ブックオフ・ハードオフ「従業員による巨額内部不正」の真相に迫る[第二弾]ブックオフシステムと不正要因との関連

ブックオフ・ハードオフ 従業員による巨額内部不正 架空買取や不正現金取得
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【この記事の概要】
 リユース業界のスタンダード「ブックオフシステム」と不正要因との関連
 ブックオフ・ハードオフ「従業員不正疑惑」の真相に迫る記事です。ブックオフ創業者の坂本孝さんがブックオフを去ってから現在まで、坂本さんの築かれたブックオフシステムやビジネスモデルの本質は十分に承継されていたのでしょうか。ピープル・ビジネスの本質である「信頼はするが、信用はしない経営」がどれだけ徹底されていたのでしょうか。なぜ、ブックオフでは400以上の直営店の臨時休業やハードオフ運営会社エコノスの従業員による巨額不正などの異例の事態が起きてしまったのでしょうか。その真相に迫ります。

この記事の目次

ブックオフ・ハードオフにおける従業員不正の根本原因

0円買取や商品のマイナス査定が容易にできる状況が不正を生む

 ブックオフやハードオフの従業員不正が発生した背景には、商品価値が曖昧であるリユース業界の特性、利益追求のプレッシャー、在庫管理や現金管理の問題、教育や監督体制の不備、店舗監査などの経営体制、経営陣や従業員の道徳観念の問題などがあるとされています。

今回、公表された不正行為は、従業員がいわゆる「0円買取*」や高額商品の買取価格を操作し、高額で販売することや、内引きなどが挙げられ、典型的な不正行為と言えます。

「0円買取*」とは、お客様には店で処分すると言って0円で引き取って、値段をつけて販売する行為です。

また、中古品取引を扱っているビジネスモデルのため、商品価値の判断が困難で、不正行為がしやすく、発覚しにくいという特徴もあります。さらに、リユース市場では価格が明確でなく、不適切な取引などが容易にできてしまう店舗経営環境になりやすいこともあります。

創業者坂本孝さんが築いたブックオフシステムと今回の不正要因との関連

本質的なシステムの承継と企業風土の変化が不正行為に影響を与えたのか?

 ブックオフやハードオフのビジネスモデルは、中古品を安く仕入れ、適切な価格で販売し、利益を生むことが目的です。しかし、商品価値の判断が難しいため、従業員が仕入れ価格を不正に操作したり、販売価格を高く設定することが起こり得ます。

そこで創業者の坂本孝さんは、かつての古本屋で必要だった古本を査定する「本の目利き」を誰でも短期間で簡単にできるようにするため、買取商品の査定と販売価格の設定において基準を明確にし、オペレーションの3S*(標準化、単純化、専門化)を目指しました。さらに、「古本屋ではなく新古書店」をコンセプトにした店づくり、アルバイトを中心とした店舗運営、店長やスーパーバイザーによる店舗経営管理などのピープル・ビジネスを徹底的に研究し、積極的に導入を進めました。これが現在のリユース業界のスタンダードになっています。

1990年の創業から約4年半で100店舗を達成、14年目の2005年には東証一部上場を果たしました。しかしながら、追い風に乗る2007年に坂本孝さんは「文春砲」に撃たれることとなり、その混乱や不適切な売上計上の発生を受けて、2007年に取締役を引責辞任し、ブックオフを去ることになります。

それから現在まで坂本孝さんが築いたビジネスモデルの本質は十分に承継されていたのでしょうか。ピープル・ビジネスの本質である「信頼はするが、信用はしない経営」がどれだけ徹底されていたのでしょうか。

なぜ、今回のような「従業員不正疑惑」で400以上の直営店を臨時休業するなど、異例の事態が起きてしまったのでしょうか。

※オペレーションの3Sとは、マクドナルドやセブンイレブンなどのフランチャイズチェーンでのオペレーションにおいて重要な役割を果たす「標準化(Standardization)」「単純化(Simplification)」「専門化(Specialization)」の頭文字を取ったもので、多店舗化やチェーン展開において安定した商品やサービスの質を維持するために必要なオペレーション設計の要素です。

