオペレーションが必要になります。そこで、今回は経営理念を実現するためのオペレーションの事例紹介と共に解説をします。
競合差別化戦略を実現したデリバリー・オペレーション
お客様との約束を守るための役割分担とオペレーション手順
日本初の宅配用三輪バイク「ドミノジャイロ」が納品され、店頭に整然と並ぶその光景は、まさに圧巻だったことは前記事で解説した通りだ。
その「ドミノジャイロ」を使って、実際のオペレーションの流れに合わせデリバリーのシミュレーショントレーニングが始まった。
デリバリー担当者は、ピザを調理している間、担当するピザの配達先の確認を行う。具体的には、調理しているピザと配達先情報が明記された受注シートと照合し、住宅地図を見て住所と最短ルートを確認する。
ちなみに、今ではスマホが普及して地図とナビも入っているが、当時は携帯電話もカーナビも高価であまり普及しておらず、デリバリーエリアの住宅地図を店舗内の壁に貼り付けて、見て確認をしていたのだ。
そして、ドリンクやサイドメニューも取り揃え、袋詰めをする。
その頃にピザが焼き上がってオープンから出てくる。まずはそのピザの焼き上がりなどの品質をチェックして、専用カッターでピザを均等にカット、その後、ピザボックスの蓋をする。
その後、再度、ピザ専用箱に貼られている受注シートとピザが正しいかを照合して、間違いがなければピザの保温バッグに入れ、ジャイロに積み込むのだ。
その際、床と水平に持って、丁寧に積み込まないと箱の中で出来立てで熱々のチーズがとろたピザが生地からズレてぐちゃぐちゃになってしまうので細心の注意も必要だった。
これが、ピザの注文が入り、デリバリーに出るまでのデリバリー担当のオペレーション手順だった。
『ドミノ・ピザとスターバックスに学ぶ 6.盤石の経営基盤「強い現場の作り方」』で解説した通り、30分以内のピザをお届けの約束を守るためには、注文が入ってから店を出発するまでのタイムリミットは20分のため、デリバリー担当者はピザが焼き上がるまでに、ルート確認、ドリンクやサイドメニューの取り揃え、ピザの品質チェック、カットと包装、検品と積込みの各工程を抜け漏れ無く、確実に実施することが求められる。
当時に、店舗コントローラーの時間帯責任者は、その仕事ぶりを観察、チェックするダブルチェック体制でミスを最低限にしていた。
安全運転と最短のルートで正確で迅速なデリバリー
「安全運転で行ってきます!」と店内スッタフに告げ、店を出発し、先に確認したお客さまの住所までに最短ルートで行って帰ってくる。
これを何回も繰り返してデリバリーエリア内の地名とルートを頭の中に入れていく。一見、単純作業の繰り返しに見えるが注意を「目配り。気配り。心配り」の三配りが求められた。
ドミノ・ピザでは当時、品質と30分以内でのお届け時間の約束を厳守するために、アルバイトであっても全てのオペレーションに容赦ない確認の徹底と正確さ、そして、スピードが求められていた。
そのため、体得するまでは大変だった。それも、一つひとつクリアする達成感とアメリカドミノ・ピザ本部から派遣されてきた指導官のJBが褒めてくれることから大きなやりがいになっていた。
颯爽と風を切って走るジャイロはとっても目立つ存在で三輪車なので運転も簡単そうに見える。
しかしながら、実際に運転してみるとルーフ(屋根)とピザボックスがついているせいで重く、安全な操作するには少々の慣れが必要だった。
特に雨の日のマンホールと横断歩道の白線は要注意で、前輪がよく滑る!何度もヒヤッとさせられた。
このヒヤッとした体験を先々、他のアルバイトに話すことでリスクある箇所の事前理解に活用し、ドミノ・ピザ経営理念の一つである「安全」を徹底していった。そして先々、交通事故防止のため危険個所の予知マニュアルを整備することになる。
このように全従業員はドミノ・ピザの経営理念「S.S.P..I.P」に基づいて行動し、認め、評価されて成長し準備万端(?)でオープニングの日を迎えることができたのだ。