ブックオフ・ハードオフ「従業員による巨額内部不正」の真相に迫る[第六弾]ブックオフ役職者の処分と再発防止策

ブックオフ 従業員による巨額内部不正 架空買取 横領 不正現金取得 不正 不正の手口 経営陣の処分 再発防止策 特別調査委員会 提言 不正の原因
本連載記事【目次】前の記事次の記事

【この記事の概要】
 従業員による架空取引や横領などの不正が発覚したブックオフグループホールディングスは、経営陣の処分と再発防止策を発表
 堀内康隆社長と役員らが経営責任や管理監督責任から報酬の減額と一部返上の処分のほか、再発防止に店舗運営ルールや人員配置や評価基準の見直しに加え、防犯カメラの増設やPOS システムの改修または精算機の導入などを検討するとしています。この再発防止策は本連載記事で指摘していることでもあり、ハードやソフトに頼り過ぎることなく、人を中心に機能させることで再発防止を可能にします。読者の皆さんは、本記事からブックオフ不正の実態把握とともに自社の内部不正点検の機会とされることをおすすめします。また、皆さんの経営課題や取り組みに役立てられ、より安心安全で信頼性の高い経営を実現されることを願っています。

この記事の目次

特別調査委員会の調査報告書にあった「不正発生原因分析と再発防止策の提言」を受けて

 ブックオフグループホールディングス株式会社(以下、ブックオフGHD)は、ブックオフの複数店舗で従業員による架空買い取りや不適切な在庫計上、現金不正取得(以下、「本件事案」)があったことを2024 年10月15日付「特別調査委員会の調査報告書(公表版)公表に関するお知らせ」にて記載のとおり、特別調査委員会の調査報告書で確認し、原因分析と再発防止策の提言を真摯に受け止め、取締役会で再発防止策を決議し、その結果を公開しました。

またそこで、

事実を真摯に受け止め、経営責任を明確にするため、役職者処分を決定いたしました。ご迷惑・ご心配をお掛けしている株主、投資家、関係者に深くお詫び申し上げます。今後、再発防止策を実行し、信頼回復に努めます。

「再発防止策の策定及び役職者の処分に関するお知らせ」ブックオフグループホールディングス株式会社

とコメントしています。

ブックオフ「従業員による巨額内部不正」の被害と全容は下記記事を参照してください。

あわせて読みたい
ブックオフ・ハードオフ「従業員による巨額内部不正」[第五弾]ブックオフ不正29件、業績への影響額6億... 本連載記事【目次】 前の記事次の記事  【この記事の概要】 不正調査と決算から明らかになったブックオフ不正の全容と被害 ブックオフ不正による業績への影響額6億円...

ブックオフ不正、調査結果の概要

 調査委員会によると、組織的不正は認められず、不正行為は型どおりの同一態様ではなく、個別事情に応じた判断で実行されていることが判明。不正な意思疎通や連携は確認できなかったとしています。

しかし、本件事案の大半が近年発生し、ブックオフGHDの不正行為等の防止に対する組織的な対応やチェック・モニタリング体制に不備があったため、不正行為等が生じたと判断。調査結果詳細は、2024年10月15日付「特別調査委員会調査報告書(公表版)公表に関するお知らせ」参照。

ブックオフ不正、役職者の処分

 今回の事態を厳粛に受け止め、本件事案に関して決算発表等の遅延に対する経営責任を明確にするために、ブックオフGHDと子会社ブックオフコーポレーション株式会社の役職者の処分

役職者報酬を減額
・堀内康隆社長と取締役2名:業績連動報酬を30%減額
・執行役員2名:業績連動報酬を8~15%減額
・子会社ブックオフコーポレーション株式会社の執行役員(4名): 9~17%減額

また、本件事案の発生に対する管理監督責任並びに再発防止策を徹底する観点からブックオフGHDの代表取締役、取締役(社外取締役を除く)、事業運営を担当する執行役員の処分。

役員報酬の自主返上
・堀内康隆社長:月額報酬の30%を返上
・取締役2名と執行役員2名:月額報酬の10%を返上
来年1月までの3か月間の月額報酬の一部を自主返上し、ブックオフコーポレーション株式会社役員の返上はなし。

ブックオフ不正発生の原因分析

 調査委員会が、不正行為等発生の原因と認めた内容は下記のとおりです。

ブックオフ不正7つの原因
(1) 店舗従業員におけるコンプライアンス意識の欠如または不足
(2) 長期にわたる特定の社員に対する店舗内の権限の集中
(3) 不正行為等の防止に対する組織的な対応の不十分さ
(4) 不正行為等の防止のための店舗従業員の上長によるチェック・モニタリング態勢の構築の不十分さ
(5) 不正行為等の防止のためのシステム上の措置が不十分であること
(6) 各業務プロセスにおける不正行為等防止のための措置の不備
 ① 買取時の牽制機能の不備(買取時のルールの不備を含む)
 ② 棚卸時の牽制機能の不備(棚卸時のルールの不備を含む)
 ③ 商品管理時の牽制機能の不備(商品管理時のルールの不備を含む)
 ④ 商品廃棄時の牽制機能の不備(商品廃棄時のルールの不備を含む)
 ⑤ 現金管理や内引きに関する牽制機能の不備(現金管理や内引き対策のルールの不備を含む)

