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【この記事の概要】
課長の役割と条件③ 「全員が決めたことを決めた通りにやる」を無意識で行動が出来るところまで責任を持って指導できること
京セラ創業者稲盛和夫さんは、このことを非常に重視され、アメーバ経営のリーダーにも求めていました。これは、店舗経営の課長職で経営者代行のスーバーバイザー(SV)にも同様に、決められたことの徹底や目標達成への執着心が求められ、店の売上や利益、人の確保や育成などはSVのレベルで決まります。そして、安定経営実現のためには「課長が無尽蔵に出来る仕組み」を作り上げることが必要になります。
7. 部下を一人前に育てるために課長が行うべきこと
明確な一人前基準のもとで「出来ること」と「出来ないこと」を把握し、必要な経験を積ませながら伴走して期日までに一人前に引き上げる
ここでは、京セラのアメーバ経営会議での育成方法を参考に説明します。
まず、京セラのアメーバ経営会議での育成は、月次で部下全員の育成計画が達成できているかを他のアメーバリーダーに報告しながら、各リーダーがレビューを受けて進めていく方法です。
一人前の人を育成するためには、一人前基準が存在していて、何が出来ていて、何が出来ないかを把握しながら、一人ひとりをいつまでに一人前にするか、そのためにどのような経験を積ませるか、という計画を立て、それに沿った業務の与え方をすることで決まってきます。
また、各人がハードルをクリアしていくには、どのような経験を積ませて問題点を克服していくか、ということについてそれぞれ目標を持ちながらPDCA を回していくことも大事です。
京セラのアメーバ経営会議では、部下全員を対象に来月はどういうことをやってもらうか、そこで自分はどのように関わるか、また1ヶ月間で行えたかことについて、他のアメーバリーダーの審判を受けていきます。
部下を一人前に育成するためには、まずは会社の経営理念と行動を照らし合わせ、リーダーが責任を持ちながら部下一人ひとりが基準を達成出来ているか、リーダーの指導は経営理念や基準から外れていないかなどを他のメンバーから常に監視されながら状況を見守るフォロー体制を整えることが肝要です。
具体的には、京セラでは経営理念である”全従業員の物心両面の幸福を追求する“というその「幸福」において、仲間から認められたか、お客様から認められたか。そして、それで職業人として信頼される人間たれということについてリーダーが責任を持ちながら、一人ひとりに対し達成させることが出来ているかについて、他のメンバーから常に監視されながら、状況を見守ることが行われているのです。
8. 稲盛和夫さんがこだわった課長に必要な目標達成の習慣化
「全員が決めたことを、決めた通りにやること」を無意識で行動が出来るまで責任を持って指導する
課長は、数字について責任を持つ立場ですが、それが達成出来ないということは、部下の育成が不十分だからです。
そして、月次でつじつまを合わせるには、日次で「やるべきことをやり切る」習慣づくりが最重要です。
なぜなら、人の行動を変えるには習慣作りしかないからです。
課長は自らが「決めたことは決めたとおりにやる」習慣が出来ているかに最大限の注意を払いながら、習慣作りを心掛けましょう。なぜなら行動は無意識だからです。
我々は、自分の中で、過去の行動パターンに従って、無意識で動いているものです。
その状態で、自分の行動を変えるには、習慣を変えるしかないのです。
その、習慣を変えるためには、自分が意識しながら、決めた事を決めた通りに行う、ということで、無意識の内に、決めたことをやるまでは帰らない、という行動パターンを形成しない限り、自分が決めた事を決めた通りに出来る状態は作れないものです。
この習慣化において稲盛和夫さんが特にこだわられたのは、「日々、とにかくやりきらないと帰ってはいけない」ということでした。
さらに、稲盛和夫さんはアメーバ経営のリーダーは「全員が決めたことを決めた通りにやる」を無意識で行動が出来るところまで責任を持って指導できるレベルになることを非常に重視されていらっしゃいました。
この習慣化は、脳科学的にも、行動は無意識であり、習慣を変えない限り、行動は変わらない、ということですから、人の行動を変えるには、日々の行動を変えるしかない、という信念に基づいたものなのです。
「人の行動を変えるには習慣作りしかない」参照先:ピープル・ビジネス理論 0章 概論 3.一見、複雑に見える事象のシンプルな捉え方『マザー・テレサ 「それはいつか運命になるから」』
9. 課長に役割を発揮させ、目標を達成させる上司の責任
目標の未達は、本人の責任でもありますが、達成に導いていない上司の責任でもあります
課長は、品質管理の責任者でもあり、一人前の部下を育てる責任があります。
それを、自分が何としてもやるぞ、と決意して、それが出来るように努力することは、第一義的には本人の責任なのですが、それが出来ない場合、第二義的に部長が導いてないからです。
部長が導いていないことは、第三義的に役員にも責任が覆いかぶさりますし、最終的、第四義的には社長の責任ということになります。
つまり、目標の未達は本人の責任でもありますが、達成に導いていない上司の責任でもあるため、自分の部下全員がきっちりと出来ているかを見ながら、一人ひとりに対する対応について、考えて行動する必要があります。
10. 会社の価値は課長力で決まります
「課長が無尽蔵に出来る仕組み」を作り上げましょう。課長に焦点を当てるのではなくその下の係長クラスが育つ仕組み化が必要
会社の課長は、課長で決まります。
よって、「課長が無尽蔵に出来る仕組み」を作れているかが、会社の経営力にとっては非常に重要な要素になります。
そのためには、会社の業務プロセスが明確になっていて、目標管理が出来る仕組みが出来ていて、教育制度、人事評価と連動したレビューシステムといった、色々な仕組みが出来ていることが必要になります。
例えば、ISO の品質管理ではプロセス管理という仕組みがあり、係長クラスのプロセスオーナーと言われる人に焦点を当てながら、そのプロセスオーナーがきちんと自分のプロセスで行うことについて責任を負う仕組みの積み重ねになっています。
つまり、「課長が無尽蔵に出来る仕組み」とは課長に焦点を当てるのではなく、その下の係長クラスが、プロセス毎にきちっと作り込むという仕組みが出来ていて、それがきちんと機能していることで、非常に安定的に、課長が育つ仕組みができるのです。
ここでいう課長とは店舗経営の場合、経営者代行のスーバーバイザー(SV)を指して、SVのレベルで店の売上や利益、人の確保や育成が決まると言えます。そして、係長とは店長を指します。
つまり、経営者代行として、店舗に行って経営理念の徹底や経営指導と改善ができるSVを育成するためには「店長が無尽蔵に出来る仕組み」を作り上げることが必要になるのです。
店長がどんどん育つ店は、SVのレベルも店のレベルも高く、安定経営を実現しています。
最後に事例を紹介しますと筆者主催『10パーセント俱楽部』参加者の株式会社レガーロ社では、ISO9001をとてもに上手に使いながら、今は無尽蔵に課長が出来る仕組みを構築されて「なにがあっても想定内」の組織づくりを実現しています。
この仕組みがどのようにして作られて、どういう風に運用されているのか、実証例を参考にすることもできますので、お問い合わせはピープル・ビジネス・オンラインお問い合わせフォームよりお願いいたします。
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