社員のための課長業・部長業・役員業 13.「一人前基準」課長と部長の役割と責任

「一人前基準」作成と運用における課長と部長の役割と責任。「一人前基準」は全社で統一された公平な基準であり、人事評価の土台になり全社調整、基準統一、現場理解や課長育成が不可欠。これらにおいて、課長と部長の役割と責任の明確化が重要。

【この記事の概要】
 「一人前基準」作成と運用における課長と部長の役割と責任
 「一人前基準」は、全社で統一された公平な基準であり、人事評価の土台となる重要なものです。作成には、全社調整、基準統一や現場理解が不可欠です。ポイントは、全社で業務品質のバランスを取り、統一感のある基準とすることです。課長は基準を実行でき手本を示して部下を育成する責任があり、部長は勘所を抑え人材を活用する能力が求められます。これらの役割と責任の上での運用が必須条件と言えます。

この記事の目次

「一人前基準」作成のポイント

全社で統一され、公平で透明性の高い「一人前基準」

 一人前基準を作成する上で重要なポイントは、全社で業務品質のバランスを取り、統一感のある基準とすることです。

具体的には、以下の点に注意してください。

全社での調整

 一人前基準は、会社全体の品質に関わるため、部署ごとではなく全社で調整し、バランスを取る必要があります。課長に作成を任せる場合でも、会社としての方針や合意事項を明確に示すことが重要です。

基準の統一

 フォーマット、項目の粒度や緻密さ、レベル感などを統一することで、評価のばらつきを防ぎ、公平性を保つことができます。

部や課ごとに基準が異なると、業務遂行や評価の比較が困難になり、社員のモチベーション低下にもつながる可能性があります。可能な限り、全社で統一されたフォーマットを使用し、評価項目やレベル感を明確に定義することが重要です。

これらの点に注意することで、全社で統一された、公平で透明性の高い一人前基準を作成することができます。

課長を中心とした各部署との調整機能

 一人前基準を作成する際は、各部署の課長が中心となり、会社全体で統一的な基準を作成することをお勧めします。

具体的な手順は以下の通りです。

(1) 作成チームの発足

・各課長が参加する作成チームを発足させます。
・チーム内で協力し合い、意見交換をしながら基準を作成します。

(2) 全社的な調整

・作成過程において、必要に応じて部長、役員、社長などの管理職や経営職も参加します。
・会社全体としての方向性を確認し、統一的な基準となるよう調整します。

(3) 調整機能の活用

・各部署の意見を調整し、全体としてバランスの取れた基準を作成するために、調整機能を設けます。
・これにより、各部署が納得できる、実効性の高い基準を作成することができます。

この方法により、各部署の意見を反映しつつ、会社全体で統一された、実用的な一人前基準を作成することができます。

現場が理解し運用できる内容

 一人前基準は、会社の基準に沿ったものでなければ意味がありません。また、実際に運用するメンバーが理解できる内容にする必要があります。

具体的には、以下の点に注意してください。

現場の理解度を重視

 基準を作成する際は、作成者だけでなく、実際に使用するメンバーが理解し、実行できる表現や内容に調整することが重要です。

作成者だけが理解できる基準では、現場での運用が難しく、形骸化してしまう可能性がありますので、現場の意見を積極的に取り入れ、理解しやすい基準を作成しましょう。

会社の基準との整合性

 一人前基準は、会社の理念や目標、職務要件と整合性が取れている必要があります。他社の基準を安易に流用し真似してもうまくいかないので、自社の状況や文化に合った基準を作成することが重要です。

運用と改善

 作成した基準は、実際に運用しながら、使い勝手の良いように適宜修正していくことが重要です。定期的に見直しを行い、時代の変化や会社の状況に合わせて基準をアップデートしましょう。

