不動産業者は「立地のプロ」なのか?
新規開店するための物件探しは、どんな物件が、どこにあるかについての「情報」集めはどうやっていますか?
どんな物件が、どこにあるかについての「情報」ですね。
ところで、新規開店するための物件は、どうやって探していますか?
たいていは、いわゆる「不動産業者」(正確には「宅地建物取扱業者」)に頼んでいるのではないでしょうか。
それとも、誰かに頼んで探してもらってますか?
もちろん、そういった「店舗開発」の人、あるいは「立地探し」をあなたに代わって、やってくれるエージェント、会社もあるにはあるのですが、まだまだ少数です。
実際、あなたとか、誰かとかを手伝ってくれるために、エージェントとなって物件を探してきても、あなたを含め、ほとんどの人は、「自分で決めないと気がすまない」でしょ。そうすると、いくら一所懸命に探してきても、骨折り損のくたびれ儲けになってしまう。つまり、そういうエージェントはぜんぜん儲からないことが多い。だから、「紹介した物件は必ず決めてくれる」くらいの信頼関係がないとだめですね。
というわけで、「店舗開発」や「立地探し」を商売にしている人はほとんどいない。
じゃあ、どうするか、というと、結局、自分で探すしかないわけです。
自分で探すか、自分で会社を作って、探す人、つまり、店舗開発スタッフを報酬払って雇うしかありません。
自分で探すにしても、雇って探させるにしても、最初のイロハのイは、「情報」です。
どんな物件が、どこにあるかについての「情報」ですね。
じゃあ、どうやって、この情報を集めるのか?
「物件の情報屋」さんを見つけることと「業者」さんの建前と本音を見極める
「物件の情報屋」さんは、あなたの挑戦心をくすぐる物件を「褒める」プロ
それこそ、この点がとても重要。物件の情報屋さんを見つけることです。
具体的には、広く物件の情報を集めていて、頻繁にFAXや電話で不動産情報を知らせてくれる「業者さん」ですね。こういう人たちはとても心強い存在ですね。
しかし、さらに問題があります。
その「業者さん」の方々の立地眼です。
ほんとうに、立地の良否を見分ける能力を持っていて適切な物件を紹介してくれているのか、ここです。
もちろん、その道のプロですから、いろいろなことをよく知っています。
ですから、黙っていれば、こちらから聞かなくても「物件の良い点」を次々と説明してくれるに違いありません。
例えば、「ここは駅から少し離れてはいますが、人通りも多いですし、スーパーにも近い。それに間口が広いですから、貴社の出店には打ってつけでしょう。小学校や中学校もあって、けっこうここは通学路にもなっています。それに何と言っても、これだけ好条件ながら、坪当たり単価が安い。ここを逃したらもったいないですよ。いかがですか?・・・」などのように。
実は彼らは、物件を「褒める」ことにおいては、本当にプロです。
ほとんど「ネガティブ(否定的)」なことはあまり言いませんよ。
それどころか、よほど、大きなマイナス面があるときでも、
「確かにお店の前には、あんまり人が歩いていませんが、
でもですね、周辺は住宅が多いでしょ、それもけっこう新築の家が多い。
駅にも自転車で行けますから駅利用者だって狙えますよ。
あとはあなたの(経営の)腕次第です」
のごとく、とにかく良いほうへ、良いほうへ話しを持って行きます。
そうしながら、あなたの挑戦心もくすぐる。
ですから、こうした「業者さん」には、あなたは負けてしまうでしょう。
少なくとも、初めのうちは、たいがい敵わないものです。
なんか変だなあ。店の前に人が歩いてないってことは、だめじゃん。
新築が多いって、まだ、あんまり人が住んでいないってことでしょ。
そりゃ1km離れていれば、自転車使うでしょ。
経営の腕次第って言ったら何でもそうでしょ。あんまり経営で苦労したくないから、良い立地にしたいのだし・・・
あなたが どんなにその物件を否定したくても、なかなかそう言えない。
「業者さん」の「きついキメの一発」で物件契約を迫ってくる伝家の宝刀
日本にマクドナルド巨大帝国を築いた今は亡き「藤田田(デンと発音してください)」社長はつねづね「急(セ)かされたらアカン」と言っていました。
そうやって、あなたが戸惑っているのを見ていて、
「こりゃ、少し脅かしたほうが良いかな」
と「業者さん」は思うかもしれない。
そ~思ったら、きついキメの一発を放ってきます。
「今日中に、手付金入れていただければ、明日までは待ちます。
そうしないと、なくなってしまいますよ。
こんないい物件、二度と出ないかもしれないですよ。」
あなたの決断を急がせる。
「決断をせかす」
これは、「業者さん」の伝家の宝刀です。
ちなみに、巨大なマクドナルド帝国を日本に築いた今は亡き「藤田田(デンと発音してください)」社長はつねづね言っていました。
「急(セ)かされたらアカン」
つまり、契約を急かされるような物件は、ロクな物件じゃない。ぜったい契約してはならない、という意味です。だから、マクドナルドの店舗開発スタッフが、会議で少しでも「早く決めちゃいましょう」みたいなことを発言しようものなら、それこそ社長の叱責が飛びます。そして、その物件の出店検討は、そこでシュウリョウ。それほどマクドナルドは、出店立地に慎重だったというお話しです。
「不動産業のプロ」「物件取り引きのプロ」であっても、「立地選びのプロ」ではない
業者の言葉に乗せられず、冷静に立地の良否の判断をあなたがおこなうために必要なこと
業者さんは、「不動産業のプロ」=「物件取り引きのプロ」であっても、ほとんどの場合、「立地選びのプロ」ではありませんない。ですから、こうした方々の言われるままに、うっかり物件の契約をしてしまい、開店させてしまえば、その行き着く先はたいへんです。
しかし、こうした方々、業者さんを責めることはできません。
悪いのは、言葉に乗せられた貴方のほうなのです。
あなたが、冷静に立地の良否を判断しなかったことがいけないのです。
じゃあ、どうする?物件探し。
ここまで読んで、あなたは悟ったはずです。
物件探しは、「情報」じゃない。
その物件情報が、「本当に良いかどうかをチェックできることだ」ということです。
では、そのチェックができるためにはどうするか?
簡単なことですね。
「不動産業のプロ」「物件取り引きのプロ」の攻略法
正攻法その1 立地を勉強する
「だって、私も立地については素人だったからしかたがない」
こんな言い訳はしても意味がありません。素人はお店を出してはいけないのです。
立地の勉強をして、しっかり、立地を見る眼を養ってから、お店を出す。これが正攻法の一です。
正攻法その2 専門家に聞く
でも、どうしても、立地に自信が持てない、勉強する暇もない、そういうのでしたら、立地の専門家に代行して調査してもらうことです。これが正攻法の二です。
ただし、最近は、いろいろな「立地セミナー」に向学心旺盛な「不動産業者さん」が頻繁に参加するようになりました。そして、けっこう専門的な立地用語を理解し、使っているようです。
すでにこの連載でお馴染みのTG(ティージー:交通発生源)やPC(ピーシー:需要集合体)についても、さらに、「動線」や「視界性」という言葉さえも理解している方がいらっしゃいます。
これから、きちんとこうした立地概念を理解して、物件紹介をしてくれる業者さんがたくさん増えてくれると良いと思うのですが、なかなかまだこうした人は少数派のようです。
しかし、この連載を読んでいるあなたなら、必ず口に出して言えるはずです。
たとえば、「店前通行量は多いですよ」と言われたら、
「多いからといって、必ずしも立地が良いとは限らないようですね。
むしろ、通行人からの視界性があまりよくないですから、難しいですよね」
と切り返しますことができるでしょう。


