【人材育成】社員のたの課長業・部長業・役員業 15.試行錯誤で自信を育む│一人前基準の柔軟な運用と成功体験の設計

試行錯誤,一人前基準,管理職,マネジメント,人材育成,エニアグラム,店舗経営,成功体験,自信醸成,評価制度,リーダーシップ,離職防止,生産性向上,業務改善,組織開発,1on1,コーチング,PDCA,習慣化,部下指導

【この記事で分かること】
 「自信を失う」ことが最大の敵。試行錯誤を繰り返しながら無理なく成長できる仕事の与え方と、一人前基準の柔軟な運用術を徹底解説
 人材育成の本質は、部下の自信を育むことにあります。現場での試行錯誤を血肉に変える「24の基本習慣」の習得法から、エニアグラムを用いたタイプ別の柔軟なマネジメント手法を詳解。無理のない仕事の与え方で成功体験を設計し、一人前基準のクリアを通じて、スタッフが自立して成果を出す「強い組織」へ変革する極意がわかります。

この記事の目次

「自信」を育むマネジメントが離職を防ぎ、組織を強くする

 店舗経営において、スタッフがなかなか育たない、あるいは自信を失って離職してしまうという悩みは絶えません。経営者や店長が「早く一人前になってほしい」と焦るあまり、過度な期待や指示を出しすぎていないでしょうか。

前編の第14回では、社長の右腕としての「課長の責務」と昇格の条件について解説しました。今回は、その昇格の土台となる「一人前基準」をいかにクリアさせ、部下の自信を育みながら組織全体の生産性を高めていくか、その具体的な実践法を深掘りします。

成果を出す人の共通点:「仕事ができる人の習慣」を身につける

 管理職やリーダー候補が「一人前基準」をクリアするためには、単なるスキルの習得だけでは不十分です。最も重要なのは、「仕事で一定の成果が挙がる人の習慣」を前提として身につけていることです。

係長・主任時代に固めるべき「24個の基本」

 私のマネジメント理論では、主任・係長クラスの定義を「一人前になれる仕事の習慣を身に付けていること」としています。具体的には、半年間(24週間)かけて、24個の仕事の基本を徹底的に習慣化させるプログラムを推奨しています。

例えば、以下のような要素が「仕事ができる人の習慣」に含まれます。

  • 優先順位の明確化:タスク管理において、何が重要で何が緊急かを瞬時に判断する。
  • PDCAの高速回転:現場での試行錯誤を恐れず、自ら改善を日常業務に組み込む。
  • 報連相(ほうれんそう)の質:結論から話し、上司の意思決定を助ける情報を届ける。

一ヶ月に一つの論文やテーマを深く学び、それを現場で実践しながら部下を指導する。この「学びと指導の同時並行」こそが、試行錯誤を血肉にし、習慣を定着させる最良の方法です。

柔軟な標準化:個性を活かす「エニアグラム」的マネジメント

「一人前基準」をすべての部下に適用しようとすると、往々にして「杓子定規な型にはめ込み」が起こります。しかし、人によって能力や価値観、得意なコミュニケーション手法は異なります。

業務標準(基本)と個性の調和

 大切なのは、基本は厳密に定めつつ、運用には柔軟性を持たせることです。ここで強力な武器となるのが「エニアグラム」です。

エニアグラムのタイプによって、人の感じ方や能力の発揮の仕方は驚くほど違います。

  • タイプ1(改革する人):完璧な標準を求めるため、基準が明確であるほど安心する。
  • タイプ4(個性を出す人):マニュアル通りを嫌うため、最終的な「出来栄え」を合意し、プロセスには裁量を与える。
  • タイプ7(熱中する人):細かいルールに縛られるとモチベーションが下がるため、ゲーム性を加味した目標設定にする。

※エニアグラムの各タイプの特徴や組織運営への活用法については、本連載6.人間関係構築スキル (1)管理職必須の人間関係構築スキル「エニアグラム」で詳しく解説していますので、ぜひ参照してください。

「出来栄え基準」のイメージを共有する

 個性を尊重する一方で、組織として譲れないのが「出来栄え基準(品質レベル)」です。「この仕事が終わったとき、どのような状態になっていれば合格か」というイメージを、課やチーム全体で共有してください。

エニアグラムの番号が違う人であっても、目指すべき品質のゴール(出来栄え)さえ一致していれば、そのプロセスは本人が試行錯誤を繰り返しながら、特徴を活かした「幅のある運用」で進めて良いのです。

自信を失わせない仕事の与え方:成功体験のループを設計する

 人の成長を阻む最大の敵は「自信を失うこと」です。特に真面目な社員ほど、慣れない仕事を「あれもこれも」と予期せぬタイミングで与えられると、処理しきれずに失敗を重ね、自己否定的なスパイラルに陥ってしまいます。

「同じ業務の繰り返し」による習熟

 新しいことを次々にやらせるのではなく、あえて同じ業務を繰り返させる工夫をしてください。一見、同じ仕事に見えても、顧客の要望や状況によって細かな違いがあるはずです。その違いを自分なりに試行錯誤してクリアしていく過程で、部下は「自分はこの仕事ができる」という確固たる自信を得ます。

能力開発の3ステップ

  • ステップ1:慣れた仕事を繰り返し、短時間で完璧にこなせるようにする。
  • ステップ2:その業務の周辺にある、少しだけ新しい課題を与える。
  • ステップ3:成功を認め、フィードバックを行う。

このように、無理なく成長できる仕事の与え方を工夫することが、店長や課長の重要な役割です。人材を潰してしまう最大の要因は、本人の能力不足ではなく、上司による「過剰で無計画なタスク付与」であることを忘れてはなりません。

【よくある質問】部下育成で最も大切なこと

部下育成で大切なことは何ですか?

一言で言えば、「部下の自信を育てること」です。多くのリーダーはスキルの向上ばかりを急ぎますが、根底に自信がなければ、新しい挑戦を支えるエネルギーが湧きません。

現場での試行錯誤を認め、あえて慣れた業務を繰り返させることで成功体験を積み上げること。そして、エニアグラムなどを活用し、個々の特性に合った「幅のある基準」で成長を支援すること。この「無理のない階段」を設計してあげることが、育成において最も重要なポイントとなります。

「無理のない階段」:ピープルビジネスではキャリアパスプラン(職能別階級制度)と位置づけています。

まとめ:一人前基準のクリアが強い組織を作る

「一人前基準」とは、単なるノルマではありません。それは部下が自信を持って働けるようになるための、そして上司が安心して仕事を任せられるようになるための「信頼の架け橋」です。

  1. 仕事ができる人の習慣(基本)を身につける。
  2. エニアグラムを活用し、個性を活かした「幅のある運用」を行う。
  3. 成功体験を積み重ね、自信を失わせない仕事の与え方を徹底する。

これらを実践することで、組織の生産性は飛躍的に向上し、店舗経営における人材の悩みは解決へと向かいます。部下を型にはめるのではなく、型(基本)を使って個性を輝かせる。そんなマネジメントを目指しましょう。

シェアお願いします
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
この記事の目次