ブックオフ・ハードオフ「従業員による巨額内部不正」の真相に迫る[第四弾]ブックオフ直営24店舗で7000万円もの内部不正が判明し、その手口も明らかに

ブックオフ 従業員による巨額内部不正 架空買取や不正現金取得
本連載記事【目次】前の記事次の記事

【この記事の概要】
 ブックオフ不正、従業員による内部不正で24店舗で7000万円分もの現金着服を確認
 ブックオフの不正現金着服問題、従業員が内部不正を行っていたことが判明。24店舗で約7000万円分の不正行為が確認され、中間報告が発表されました。主な不正行為は架空買い取り在庫の不適切な計上が含まれます。現段階では、国内24店舗で不正が行われ、不適切な在庫計上などの不正の手口が明らかになりました。この記事では、ブックオフ不正行為の詳細や不正が発生した管理体制の問題について解説します。

この記事の目次

従業員による架空買い取りなどの内部不正に関する調査の中間報告の概要

 8月6日、ブックオフグループホールディングスは従業員による架空買い取りや在庫の不適切な計上についての調査中間報告を公表しました。現時点では、国内24店舗で不正行為が確認されており、約7000万円分の不適切な在庫計上が明らかになっているとのことです。

同社は2021年6月25日にこの問題により2024年5月期の決算発表を延期。特別調査委員会による社内調査を開始すると公表しました。調査は現在も継続中ですが、8月6日時点で以下の事実が判明しました。

  • グループ会社の国内外直営全店舗で実地棚卸を実施
  • 国内24店舗で架空買い取りと在庫の不適切な計上を確認
  • それぞれ、3つずつの手口が判明

と説明しています。

詳細は、ブックオフホールディングス「特別調査委員会による調査進捗状況に関するお知らせ 」をご覧ください。

約7000万円分の被害額は、2024年6月25日にハードオフやブックオフの加盟店を運営する株式会社エコノスが公開したハードオフ加盟店で発覚した3200万円を超える内部不正を大きく超えるもので過去に例を見ない異常な事態と言えます。

ハードオフ 店頭 エコノス社 内部不正

(関連記事)[第一弾]ハードオフ運営会社における3200万円超もの内部不正に見る店舗経営のあり方 この記事では、ハードオフの運営会社である株式会社エコノスで発覚した3200万円を超える内部不正について解説します。

公表された不正の手口

架空買い取りの手口

  1. 取引の実態が存在しない買取をシステム上に記録した上、それにかかる現金を従業員が着服する行為
  2. 買取の実態は存在し、お客様への査定金額は適切であったものの、システム上に登録する際に単価や点数を水増し、あるいは別の商品コードで登録し、水増し分の現金を着服する行為
  3. 取引の実態が存在しない買取をシステム上に記録した上、その後同等の商品の売上をシステム上に登録し、売上を偽装あるいは過大に計上する行為

在庫の不適切な計上

  1. 架空買取により生じる棚卸差異を打ち消すために、架空の在庫金額を記録する行為
  2. 架空買取とは関係なく発生した棚卸差異について当該店舗の業績を良く見せるために架空の在庫を記録する行為
  3. 社内ルールとは異なる手順での廃棄処理または社内ルール上は認められていない商品コードの転換処理を行う行為
ブックオフ 調布駅南口店 目立つ店頭 東京都調布市

(関連記事)[第二弾]ブックオフシステムと不正要因との関連 ブックオフ子会社が運営する複数店舗において、従業員による架空買い取り、在庫の不適切な計上や現金の不正取得の可能性が発覚。ハードオフ運営会社エコノスでは従業員による巨額不正などの異例の事態が……

不正が発生した管理体制の問題

組織の牽制機能

 報告書には、当社直営全店においては、これまで、各店舗の店舗在庫の実地棚卸は定められたルールに従い、各店舗の店長・主任を中心として行っており、また、実地棚卸の網羅性や実施棚卸が当該ルールどおりに実施できているかどうかについての確認、検証は、店長・主任の上長である複数店舗を所轄するエリアマネージャーをはじめとした上長が行うこととして管理をしていたとありますが、

エリアマネージャーの上長やブックオフ本社の管理職や取締役らが、エリアマネージャーの報告内容の精度や証憑類の信憑性をチェックする体制に加え、ブックオフ事業部や他部署の牽制機能についての報告はありませんでした。

現場実態の把握

 報告書によると、実地棚卸についても、“これまでの方法では在庫計上の不適切な行為を発見できなかった”とあります。

その原因として、店舗経営において、日常業務が繰り返されるとマンネリ化、惰性や前例踏襲などから形骸化してしまう傾向から、本来の機能を果たせなくなることで現場実態の把握ができず、問題に発展する場合があります。

そのため、日常業務がマンネリ化しないように、本社がその業務の管理監督をすることで予防できます。それは、店からの報告や提出された証憑類を現場で直接、信憑性を確認することです。

特に人モノかねに関することは、実態調査や内部監査が欠かせませんし、その調査項目も必要に応じ変え、緊張感を保つことが重要になります。

実地棚卸の信憑性を向上させるためには、

  • 組織で実地棚卸を牽制する
  • 実態調査内容や着眼点を必要に応じて変更する
  • 外部委託による棚卸の精度向上と信頼性の確保

などの対策が必要になります。

内部監査や内部統制の機能

 本来、内部監査は定められたルールが現場で厳守され、本社への報告や証憑類の値などの正確さや信用性確認のため、定期または抜き打ちによるチェックで、隙のない店舗経営環境を整えることが求められます。

さらに、ブックオフ事業部長、他部長や取締役によるダブルチェックやトリプルチェックなどで信用性を担保することが必要ですが、今回の報告では内部統制の実態、内部監査の機能、その実施頻度や結果に関する内容はありませんでした。

企業風土

 ブックオフでは、経営幹部や管理職も現場に入り従業員と一緒に働く「共に汗を流す」文化があり、現場と本社の距離を縮めることを重要視しています。しかし、この風土が牽制機能の障害となり、隙を与える原因となった可能性もあります。

過去に例を見ない巨額不正を招いた経営責任

未だ確定できない決算値

 2024年8月29日に予定されていた第6回定時株主総会での決算報告は、直営店400店舗の臨時棚卸実施や特別調査委員会による調査が行われたため、一ヶ月以上経過しても決算値が確定できない事態となり、中間報告と定時株主総会の継続会の開催方針の発表に至っています。このようなことは店舗経営史において異常な事態と言えます。

取締役らの経営責任

 本事案の被害の大きさ、不正が発生した管理体制や社会的責任などから、取締役らの経営責任は重大であり、最終報告によっては株主らステークホルダーから責任が追及される可能性もあります。

この機会に徹底的に問題を解決し、上場企業としての責任ある対応が求められています。

本連載記事【目次】前の記事次の記事
シェアお願いします
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
この記事の目次