ブックオフ不正、再発防止策の概要

 調査委員会が、今回の不正行為等の発生原因に基づいて、同種または類似の不正行為等の再発を防止し、今後の企業経営と店舗運営を適切に行っていくために必要な再発防止策の提言を踏まえ、以下のとおり再発防止策を策定いたしました。

(1) 店舗運営における業務ルールの見直しとシステム強化

 今回発生した従業員による架空買取、不適切な在庫管理、現金または商品の不正取得の発生を防止するために、以下に掲げる、既存ルールの見直しまたはルールの新設、それに応じたシステム開発を行います。

(ア) 架空買取の再発防止に関する事項
① 買取と精算を分ける業務運用強化に向けた POS システムの改修または精算機の導入検討
② 高額買取における承認ルールの見直し、ワークフローの活用
③ 電子古物台帳のチェック機能強化

(イ) (架空在庫を含む)不適切な在庫管理の再発防止に関する事項
① 商品の廃棄・転換処理の登録機能の統制強化
② 商品ラベルの書き換えのルール見直し、登録機能の変更、統制強化
③ 入出庫商品の承認ルール見直し
④ 実地棚卸マニュアルの内容追加、見直し
⑤ 実地棚卸における人員入替による実態確認強化
⑥ 実地棚卸並びに在庫管理に関するオペレーション研修の実施

(ウ) 現金または商品の不正取得の再発防止に関する事項
① 店舗現預金の補充について従業員個人口座の利用の廃止
② 店内カウンター、バックヤードへの防犯カメラの増設

(2) 業務統制に関するチェック強化

 店舗運営における内部統制強化の観点で以下に掲げるマニュアルの見直し、追加的なチェックを導入いたします。

業務統制に関するチェック強化
(ア) エリアマネージャー向けの臨店マニュアル・チェックリストの見直し
(イ) 店舗運営組織における定期業務点検の実施
(ウ) 同一店舗長期在籍者並びに役職兼務者に対するチェックの強化
(エ) 実地棚卸におけるマネジメントレビューの実施、マニュアル化
(オ) 本部における数値分析を用いた取引記録、商品管理登録の異常値検知と調査の実施
(カ) (不正検知、業務見直しを目的とした)従業員に対する定期的なアンケートの実施

(3) 人員配置・評価基準の見直し

 店舗運営組織における業務統制の実効性向上に向けて、以下に掲げる人員体制の再構築並びに人事評価制度の見直しをいたします。

人員配置・評価基準の見直し
(ア) 店舗運営人員の増強による役職兼務の低減
(イ) 店舗運営組織内の業務点検担当者の配置
(ウ) キャリアパス評価(人事考課)における内部統制項目の追加
(エ) 内部監査結果に基づく人事評価の反映

(4) コンプライアンス・企業倫理向上

 従業員に対するコンプライアンス意識の更なる向上、組織としての企業倫理向上を目的として、以下の内容に取り組みます。

コンプライアンス・企業倫理向上
(ア) グループ行動規範・指針の見直し
(イ) 全従業員対象の定期コンプライアンス研修における不正抑止の内容追加
(ウ) マネージャー対象の定期研修における不正予防、不正検知の内容追加

これらの再発防止策は本連載『ブックオフ・ハードオフ「従業員による巨額内部不正」の真相に迫る』で指摘していることでもあり、ハードやソフトに頼り過ぎることなく、人を中心に機能させることで再発防止を可能にします。

ブックオフ不正、ブックオフ役職者の処分と再発防止策のまとめ

 今回の役職者の処分と再発防止策の発表を受けて、先月15日、特別調査委員会から提出された「特別調査委員会の調査報告書(公表版)」の公表と2024年5月期の決算発表で明らかになったブックオフ不正による業績への影響は、計6億1800万円もの損失を計上しています。

(ブックオフ不正、業績への影響)
・不正関連損失 6800万円
・調査委員会費損失 5億5000万円
・計 6億1800万円

ブックオフ・ハードオフ「従業員による巨額内部不正」[第五弾]ブックオフ不正29件、業績への影響額6億円超!調査で明らかになった被害と不正の全容

店舗経営、ピープル・ビジネスは、「1円をかき集める泥臭い商売」で「ペニービジネス」とも呼ばれています。

今後の再発防止のための投資やこの巨額損失を穴埋めするために、果たして、何個のリユース品を買取り、商品化して販売すればいいのでしょうか。

もちろん、これらはパート・アルバイトや正社員らの従業員が現場最前線で一生懸命に接客して必死に汗をかき、協力してくれてはじめて実現することでもあります。

あわせて読みたい
(最新版)ピープル・ビジネス理論 0章 概論 2 ピープル・ビジネスと呼ばれるワケ 本連載記事【目次】 前の記事次の記事  【この記事の概要】 1980年代、米国マクドナルド社の求人広告に見る『ピープル・ビジネス』 ピープル・ビジネスとは、人々の多...

ブックオフは今回の巨額内部不正によって自社の置かれた状況を認識して、どこまで原点回帰ができて損失の穴埋めや信頼回復をすることができるのでしょうか。その姿勢に消費者、従業員、加盟店、株主や世間などのステークホルダから一層厳しい目が向けられています。

本連載記事【目次】前の記事次の記事
シェアお願いします
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
この記事の目次