
月次決算のチェック体制の強化
月次決算のチェック体制の強化には、粗利益に大きな影響を及ぼす棚卸ロス管理が含まれます。今回の事例では平均すると月間で250万円、一日で8万円を超える架空買取りや架空在庫があることになります。中古品という取り扱い商品や月商、また、他の業種業態と比較してもかなり大きな金額です。
月次決算の結果である売上高、仕入(原価)、在庫や棚卸ロスなどの各金額と売上比率を把握、同等規模の店舗と比較や実際の在庫状況をスーパーバイザーやエリアマネージャー(以下、SVら)など第三者の立場で確認していれば、早い段階で異常に気づくことはできたと思います。さらに、ハードオフの本部には単品管理システムもあるため、なおのことではないでしょうか。
不正ができてしまう環境の改善と健全経営の定着
不正ができる環境の改善には、店舗運営や店舗経営を店長に任せきりにせず、SVらの月次監査や本社本部による内部監査が機能することが求められます。
防犯カメラなどのハードに頼った対策は限界もあり隙が生まれるので、必ず人がハードをコントロールして店舗や従業員を牽制して、隙を与えないことです。
また、内部監査による監査だけでは不十分です。店の状況が第三者的に把握がしやすいSVらによる月次監査は不可欠で、SVら監査の信憑性担保のための牽制機能として内部監査があるとの認識が必要です。
具体的な施策としては、
- 第三者や外部の会社による棚卸の実施
- 在庫置場への鍵の施錠、開錠管理
- SVらによる定期的、及び抜き打ちでの月次監査の実施
- 内部監査によるSVらの機能と業務遂行正当性のチェック
- 定期的な人事異動(店舗経営では2~3年で移動)
要は、報告書にある再発防止策を店舗で徹底することは、
上記の具体的施策を店長やSVらの人事評価項目と連動させて、店舗管理状況を毎月把握し、評価することです。これによって、本部本社は現場を把握することができて、健全な店舗経営を定着させることができます。
その主な理由は、店舗に常に気を配っていることの周知から「出来心による悪事を踏みとどまらせる」抑止や予防をすることが店舗監査や人事評価制度の狙いでもあり、信頼はするが信用はしない経営の徹底が、店舗経営において必須条件だからです。
そうしませんと、どんなにチェック体制の構築やルール強化しても、時の経過とともに、問題意識は希薄化し、チェック体制やルールも形骸化して元の状態に戻り、再び同じ問題が発生してしまいます。
これはピープル・ビジネスの歴史の証でもあり、「店舗で相次ぐ不正や不法行為から店と人を守り、売上と利益を守る」ことが店舗経営の最重要課題なのです。
詳細は下記をご覧ください。
同様の不正:ブックオフも緊急の疑惑調査で臨時休業
また、ハードオフとは別会社のブックオフでは従業員が架空の買い取りをした疑いがあるとして、「複数の店舗において、従業員による架空買い取り、在庫の不適切な計上および現金の不正取得の可能性があることが発覚しました」とし、2024年6月27日から来月1日にかけて、全国400以上の直営店(フランチャイズ除く)で順次、休業や営業時間を短縮し、臨時の棚卸実施と2024年5月期の決算発表を延期するとブックオフを運営するブックオフグループホールディングス株式会社が発表し、極めて異例の事態といえます。

(関連記事)[ 第四弾]ブックオフ直営24店舗で7000万円もの内部不正が判明し、その手口も明らかに ブックオフの不正現金着服問題、従業員が内部不正を行っていたことが判明。24店舗で約7000万円分の不正行為が確認され、中間報告が発表されました。主な不正行為は架空買い取り在庫の不適切な計上が……
人罪店舗ではなく、人財店舗で健全経営の実現のために
なお、株式会社エコノスの失踪中のA店長については、詳細は不明で、確信犯で逃走したのか。それとも、自分のしたことの重大さに気づき、恐怖やパニックから失踪したのか。真相は分かりませんが、彼が自ら命を絶つ行為などをせずに自首されることを心から願っています。
このような巨額不正の場合、最初は出来心からはじまり、後に引けず、または味を占めて不正を繰り返す確信犯。または、借金などの返済に困窮して最初から確信犯として不正を繰り返し、エスカレートして大胆になるなどで、被害が大きくなって発覚することが多いといえます。
このように不正が繰り返しできてしまう環境で、被害が大きくなったことは事実です。そして、不正は決して許されることではありません。上場企業であり、大手チェーンとして、人罪店舗ではなく、人財店舗で健全な経営ができるように、店舗の経営管理体制の見直しを徹底して実施して、再発防止に努めてほしいと切に願います。
(関連記事)[第二弾]ブックオフシステムと不正要因との関連 ブックオフ子会社が運営する複数店舗において、従業員による架空買い取り、在庫の不適切な計上や現金の不正取得の可能性が発覚。ハードオフ運営会社エコノスでは従業員による巨額不正などの異例の事態が……
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