ドミノ・ピザとスターバックスに学ぶ 6.盤石の経営基盤「強い現場の作り方」

ドミノ・ピザとスターバックスに学ぶ 人気のピザ ペパロニピザ ドミノデラックス ドミノ・ピザの強み 競合差別化 ドミノ・ピザが競争優位性を高めたお客様との約束 30分以内のピザお届けの約束を守る 現場を活気づけて、人を育て、生産性を上げ、組織を構築する強い現場力 オペレーション・コールやオペレーション・コミュニケーションによるチームビルディング 競争優位性を支えた強い現場 マニュアルや研修では実現できない現場力

【この記事の概要】  
 現場を活気づけて、人を育て、生産性を上げ、組織を構築する強い現場力
 1980年代、ドミノ・ピザは30分以内にピザお届けの約束を守るため、ボトルネックの解消、お届け時間を予測し厳守するためのアクション、無理無駄ムラを解消するオペレーションコントロールなどを実施。さらに、「オペレーション・コール」や「オペレーション・コミュニケーション」によるチームビルディングで競争優位性を支えた「強い現場」を作り上げました。それは、マニュアルや研修では実現できない現場力と言えます。

この記事の目次

現場を活気づけ、人を育て、組織をつくるオペレーション

無理無駄ムラを解消するオペレーションコントロール

 前記事「ドミノ・ピザとスターバックスに学ぶ 5.ドミノ・ピザが競争優位性を高めたお客様との約束」で触れたお客様との約束を支えたオペレーションポリシーは、

・「H・T・A – Heightened Time Awareness」
・「HUTSLE!」

という「時間を常に意識する」ものだった(詳細は前記事をご覧ください)。

このポリシーを具現化するためには、パートアルバイトでも実践できるようにオペレーションに組み込むことが必要になる。 

例えば、ピザメイクやデリバリーの各工程における要所で目標タイムが設定されていて、この目標タイムをクリアすることがランクアップ(昇進昇格)の条件だったので必然的に自らが時間を意識して行動するようになる。

また、店全体のオペレーションコントロールでは、各工程の要所で経過時間をコールするルールだったのでオペレーションの進み具合も把握でき、ボトルネックがどこで発生しているかが瞬時に分かるため、そのポジションをフォローアップしてオペレーションの安定化も図ることができていた。

もちろんこれは基準であり目標であるので、各要所で時間をオーバーしても30分以内にお届けができれば問題はないが、生産性を上げるための意識付けとしてとても重要なことだった。

特に、ドミノ・ピザは安全を第一にした経営理念「S.S.P.I.P.」のためピザメイクやデリバリーを急かすことは事故につながるため急かすのではなく、無理無駄ムラをオペレーションコントロールで解消して生産性を向上させていった。

ドミノ・ピザの経営理念「S.S.P.I.P.」

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現場力を上げる「オペレーション・コール」と「オペレーション・コミュニケーション」

お届け時間を予測し、厳守するために必要なアクションの実行

 特に店舗を出発する際の時間コールは特に重要であった。

なぜならば、20分のコールがされると「Late(レイト)」…ギャランティである30分以内のお届けが難しくなることが予測され、デリバリーの増員もしくはお客様への事前のお届け所要時間のご案内を行う必要が出てくるターニングポイントでもあったからだ。

また、ドライバーは店舗に帰った時、デリバリーが完了した所要時間のコールをすることでLate状況やドライバーの技量の把握に役立つもので、オペレーション上、重要なポイントでもある。

このように、要所要所で経過時間のコールをすることは、常に時間に対する意識を高く持つことでお客様とのお約束である30分以内のデリバリーを実現し続けようとすること、そのものだった。

◆レイトとは:Late[英]、遅い、遅れたや時間(定刻)に遅れるの意。ドミノ・ピザでは、お客様との約束である30分以内のお届けが難しくなる意で使用

ギャランティとは:guaranty[英]、品質保証を含む保証や担保の意。ドミノ・ピザは、注文から30分以内で熱々ピザをお届けするという、時間と品質をお客様に約束と保証をした。これが出前文化からデリバリー文化を日本に根付かせた重要なポリシー

ハキハキ、キビキビとした言動で仕事ぶりも活き活きしてくる

 そして、何と言っても、これらの経過時間コールやオペレーションコールを実施することで得られる成果がとても重要だった。

その成果とは、クルーはハキハキ、キビキビとした言動で仕事ぶりも活き活きしてくる。そして、ミスや失敗も減ってくるし、ミスがあってもお互いにカバーして協力し合うことでチームワークが醸成される。

さらに、ピークタイムではオペレーションもリズムに乗って活気づくので生産性も上がる。

その結果、忙しく体力的にキツイ仕事であっても、職場はとてもポジティブでやりがいや達成感があり働きやすい環境になったことだ。

■オペレーションコールの例
 「○○お願いします!」→「○○ありがとう!」
 「△△出来ました!」→「△△ありがとう!」
このようなシンプルな言葉のキャッチボールが響く。これは人間関係を築くコミュニケーションの原点とも言える。

マニュアル化や研修よりも効果的なチームビルディングの方法

 単純な言葉のキャッチボールだけのオペレーションコールをすることで、必然に現状把握力や注意力も向上していく。

そして、もしチームのメンバーがミスや失敗をしてもすぐに気が付くことができるのでカバーすることができる。さらに、状況判断も身に付いてくるので主体的に動ける。

このような人たちが手本となって一人ひとりのレベルがどんどん上がり、チームワークもどんどん良くなっていく。

この繰り返しの結果、生産性も上がり、人も育つ。今でいうチームビルディングがマニュアルや研修といった押しつけ型ではなく、参加型のオペレーションに組み込まれていることが重要なポイントだった。

これは今でいうところのチームビルディングという手法で1990年代に日本で流行り始めたもの。しかし、日本ドミノ・ピザでは1980年代、既にオペレーションにチームビルディングが組み込まれていた。

このようにドミノ・ピザが圧倒的に競合優位性を高めることができたのは、オペレーションが支えとなっていた。

つまり、生産性向上やチームワークを教えるのではなく、オペレーションに組み込んで、オペレーションの実践から自然にできるようにする点だ。 

特に日本では、作業中は無口で集中することが良いとされていて馴染みの薄いこともあり、コミュニケーションの一種である言葉のキャッチボールもあまり無いことが多い。

この作業をしながら行う「オペレーション・コール」や「オペレーション・コミュニケーション」は、現場を活気づけ、人が育ち、生産性を上げ、組織を構築するチームビルディングにはとても重要な手法であり、当然ながら、売上も利益もついてくる。

チームビルディングのためのマニュアルや研修などではなく、経営理念やポリシーを明確にして、オペレーションに組み込むことであなたのお店が良くなるのではないか。

ミスや失敗が多くオペレーションが安定しない。人が育たない。人手が足りない。ピークが回らず取り切れないなどの店舗経営課題がある場合、まずは、「お願いします!」「ありがとう!」という言葉のキャッチボールから実践してみてはいかがでしょう。

この記事があなたの経営課題解決のきっかけになれば幸いです。

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