【この記事で分かること】
ドミノ・ピザ、マクドナルドもブックオフも、すべては「できる理由の探究」から始まった。
店舗経営において多くの人が抱える「どうせ無理」というネガティブな思考を打破するための原則「思うは招く」について解説します。流通評論家・吉田貞雄さんの詩と、宇宙開発に挑んだ植松努さんの事例、ドミノ・ピザやマクドナルド、ブックオフの事例からも、できない理由を探すのではなく、できる方法を考えることの重要性を説き、読者が行動するきっかけを提供します。
あなたの心の声が、商売の未来を決めている
前回の記事「生涯職人、生涯商人」では、東京を代表するうなぎの銘店「野田岩」五代目、金本兼次郎さんの生き様から、一つの仕事に生涯を賭け、技と心を磨き続けることの重要性を学びました。老舗の暖簾を守りつつも、時代に合わせて進化し続けるその姿勢は、まさに私たち店舗経営者にとっての羅針盤です。
しかし、そうした志を胸に抱き、日々奮闘する中で、誰もが一度は直面する壁があります。それは、自分自身の心の声、あるいは周囲からの声に耳を傾けたときに聞こえてくる「どうせ無理だ」という言葉です。
新しい企画を立てても「きっとうまくいかない」、売上が伸び悩むと「やはりダメだ」と、いつしかネガティブな思考に支配されてしまう。そんな経験はありませんか?しかし、成功する経営者とそうでない経営者の決定的な違いは、この「どうせ無理」という心の壁を乗り越えられるかどうかです。
今回は、強い「思い」が成功を引き寄せるという原理原則「思うは招く」をテーマに、ネガティブな思考を打ち破り、チームと店舗の未来を切り拓く方法を、具体的な事例を交えながら解説していきます。
夢は巡る。「思うは招く」を体現する2つの物語
強い「思い」が現実を創り出す。その力を雄弁に物語るのが、流通評論家、故・吉田貞雄さんの詩「夢」と、北海道から宇宙開発に挑んだ「植松電機」の植松努さんの物語です。
夢の循環がもたらす上昇のサイクル
吉田貞雄さんの詩「夢」は、私たちが成功へと向かうプロセスを明確に示しています。
夢のある人には希望がある
希望のある人には目標がある
目標のある人には計画がある
計画のある人には行動がある
行動のある人には実績がある
実績のある人には反省がある
反省のある人には進歩がある
進歩のある人には夢がある
夢を出発点に、「希望→目標→計画→行動→実績→反省→進歩」という8つのプロセスを経て、やがて再び夢へと戻ってくる。この上昇の循環こそが、夢を実現させ、さらなる夢を抱く力を与えてくれるとこの詩は教えてくれます。
「どうせ無理」を打ち破った小さなメーカーの挑戦
この詩の信ぴょう性を証明するかのような人物がいます。それが、産業機器メーカー「植松電機」の植松努さんです。
小さなメーカーが宇宙開発に挑戦
北海道赤平市。かつて炭鉱の町として賑わったものの、廃坑後は人口が6分の1にまで激減したこの町に、植松電機はあります。植松さんの父は、もともと石炭掘削用の特殊機械を製造していましたが、廃坑後は自動車部品の修理業に転身しました。しかし、部品が壊れると丸ごと交換する時代となり、やがて仕事は失われてしまいました。
しかし、植松さんは諦めませんでした。大学で流体力学を学び、航空機設計を手がける会社で働いていた彼が家業を継ぐと、産業廃棄物から鉄を選別する電磁石を開発。今や、その技術は世界中で使われています。
さらには、北海道大学の永田晴紀教授と出会い、ロケット研究開発を全面的に支援。少年の頃からの夢であったロケット開発を実現させ、人工衛星の打ち上げにまで成功するなど、同社では宇宙開発を軸に研究開発を進めているのです。
「どうせ無理」は可能性を奪う呪縛
植松さんは、夢とは「今はまだできないことを追いかけること」だと言い、それを諦めさせるのが「どうせ無理」という言葉だといいます。
彼自身も、幼いころからこの言葉と戦ってきました。中学生の進路相談で「飛行機やロケットの仕事がしたい」と話すと、「東大に行かなきゃ無理だ。でも、お前の成績ではどうせ無理だから」と言われたこともあったそうです。
そんな彼を支えたのが、母が教えてくれた「思うは招く」という言葉でした。母から教わった「思い続ければできるようになる」という言葉を胸に、植松少年は夢を追い続けたのです。
「僕の夢は、人の可能性を奪わない社会をつくること。だから、誰もが無理だと決めつける宇宙開発に挑んだのです。夢を諦めるために生まれたわけではない。世界をより良くするために生まれてきた。やるべきことは、できない理由を探すことではなく、『どうすればできるか?』と考えること。そうすれば可能性は広がり、世界はあっという間に良くなります」
これは、あらゆる事業も同じです。不都合、不信、不便、不満、不快、不利など、私たちの周りにはさまざまな「不」が存在します。事業者の使命とは、そうした「不」を解消していくことです。
「どうせ無理」と諦めるのではなく、「では、どうすればできるようになるか?」と考え、行動してこそ、夢は希望につながり、進歩をもたらすのです。
「できない」を「できる」に変える商売の原則
植松さんの言葉にあるように、商売の成功は「できない理由」を並べるのではなく、「できる方法」を考え、実践する姿勢から生まれます。これは、これまで多くの企業が、不可能と思われた壁を乗り越えてきた歴史が証明しています。
たとえば、現在では当たり前になっている「デリバリー」で熱々のピザを30分以内に届けるシステムを構築したドミノ・ピザの事例。約40年以上前の日本は30分以上待たされる「出前」という文化でした。
また、マクドナルドは「30分かかっていた提供時間を30秒にする」という目標を掲げ、クイックサービスという革新的なモデルを確立しました。
さらに、ブックオフの創業者である坂本孝さんは中古本を扱う際に着目したのは、「暗くてカビ臭い」という従来の古本屋のイメージでした。これを覆し、明るく清潔な店舗で立ち読みもできるという、全く新しい業態である「新古本店」を生み出したのです。
こうした成功事例の根底には、「どうせ無理」と諦めることなく、徹底的に顧客の不満や不便を解消しようとする「思うは招く」の精神が貫かれています。「できない」という現状を、思考停止の言い訳にするのではなく、次のステップに進むための出発点と捉えること。この原則こそが、店舗の可能性を無限に広げる鍵となるのです。
まとめ:あなたの「思い」が、商売の未来を創る
今回は、「思うは招く」という商業経営の原理原則について、ネガティブな思考を打ち破り、成功を呼び込むための方法を解説しました。
- 「どうせ無理」は可能性を閉ざす呪縛。経営者の強い「思い」が、チームと店舗の未来を創ります。
- 夢の循環を信じ、行動すること。吉田貞雄さんの詩「夢」が示すように、小さな一歩が大きな夢へとつながります。
- 「だったらこうしてみたら?」植松さんの言葉にあるように、できない理由ではなく、できる理由を探すことが、商売を前進させる鍵です。
あなたの商売の可能性は、あなたの「思い」の強さに比例します。「どうせ無理」という言葉を捨て、あなたの理想を鮮明に思い描くことから、新たな一歩を踏み出してみませんか。
次回は、この「思い」を共有する仲間たちとの「絆」について、さらに深く掘り下げていきます。