「一人前基準」と「人事評価」の連動

 一人前基準は、将来的に人事評価基準の土台となる重要なものです。作成にあたっては、以下の点を意識してください。

人事評価への応用を見据える

・一人前基準は、社員の実務能力を評価する基準として非常に有用です。

・この基準を人事評価に活用することで、客観的かつ公平な評価が可能になります。

そのため、一人前基準を作成する際には、将来的に人事評価基準の骨子として使えるように、評価項目やレベル設定を工夫することが重要です。

使いやすさを考慮する

・人事評価で活用するためには、明確な評価項目で、使いやすい評価基準であること。

・評価者による解釈のばらつきをなくし、一貫性のある評価ができるように、具体的な行動や成果に基づいて評価項目を定義すること。

一人前基準を人事評価に効果的に活用することで、社員の成長を促進し、組織全体のパフォーマンス向上につなげることができます。

課長の役割と責任

「一人前基準」のブラッシュアップ、部下に手本示し育成する責任

 課長は、一人前基準の作成において、叩き台を作成するだけでなく、部下の理解度を確認し、使う人の立場で、使いやすく行動できる適切な表現に修正する責任があります。

課長自身が基準を理解し、部下に手本を示せることが必須であり、その基準に責任を負うことが求められます。課長が変わった場合は、新しい課長が責任を持って基準を見直し、必要に応じて修正する必要があります。

部下育成における課長の責任

 課長には、部下を指導・育成し、一人前の人材に育て上げる重要な責任があります。

育成能力の習得

 課長昇格前に、部下育成に必要な知識やスキルを習得するための研修やOJTを徹底的に実施する必要があります。

特に、実務経験が不足している場合は、十分な期間をかけて育成することが不可欠です。

実務能力と指導力

 課長は、できることが必須なので、期間を決めて確実に実務を習得してください。課長自身が実務を遂行できようになった後、それを部下に的確に指導できることが求められます。

トヨタの事例にあるように、新しい業務を導入する際には、まず課長自身が習得、熟練し、部下に教えられる状態にしてから導入し、展開するプロセスが重要です。これにより、課長は「自分ができないくせに、偉そうに指示する」という状況を避け、部下からの信頼を得ることができます。

これらの点を踏まえ、課長は部下育成に真摯に取り組み、組織全体のパフォーマンス向上に貢献することが求められます。

「一人前基準」運用の責任と課長昇格の条件

 一人前基準を円滑に運用するためには、課長自身が基準となる業務を遂行できる能力を持つことが不可欠です。

課長の能力不足の場合

 一部でも基準となる業務を遂行できない課長がいる場合は、その課長が能力を習得するまで、一人前基準の運用開始を見合わせるべきです。

例外として、実務経験は不足していても、業務の本質を理解し、周囲を納得させられる指導力を持つ課長であれば、運用開始と並行して能力開発を進めることも可能です。

課長の能力開発の重要性

 課長は、部下を指導・育成する立場として、基準となる業務を自ら遂行できる能力を持つ必要があります。

能力不足のまま運用を開始すると、部下の混乱を招き、組織全体のパフォーマンス低下につながる可能性があります。課長が確実に能力を習得するまで、十分な期間をかけて育成することが重要です。

組織運営の観点

 組織を円滑に運営するためには、課長が基準となる業務を遂行できる状態であることが望ましいです。課長の能力不足は、組織全体の信頼性を損なう可能性もあるため、早急な改善が必要です。

これらの点を踏まえ、一人前基準の運用開始にあたっては、課長の能力を慎重に評価し、適切な対応を取ることが重要です。

課長昇格の条件

 自身の能力だけでなく、部下の能力を認め、尊重することで、信頼関係を築くことが重要です。部下から「この部長は本質を理解している」と評価されることで、組織全体の士気が高まります。このレベルの信頼関係があれば、自社内はもちろん、他社から中途採用した人であっても、課長に昇格して問題がないレベルと言えます。

部長の役割と責任

 部長は、実務の上級者として、以下の点が求められます。

勘所を抑える能力

 自身が実務経験を持っていなくても、できる人に質問するなどして、業務の本質や重要なポイントを的確に把握する能力が求められます。

人材活用能力

 各部署で見本となるレベルの人を活用し、彼らの能力を最大限に引き出すことで、組織全体のパフォーマンスを向上させることができます。

的確な指示と判断力

 専門家の意見を踏まえつつ、的確な指示や判断を下すことで、組織を正しい方向に導くことが求められます。

これらの点を踏まえ、部長は組織全体のパフォーマンス向上に貢献することが求められます。

「一人前基準」は、組織全体の成長を支える重要な基盤

 全社で統一された公平な基準を作成し、人事評価と連動させることで、社員の能力を最大限に引き出し、組織のパフォーマンスを向上させることができます。

課長は、基準となる業務を自ら遂行し、部下を育成する責任を負い、部長は、専門家の意見を踏まえ、的確な指示と人材活用を行うことで、組織を正しい方向に導く必要があります。

これらの役割と責任を果たすことで、組織は持続的な成長を遂げることができるでしょう。

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