ハードオフ運営会社における3200万円超もの内部不正に見る店舗経営のあり方

ハードオフ 店頭 エコノス社 内部不正

【この記事の概要】
 「他人事では済まされない。倒産しかねないほどの巨額内部不正に見る店舗経営のあり方」
 この記事では、ハードオフの運営会社である株式会社エコノスで発覚した3200万円を超える内部不正について解説します。フランチャイズチェーンの一店舗で発生した不正金額としては前代未聞と言え、個人経営であれば倒産に陥る危機です。さらに、ブックオフでも不正取得の可能性があることが発覚したとして緊急の疑惑調査で臨時休業を発表しました。
 店舗経営者や経営幹部にとって内部不正の問題は避けて通れず、企業資産であるお金と人を同時に、一瞬にして失ってしまう重大な問題でもあります。この事例から店舗経営のあり方、内部不正の対処法や予防策を学んでほしいと願います。

この記事の目次

ハードオフ運営会社で3200万円超の内部不正発覚 

約1年間で3200万円超の所在不明金額が発覚したことは店舗経営では異例の事態です

 ハードオフやブックオフの加盟店を運営する株式会社エコノスでは、北海道のハードオフ加盟店で3200万円超の所在不明金額が発覚しました。

架空買取と内引きによる内部不正の可能性があり、エコノス社は調査委員会を設置し、該当店の棚卸資産に関する不正の事実解明のための調査から、2024年6月25日にエコノス社のホームページで調査報告書が公開されました。

その報告書では、不正当事者であるA店長が内部監査の追加調査中に失踪し、2024年6月25日時点で行方不明のため、「A店長からのヒアリングは実施できていないが、買取りアプリの仕様、ハードオフ■■■店に残された帳票やデータ、防犯カメラの映像などから、架空買取が行われたと推測される」としています。

調査によって、約1年間で3200万円超の所在不明金額が発覚しましたが、店舗経営では極めて異例の事態です。その手口は旧態依然の架空取引と内引きで、経営管理や監査制度に問題があることが指摘されています。

そして、不正の原因分析では、

  • 買取り時のルール及びチェック体制の不備やチェック体制の脆弱性
  • 買取伝票の確認作業も形骸化
  • 棚卸時のルール及びチェック体制の不備 、棚卸の管理及び検証体制が不足
  • 内部監査の不足
  • コンプライアンス意識等の不足

などの指摘がならび、再発防止策として、以下の7つの内容が明記されています。

  1. 商品買取り時のチェック体制の構築
  2. 商品買取り時のルール強化
  3. 実地棚卸のルール強化
  4. 実地棚卸時の第三者のチェック体制の構築
  5. 内部監査体制の強化
  6. 不正防止に向けたシステムの改修
  7. コンプライアンス・企業倫理の向上

これらの再発防止策をピープル・ビジネス、店舗経営的視点でまとめると、以下の3つに要約できます。

  • オペレーション体制の改善
  • 月次決算のチェック体制の強化
  • 不正ができてしまう環境の改善

(参照)ハードオフやブックオフの加盟店を運営する株式会社エコノス社「特別調査委員会より調査報告書」

オペレーション体制の改善

 オペレーション体制の改善には、レジから現金を出金する場合、必ずダブルチェックすることや、現金、買取り商品と買取り伝票(出金伝票)の照合を担当者と確認者が別々にチェックし、問題がない場合、出金するようにします。

また、支払いのためにレジからお金を出金することは不正に繋がる行為です。たまにレジ現金から出金して小口現金などの支払いをしているケースがありますが、大原則として、レジは売上と釣り銭に使用し、小口現金などの支払いは小口金庫、買取り金の支払いは出金専用のレジを使用することが重要です。

(参照)現金で失敗しないための秘訣「現金管理マニュアル」導入のすすめ 1.現金管理の重要性と基本知識

月次決算のチェック体制の強化

 月次決算のチェック体制の強化には、粗利益に大きな影響を及ぼす棚卸ロス管理が含まれます。今回の事例では平均すると月間で250万円、一日で8万円を超える架空買取りや架空在庫があることになります。中古品という取り扱い商品や月商、また、他の業種業態と比較してもかなり大きな金額です。