同じ時期に、同様の内部不正がハードオフ運営会社でも発覚

 また、ハードオフやブックオフの加盟店を運営する株式会社エコノスでも、今回、同様の内容不正が発覚しています。詳細については、下記をご覧ください。

ハードオフ 店頭 エコノス社 内部不正

(関連記事)[第一弾]ハードオフ運営会社における3200万円超もの内部不正に見る店舗経営のあり方 この記事では、ハードオフの運営会社である株式会社エコノスで発覚した3200万円を超える内部不正について解説します。

ブックオフとハードオフは同じ会社と思われることがよくありますが、別会社でそれぞれ東証プライム市場の上場企業です。

ハードオフ社の創業者で代表取締役会長の山本善政さんは、坂本孝さんとの親交があり、坂本さんが展開していたブックオフの店舗経営を見て、坂本さんに相談し、1993年にオーディオ・ビジュアルの小売店「サウンド北越」からハードオフに業態変更してリユース事業に参入しています。そのため、同じようなイメージのロゴマークやビジネスモデルになっています。

目標設定が正しくないと粉飾行為につながる可能性

 店舗経営では店を店長やパートアルバイトに任せ、売上と利益を獲得するために店舗経営に必要な権限を委譲します。そして、売上や利益目標を設定します。上場企業であるブックオフは当然ながら、目標未達は株価に大きく影響することから、売上や利益目標の達成が求められます。

実は、この目標設定が店舗経営ではとても重要になるのです。運用次第で好転にも、暗転にも繋がるからです。

目標設定は正しく設定すればとても有効なモチベーションにも繋がり、良い結果に繋がりますが、一方で、目標設定の方法を間違えると逆の結果に繋がります。

それは、目標設定において、目標が低すぎると気が緩み目標未達になったり、逆に目標が高すぎたり、利益ばかりを追求した厳しい目標設定になるとプレッシャーから、あたかも自身で目標達成したかのように偽装し粉飾に走る可能性があるからです。

このような事例は、ピープル・ビジネス日本上陸後、店舗経営の歴史で証明されており、適切な目標設定の方法とその評価方法が開発され、構築がなされました(この目標設定と評価方法は専門家が別記事で公開予定です)。

また、不正防止や適正な店舗経営実現のためスーバーバイザーが実施する店舗監査と内部監査や監査役による二重三重の監査体制が図られています。

ちなみにブックオフの場合、全国4支店に分け、支店長と支店スーバーバイザー(SV)やエリアマネージャーを配置し、FCオーナーや店長のサポート、研修をしています。スーバーバイザーの重要な機能である監査体制や店舗経営体制はどうだったのでしょうか。

不正行為が常習化している可能性

 先述の通り「0円買取」は不正行為であり、それが常態化すると善悪の判断がつかなくなるので、従業員の不正にもつながる悪循環を引き起こす可能性があります。

お客様には店で処分すると言って0円で引き取っているのですから、相応の処分費用がかかります。よって、0円で引き取った商品数とその処分費用には相関関係があるのですから、仮に値段をつけて販売していれば処分点数や費用が少なくなるので、本部やエリアマネージャーが異常に気づくことは可能なはずです。

本来、店舗経営では、経営者に代わって店長直属の上司であるスーバーバイザーやエリアマネージャーらがこのような経営値の確認と異常の発見の上、現場検証で事実確認と対処をします。ちなみに、この活動のことをスーパーバイジングと呼んで、スーバーバイザーの責任で実行されるのです。

また、スーパーバイジングが正常に機能していれば、店舗に異常があれば早期に気づき、現場検証によって被害が表面化する前に対処でき、問題や不正の芽を摘むこともできるので、今回のような重大な事態になることはありません。

このような重大な事態に至ること自体、店舗経営管理が機能していない可能性が大きいのではないでしょうか。

さらに、直営店で発生していることから、フランチャイズ加盟店でも同様の問題が生じる可能性もあります。

なぜならば、自社の直営店の経営管理が満足にできない体制では、加盟店という他人の会社の経営管理や知識も経験も豊富な経営者に経営指導をして、導くことは極めて困難なことだからです。

従業員不正疑惑のブックオフ

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ブックオフ スーバーバザー 総合リユースストア

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