また、
「間口が広いですから、いい物件ですよ」
と言われたら、
「いくら間口が広くても、出入口が、道路から大きくセットバックしているのはちょっと問題ですねえ。
これでは道往く通行人をお客さんにできませんよ」
のように、真の問題点を指摘することが大事です。

通行量が多いと言えば、オフィス街の平日はひじょうに多い。
そういう場合のチェック項目は、統計です。
仮に下図のように、
人口が「昼間人口」より少なかったら、
「平日の昼間はなんとかなるでしょうけれど、夜間や休日はどうでしょう。
難しそうですね」
と交渉しましょう。
具体的な数字を挙げることができればなお良しです。
ですから、商圏集計ソフトなどで武装することも大事になってきます(ネットで探せばいろいろな低価格なアプリ、無料のウェブサイトが見つかります。これらについては後日紹介する予定です)。

ただし、間違ってはいけないことがあります。
それは、「不動産業者さん」は、決して、あなたの「敵」ではないということです。
むしろ、あなたにとっては多くの物件を親身になって紹介してくれる心強い味方になるパートナーです。
ですから、そういう方々の意見を頭から否定してはいけません。
「確かに○○○なのですが、こうした▲▲も起きていますね」のように、
意見を一度は受け入れた後、自分の危惧している点について、しっかりと述べることです。
こうやって、日頃から立地の見方について、その「業者さん」をそれとなくトレーニングしていくことが大事だと思います。
中には、「そんなにあれもこれも条件が整っている物件はありませんよ」と明らかに嫌な表情になる人もいるかもしれません。
が、恐れることはありませんそういう人は少数派です。
あなた真摯な熱意が伝わればほとんどの方は、あなたの意に沿った良い立地の物件をもっともっと見つけてくれます。
立地を多角的にみることができれば、交渉次第で、多くの物件を繁盛物件にすることができるでしょう。