月次決算の結果である売上高、仕入(原価)、在庫や棚卸ロスなどの各金額と売上比率を把握、同等規模の店舗と比較や実際の在庫状況をスーパーバイザーやエリアマネージャー(以下、SVら)など第三者の立場で確認していれば、早い段階で異常に気づくことはできたと思います。さらに、ハードオフの本部には単品管理システムもあるため、なおのことではないでしょうか。

不正ができてしまう環境の改善と健全経営の定着

 不正ができる環境の改善には、店舗運営や店舗経営を店長に任せきりにせず、SVらや内部監査が機能することが求められます。

防犯カメラなどのハードに頼った対策は限界もあり隙が生まれるので、必ず人がハードをコントロールして店舗や従業員を牽制し、隙を与えないことです。

また、内部監査による監査だけでは不十分です。店の状況が第三者的に把握がしやすいSVらによる月次監査は不可欠で、SVら監査の信憑性担保のための牽制機能として内部監査があるとの認識が必要です。

具体的な施策としては、

  • 第三者や外部の会社による棚卸の実施
  • 在庫置場への鍵の施錠、開錠管理
  • SVらによる定期的、及び抜き打ちでの店舗監査の実施
  • 内部監査によるSVらの機能と業務遂行正当性のチェック

要は、報告書にある再発防止策を店舗で徹底することは、

上記の具体的施策を店長やSVらの人事評価項目と連動させて、店舗管理状況を毎月把握し、評価することです。これによって、本部本社は現場を把握することができて、健全な店舗経営を定着させることができます。

その主な理由は、店舗に常に気を配っていることの周知から「出来心による悪事を踏みとどまらせる」抑止や予防をすることが店舗監査や人事評価制度の狙いでもあり、信頼はするが信用はしない経営の徹底が、店舗経営において必須条件だからです。

そうしませんと、どんなにチェック体制の構築やルール強化しても、時の経過とともに、問題意識は希薄化し、チェック体制やルールも形骸化して元の状態に戻り、再び同じ問題が発生してしまいます。

これはピープル・ビジネスの歴史の証でもあり、「店舗で相次ぐ不正や不法行為から店と人を守り、売上と利益を守る」ことが店舗経営の最重要課題なのです。

詳細は下記をご覧ください。

(参照)店舗監査(会計と業務)のすすめ方【目次】

(参照)SV(スーパーバイザー)マニュアル 目次[予定]

(参照)ピープル・ビジネス理論 8章 人事評価論【目次】

同様の不正:ブックオフも緊急の疑惑調査で臨時休業

 また、ハードオフとは別会社のブックオフでは従業員が架空の買い取りをした疑いがあるとして、「複数の店舗において、従業員による架空買い取り、在庫の不適切な計上および現金の不正取得の可能性があることが発覚しました」とし、2024年6月27日から来月1日にかけて、全国400以上の直営店(フランチャイズ除く)で順次、休業や営業時間を短縮し、臨時の棚卸実施と2024年5月期の決算発表を延期するとブックオフを運営するブックオフグループホールディングス株式会社が発表し、極めて異例の事態といえます。

(参照)ブックオフグループホールディングス「特別調査委員会の設置及び 2024 年5月期決算発表の延期に関するお知らせ」

人罪店舗ではなく、人財店舗で健全経営の実現のために

 なお、株式会社エコノスの失踪中のA店長については、詳細は不明ですが、確信犯で逃走したのか。それとも、自分のしたことの重大さに気づき、恐怖やパニックから失踪したのか。真相は分かりませんが、彼が自ら命を絶つ行為などをせずに自首されることを心から願っています。

このような巨額不正の場合、最初は出来心からはじまり、後に引けず、または味を占めて不正を繰り返す確信犯。または、借金などの返済に困窮して最初から確信犯として不正を繰り返し、エスカレートして大胆になるなどで、被害が大きくなって発覚することが多いといえます。

このように不正が繰り返しできてしまう環境で、被害が大きくなったことは事実です。そして、不正は決して許されることではありません。上場企業であり、大手チェーンとして、人罪店舗ではなく、人財店舗で健全な経営ができるように、店舗の経営管理体制の見直しを徹底して実施して、再発防止に努めてほしいと切に願います。

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